さまざまな病気により記憶や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障を来す認知症。
そんな認知症を巡る、ある研究の成果が発表されました。

1日の「ソレってどうなの?」は、「楽器演奏で“脳の老化”がストップ?」をテーマにお伝えします。

65歳以上の高齢者が約3人に1人といわれる現代社会。
高齢化の進展とともに、認知症と診断される人も増加しています。

厚生労働省の発表によりますと、2040年には認知症の高齢者は約584万人。
高齢者全体の15%ほどが認知症になると推計されています。

認知症にならないために日々の生活の中で何か対策をしているか尋ねたところ、「パソコン教室に行っている。パソコン教室週1、太極拳週1、ダンス週1。人生楽しく長生きしたいと思って続けている」「語学。ドラマや歌とかを聴いて意味が分かったら楽しいだろうなと。結構疲れるが、疲れるのは脳を使っていることなんじゃないか」といった声が聞かれました。

そんな認知症を巡り、京都大学などの研究チームが61歳から85歳までの楽器初心者を対象に、楽器練習を続けた人とやめた人では認知や脳の機能に差が出ると明らかにしました。

研究を取りまとめた京都大学・積山薫名誉教授はこの研究について、「鍵盤ハーモニカ。息を吹きながら片手で吹く楽器をやってもらった。まったく楽器の練習をしたことがない60歳以上に集まってもらい(実験を)やった。4カ月、週に1回、鍵盤ハーモニカの練習をしてもらい、プログラムを用意して参加してもらった」と話します。

このレッスンを受けたグループと何も練習しなかったグループで、脳の働きに差があるかをMRIによる計測などで比較。
その結果、レッスンを受けたグループの方が認知能力や脳の機能が向上していることが確認できたといいます。

さらに、本来の研究はここで終了する予定でしたが、その後も意欲的に練習を続ける高齢者がいたため追跡調査を行うことになったそうです。

新たな研究で、楽器練習を3年以上継続した人と途中でやめた人を比較。
その結果、楽器の練習に関係する脳の機能の老化が食い止められたという結果が出ました。

京都大学・積山薫名誉教授:
楽器の演奏続けた方はワーキングメモリー(作業記憶)が落ちてなかった。そして楽器をやめて他の、例えば卓球とか同じ施設の中で別の趣味に移行した方々は、ワーキングメモリーに関しては加齢によってこの4年という年月のために低下していた。その(作業記憶の)低下を楽器を演奏することで食い止めることができたというふうに考えてる。

また、楽器の演奏は人と交流ができる機会が増えるため重要だといいます。

京都大学・積山薫名誉教授:
楽器の練習といっても、楽器をただ指で操作していくだけでなくみんなと一緒にやる。ちゃんとみんなとやれるようにしよう、そういう社会的な場面でどう振る舞おうという、どうすればいいかという意欲を持って取り組むことがとても大事。

積山名誉教授は楽器以外にもダンス、ボードゲーム、パズルや麻雀などで認知症のリスクが減るという研究結果があると話しています。

今回、「イット!」はシニア向けの音楽教室を取材しました。

田中さんは定年を迎えてピアノを再び始めて、月に3回ほどレッスンを受けています。

年に1曲のペースで練習を重ねてきた田中さん。
8月、発表会に出演しました。

ピアノを習い始めた理由についても伺いました。

ピアノ歴2年半・田中綾子さん(68):
高齢者施設に勤めていて、普通の方が認知症になる。元気にならなくなるところを本当によく見てました。そうならないように自分で努力しなければ。ピアノは目も足も使う。手も使います。楽譜を読む頭も使いますし、フル回転します。アドレナリンっていうか、元気になってくるのかなと思う。

ますます高齢者が増える中で、何か新しいことにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。