日南市の小学生が、家族と愛犬を守るため10歳で防災士の資格を取得した。夏休みにサッカーチームの仲間と共に救命講習を受講し、防災意識向上に貢献している。小さな子供にも防災を伝えようと“替え歌”も制作中だ。「誰かの役に立ちたい」という思いを持つ小学生の活躍に注目した。
10歳で防災士取得!家族と愛犬を守るため奮闘
日南市飫肥小学校5年生の清水尊平(たっぺい)さん(11)は、両親、祖母、そして愛犬「くるる」と暮らしている。

尊平さんは2024年度、県内最年少の10歳で防災士の資格を取得した。きっかけは、病気で学校を休んでいた時に身近で起きる災害について考え始めたことだ。

防災を学んでいくうちに、地震などの大規模災害時には看護師の父親が仕事で家にいないことを知り、「家族はおばあちゃんと、ちょっと(体に)障害があるお母さんがいるので、いざ(災害が)起こったらどうしようという思いで防災士になろうと思いました」と語った。

また、愛犬「くるる」を守りたい。という強い気持ちも、尊平さんを動かした。

尊平さんの人柄について、父・正彦さんは「両親にも祖母にも優しい子。いろんな人にも気を使ったり、さりげない優しさが出る所がある」と話している。
難関資格取得への道のり
しかし、防災士の資格取得は容易ではなかった。「漢字の読み方と意味」が大変だったと尊平さんは振り返る。

母親の真喜子さんは「親が先取り学習をして、子どもに教えて、という時間を1カ月位ずーと繰り返し繰り返しだった。分厚いテキストだったから…」と、親子二人三脚での学習の様子を語った。
夏休みは救命講習を受講
夏休み、尊平さんはサッカーチームの仲間にも救命方法を知ってもらいたいと消防署で講習を受け、心肺蘇生法やAEDの使い方を学んだ。

日南市消防本部警防課の中尾泰一郎主査は「小学生からの(講習の)申し込みというのが今まで私の経験上なかったので驚いた。言ったことをみんなで情報共有して実技できるということにびっくりした」と、尊平さんの行動力と学習能力に驚いていた。

尊平さんは「最優先に命を守れる行動をとりたいということで、自分たちにも出来ることが増えてとてもうれしい」と話した。
小さな子供たちの「命を守る替え歌」を制作中
尊平さんは、幼稚園児など小さな子どもたちにも防災の大切さを分かりやすく伝えようと、「替え歌」を制作中だ。子供たちがみんな知っている「森のくまさん」のリズムで、地震や火事のときにどうするべきかを歌詞に盛り込んでいる。

「ゆらゆら ゆらゆら 地震だ 地震だ ぐらぐら ぐらぐら ゆれだした ゆれだした 机の下にか・く・れ・て~ いのちを ま・も・り・ま・しょ~」と、覚えやすい歌詞で、子供たちの防災意識の向上を目指している。

「幼稚園生たちにも、防災ってすごいんだなあ」「いろいろ起きた時に、こうやってした方がいいんだなあって感じで覚えられると嬉しいです」と、尊平さんは笑顔で話した。
将来の夢
尊平さんの将来の夢は、「誰にでも頼られる存在。災害が、いざ起きた時にどうするか考えるんじゃなくて、自分からパパッて動く防災士になりたいです」というものだ。

家族や愛犬を守るための防災を学ぶことで、自分も成長できていると話す小学生防災士の尊平さん。これからも防災の大切さを伝え続ける。
防災士の現状と課題
防災士とは、自助・共助による地域の防災力向上を目指し、2003年に日本防災士機構が創設した民間の資格だ。

宮崎県では約7600人の防災士が登録されているが、活動実態には課題も残る。県が2021年に行ったアンケート調査によると、防災士資格取得後に「継続的に活動している」と回答した人は58%にとどまった。約4割の人々が防災士として活動できていないことが明らかになった。

理由として「活動する時間がない」が35.6%で最も多く、次いで「防災士としての知識に自信がない」が16.5%であった。「防災士として活動することを想定していない」という意見も15.6%に上った。
県による対策と今後の展望
県では、メルマガ登録者に定期的に研修会の情報を発信するなど対策に乗り出している。資格を取って終わりではなく、万が一の時にその資格がどう生かせるのか、研修会などで改めて防災士の活動について考えてほしい。
(テレビ宮崎)