秋の味覚・サンマについてです。今年は水産関係者から奇跡のサンマという言葉が出るほど、身が大きく、脂乗りが良い魚体が水揚げされています。近年は小ぶりや不漁に直面しているサンマ。今年は何が違うのか、専門家に聞きました。
記者リポート
「午前6時です。すでに香ばしい匂いが漂っています。こちらの焼かれているサンマ、今年は例年になく大ぶりとなっています」
9月7日、名取市のゆりあげ港朝市で開かれた「さんま祭り」。無料で配布されたサンマの大きさは、去年より30グラムほど大きい、150グラムほどになっていました。
福島から
「去年買っていたのは細かった気がする」
多賀城市から
Q去年と比べてサンマの大きさどう?「全然ちがいます。2倍くらい違うんじゃないですか」
男の子
「おいしかったー!」
県内の漁港でも水揚げが始まったサンマ。各地の漁業関係者も…
第5太喜丸 深堀将吾漁労長
「今年はいいんじゃないですか。去年に比べると脂も乗ってるし」
仙台水産遠海部 本郷淳部長
「私たちから見れば『奇跡のサンマ』と言えるくらい大きいサイズのサンマが入ったと思う」
魚のプロがうなる、”奇跡のサンマ”。今年、気仙沼や女川で初水揚げされたサンマのサイズは140グラム前後。去年は、シーズンを通じて100グラムほどが中心で明らかに違います。
今年のサンマは何が違うのか。毎年、太平洋でサンマの調査を行っている専門家・水産研究・教育機構の冨士泰期主任研究員に話を聞きました。
水産研究・教育機構 冨士泰期主任研究員
「要因として考えられるのが、餌の量がここ数年の中では良くて、サンマが大きく成長できたということが可能性として考えられると思います」
一般的にサンマは、冬に、黒潮が流れる暖かい海域で産卵し、その後、夏にかけてエサのプランクトンを豊富に抱える親潮海域まで北上します。その後、栄養を蓄えて秋に再び産卵のため南下。日本の漁船はその際に日本近海を通る、大きく成長したサンマを漁獲しています。
サンマのエサとなるプランクトンが少ない黒潮海域に対して漁獲前に過ごす親潮海域は栄養が豊富。大きく育つには絶好の環境です。
一方でおととし以降は、栄養分が少ない黒潮続流と呼ばれる海流が本州の沿岸部に張り出す現象が発生していて、栄養が豊富な海域が少なくなっていました。これが、ようやく去年12月ごろから解消され、さらに、親潮も南の海域に張り出し、日本近海で栄養が豊富な海域が広がったのです。
水産研究・教育機構 冨士泰期主任研究員
「黒潮と親潮はそれぞれ別のメカニズムで動いているので、黒潮が引っ込めば、親潮が出てくるというわけではないんですが、今年に関して言えば、たまたまその両方が起きていて、サンマの餌が増えやすい状況を作った可能性はあると思いますね」
近年は深刻な不漁が続き、それに伴い価格も上昇しているサンマ。美味しいサンマを安く食べたい!というのが一番の思いですが…専門家は、現在水揚げされている大きいサンマは10月ごろまでしか食べられない可能性が高いと話します。
水産研究・教育機構 冨士泰期主任研究員
「要因は非常に難しいんですが、今年6月、7月に調査を行って、日本に近い海域にいるサンマは比較的大きくて、それより沖側に行くとだんだん小さくなっていくという傾向があったことは分かっています。漁期の後半(10月以降)になると、小型、ややサイズが小さくなってくるというのが、これから起きてくるかなという見通しです」
水産研究・教育機構の調査では今年のサンマの日本近海への来遊量は昨年並みの低水準と予想されています。
もはや『高級魚』になりつつあるサンマ、再び「庶民の魚」に戻ることはあるのでしょうか。