天皇皇后両陛下と長女の愛子さまは、9月12日から2日間、戦後80年にあたり、被爆地・長崎で戦没者を慰霊されました。愛子さまが両陛下の戦没者慰霊の旅に同行されるのは、6月の沖縄に続き2回目です。被爆者らと懇談したご一家は、これまでの長崎の人々の苦難を思い、平和への思いを新たにされたということです。
また、両陛下は13日、14日と「国民文化祭」「全国障害者芸術・文化祭」の開会式や関連行事に臨み、長崎の歴史や文化に触れられました。

愛子さま「被爆した直後も信者の皆さんは…」

最初に訪ねられたのは、爆心地公園にある「原爆落下中心地碑」。原爆で亡くなった20万人余りの名簿がデジタルデータとして納められています。ご一家は、慰霊碑にユリなどの白い花束を捧げ、深く拝礼されました。

慰霊碑がある場所の上空500メートルで原爆が炸裂したという説明を聞かれたご一家。

浦上天主堂の遺壁
浦上天主堂の遺壁
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近くにあった大聖堂・浦上天主堂が壊滅的な打撃を受けたと聞くと、愛子さまは「被爆した直後も信者の皆さんは、浦上天主堂で祈りを捧げられたのですか?」と質問されたということです。

原爆投下中心地碑で供花後、説明を受けられる皇后さま・愛子さま
原爆投下中心地碑で供花後、説明を受けられる皇后さま・愛子さま

原爆資料館では、爆風や熱線が広がる様子を示した模型をご覧になり、山々に囲まれた長崎は、平地に被害が集中したと説明を受けられました。

原爆の被害の広がりを示すジオラマをご覧になる天皇ご一家
原爆の被害の広がりを示すジオラマをご覧になる天皇ご一家

「交通手段などが寸断されてしまった中で救援物資とかは…」と尋ねられた愛子さま。80年たっても被爆者の苦しみは変わらないという館長の話に耳を傾けられていました。

続いて被爆者らにお会いになったご一家。

田中重光さんと懇談される天皇ご一家
田中重光さんと懇談される天皇ご一家

去年、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の代表委員・田中重光さん(84)には祝意を伝え、これまでの活動を労われました。

「核兵器や原爆は、絶滅だけを目的とした悪魔の兵器」とご一家に語った 日本被団協 代表委員・田中重光さん(84)
「核兵器や原爆は、絶滅だけを目的とした悪魔の兵器」とご一家に語った 日本被団協 代表委員・田中重光さん(84)

21歳で被爆した中村キクヨさん(101)に「親戚の方、亡くなられて残念でした」と声をかけられた陛下。「おば2人、めい2人はその場で亡くなり、遺骨はいまだに見つかっていません」と話す中村さんに、皇后さまは「つらい思いをなさいましたね」、愛子さまは「貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます」と述べられました。

中村キクヨさんと懇談される天皇ご一家
中村キクヨさんと懇談される天皇ご一家

懇談後、中村さんは「私たちにこうして会っていただきましたことは本当に被爆者にとって最高の喜びでございます」と感想を話しています。

中村キクヨさん(101)
中村キクヨさん(101)

この日の夜、宿泊先近くでは、およそ5500人が提灯を掲げてご一家の訪問を歓迎。両陛下と愛子さまは、提灯を上下左右に振って応えられました。

天皇ご一家を提灯で迎える長崎市民
天皇ご一家を提灯で迎える長崎市民

歓迎の花火も上がり、「感謝感激しております」「こちらからも花火が美しく見えました」と、主催者を通じて集まった人たちにお礼を伝えられました。

提灯奉迎に 手を振って応えられる天皇ご一家
提灯奉迎に 手を振って応えられる天皇ご一家

翌13日、ご一家は「恵の丘長崎原爆ホーム」を訪れ、入所者と懇談されました。
一人一人に「いかがお過ごしですか?」「こちらには何年くらい?」「普段はどのようにしてお過ごしですか」「お食事は皆さん一緒に?」などと声を掛けられたご一家。

恵の丘長崎原爆ホームの入所者と懇談される天皇ご一家
恵の丘長崎原爆ホームの入所者と懇談される天皇ご一家

被爆体験や「二度と戦争をしてはいけない」という言葉に耳を傾け、愛子さまは、自宅で被爆した女性に「ご無事でよろしかったですね」と寄り添われました。

4月7日 硫黄島・鎮魂の丘で献水される天皇皇后両陛下
4月7日 硫黄島・鎮魂の丘で献水される天皇皇后両陛下

戦後80年にあたり、4月に硫黄島、6月には沖縄と広島で戦没者を慰霊された両陛下。若い世代に戦争の記憶を引き継いでいきたいとの思いから、沖縄と今回の長崎には、愛子さまも同行されました。

6月5日 沖縄・小桜の塔に花を供えられる天皇ご一家
6月5日 沖縄・小桜の塔に花を供えられる天皇ご一家

長崎訪問で平和への思いを新たにされたご一家。愛子さまは、原爆被害の実相をあらためて肌で感じ、長崎の人々が平和を望む強い思いを深く心に刻まれたといいます。

国内最大級の文化の祭典「国民文化祭」

13日午後、帰京する愛子さまと別れた両陛下は、長崎県美術館で「全国障がい者作品展 ~アール・ブリュット展~」をご覧になりました。この展覧会は「国民文化祭」「全国障害者芸術・文化祭」の関連行事のひとつとして開催されているものです。

原塚祥吾「繋がっていくまち」(一部を拡大)
原塚祥吾「繋がっていくまち」(一部を拡大)

こちらは、原塚祥吾さんが描いた「繋がっていくまち」。鳥の目線で見た架空の街を鉛筆で精巧に描いた作品です。10歳の頃からこの絵を描き始めたという原塚さん。20年で13枚を仕上げて繋ぎ、街は今も広がり続けています。

原塚祥吾さんと母・由美子さんから作品について説明を受けられる天皇皇后両陛下
原塚祥吾さんと母・由美子さんから作品について説明を受けられる天皇皇后両陛下

両陛下は、建物の名前や駅などが緻密に描かれた画に顔を近づけながら興味深く鑑賞されました。

渡邊義紘さんの作品をご覧になる天皇皇后両陛下
渡邊義紘さんの作品をご覧になる天皇皇后両陛下

続いてご覧になったのは、渡邊義紘さんが手がける、恐竜や龍などの切り絵作品。下絵なしで一筆書きのようにハサミで切り抜いているといいます。

渡邊義紘さんの切り絵作品
渡邊義紘さんの切り絵作品

その細かさと繊細な技術に驚きの表情を見せられた両陛下。作家ひとりひとりの情熱や集中力にしきりに感心されていました。

「ながさきピース文化祭2025」開会式(長崎・佐世保市)
「ながさきピース文化祭2025」開会式(長崎・佐世保市)

滞在3日目、両陛下は佐世保市で「国民文化祭」と「全国障害者芸術・文化祭」の開会式に臨まれました。陛下は第1回大会から毎年出席されています。

開会式でおことばを述べられる天皇陛下
開会式でおことばを述べられる天皇陛下

陛下は「今年、被爆80年という節目を迎えたこの長崎の地で、全国各地でさまざまな文化芸術活動に取り組まれている方々を迎え、国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭が開催されることは大変意義深く、関係者の皆さんの尽力に対し、心から敬意を表します」と、おことばを述べられました。

開会式で行われたステージ「フェスティバル」
開会式で行われたステージ「フェスティバル」

ステージでは演劇やダンスなどのパフォーマンスが繰り広げられ、長崎の歴史や文化、そして、被爆80年の平和への思いが表現されました。

拍手を送られる天皇皇后両陛下
拍手を送られる天皇皇后両陛下

大きな拍手を送られた両陛下。11月末まで行われる国民文化祭の成功を願われていました。
(「皇室ご一家」9月28日放送)

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