海のアクティビティの魅力を伝えようと、島根県松江市の男性がスクールを開いています。
スクールには、脳性まひのため身体が不自由な人も参加し、ボードの上に立ち、パドルを漕いで進む「サップ」などのアクティビティに挑戦、海の楽しさを満喫しています。
波に揺られて、パドルを操ります。
あきらめている暇はありません。
松江市島根町の野波海浜公園で、マリンアクティビティのスクールが始まります。
忙しく準備を進めるのは、釜屋祐介さん。
ボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進むSUP(サップ:Stand Up Padlleboard)の公認インストラクターです。
松江市の海を拠点に、SUPなどの普及を目指す団体の代表を務めています。
やってきたのは、車いすの男性。
釜屋さんのスクールに通う、渡邊隆介さんです。
脳性まひのため、幼いころから手足をほとんど動かすことができません。
話すことも難しく、携帯用の会話補助装置が手放せません。
かろうじて動く左手の指先を使ってキーボードを押し、考えを言葉にします。
このスクールは、障害の有無に関係なく誰でも参加することができます。
始まりは3年ほど前、釜屋さんと渡邊さんが初めて出会ったときにさかのぼります。
渡邊隆介さん:
最初はとても緊張しました。
RAINBOW WAVE・釜屋祐介さん:
初対面なので緊張したっていうことね。
Q.その時の事覚えてますか
RAINBOW WAVE・釜屋祐介さん:
覚えています。パワーポイントの資料もって『嫁ヶ島に渡りたいんです!』っていきなり言われて。まぁでも『渡れますよ、別に』みたいな。そこから始まったっていう感じです。
釜屋さんが企画した宍道湖の嫁ヶ島にサップで渡るイベントに、渡邊さんが参加したいとやってきました。
二つ返事で引き受けた釜屋さんは、水中に落ちた場合の対処法の訓練など数か月かけて準備、渡ることに成功しました。
RAINBOW WAVE・釜屋祐介さん:
(障害があると)海とかいけない子がたくさんいるんだなというのを知って、うちのスクールは、そういった子を受け入れてやれるスクールを目指そうという風に思うようになったきっかけが、渡邊くんですね。
こうして始まった「誰でも参加できる」スクール。
その輪は広がり始めています。
この日のもう一人の生徒、井上智史さん(19)。
4月から仲間に加わりました。
生後まもなくかかった脳の病気のため脳性まひになり、両足と左腕を自由に動かせず、車いすで生活しています。
2人がそろったところで始まったのは、ミーティング。安全のために欠かすことはできせません。
サポートメンバー:
(支えるときは)こっちと足と、それから3人で腰を(持つように)。
渡邊さんが乗り込んだのは、水陸両用の車いす「モビチェア」。
手足が動かない人でも海を楽しめるようにしたいと釜屋さんが用意したものです。
肘かけや車輪が浮きになって、プカプカと海に浮きます。
一方、井上さんも全力で海へ。
波と遊んだあとは、ここからが本番、サップボードに上がります。
RAINBOW WAVE・釜屋祐介さん:
いいかんじ。前より上手になったね。
サップを始めて4か月ほどですが、パドルさばきも慣れたものです。
井上智史さん:
久しぶりだったので楽しかったです。(スピードが)出たときは気持ちいいし、今はおもしろいです。
渡邊隆介さん:
(障害だからと)諦めようという気持ちは全くなく、してみたいと思ったらしてみようと思っています。(釜屋さんが)障害があるからできないとは言わず、どうしたら一緒にできるかを考えてくれたのが印象的です。(こんな場所を)私も作りたいと思っていたところに出会えて、とても喜んでいます。
釜屋さんのスクールは、2人の「やってみたい」に挑戦できる貴重な場になっています。
RAINBOW WAVE・釜屋祐介さん:
マリンアクティビティを楽しむというところは、友達だったら関係ないと思うんですよね。だからあまり障害がとかは思っていなくて。そんなことを気にしなくてもできるようになるようなビーチが増えるようになればいいなと思います。
「誰もに開かれた海に…」。
釜屋さんは、これからもパドルとボードで海へ飛び出す楽しさを伝えていきます。