防災の日の9月1日は、7月のカムチャツカ半島沖地震での津波避難から見えた課題を検証します。

7月30日に、ロシアのカムチャツカ半島沖で起きたマグニチュード8.8の巨大地震。
気象庁は、太平洋沿岸の13都道県に津波警報を出しました。

岩手・久慈市で1.4メートルの津波を観測するなど、22都道府県で津波を観測。
各自治体が200万人以上に避難指示を出しました。

そのうちの1つ、20cmの津波を観測した神奈川・藤沢市では、カムチャツカ沖地震が発生する4日前にできたばかりの津波避難タワーに一時、160人が避難しました。

防災士の資格を持つ宮司キャスターが藤沢市の津波避難タワーを緊急取材。
すると、津波避難の新たな課題が見えてきました。

住宅街を歩くこと、約5分。
宮司キャスターの前に現れたのは鉄骨2階建て、高さ7メートル、971人の収容が可能という津波避難タワーです。

車いすや高齢者も避難しやすい緩やかなスロープを上がると、一時避難場所になっている2階のスペースにたどり着きます。

しかし屋上に行ってみると、宮司キャスターは「直射日光を遮るものがありませんので、長時間、この場所に居続けるのはなかなか難しいかなという体感です」と話しました。

13都道県の津波警報は約11時間後に注意報に切り替えられましたが、注意報が解除されたのは翌31日の午後4時半。
約32時間後のことでした。

日本列島は地震が発生したこの日、猛暑に見舞われていました。

北海道・むかわ町では、避難所となった消防署の屋上に約300人が避難。
FNNのカメラは、津波警報を受けた地域に住む人々が炎天下の中、避難する様子を捉えていました。

また、兵庫・丹波市で最高気温41.2度を記録。
全国では、避難中の熱中症の疑いで9人が搬送されました。

その多くが子供や高齢者でした。

藤沢市防災政策課・佐々木英之課長補佐:
(Q. 暑さはつくられる段階で頭にあった?)いわゆる水分補給だったり直射日光という視点はあったんですが、こういった気候変動の中でも高温対策の視点で考えていたかというと、そこは検証が必要かなと。滞在を続ける中で、より快適というところの視点はどこまで検討していく必要があるか、今後皆さんの声を聞きながら一緒に考えていく。

取材したタワーはあくまで1次避難所で、猛暑など夏の時期の避難は想定されていなかったということで、藤沢市は今後の課題として検討していくということです。

FNNでは今回、当時津波警報が出た複数の自治体にアンケートを行いました。

アンケートの回答では、避難所にエアコン設置などの熱中症対策について、東北や九州の一部自治体は「予算が足りないため難しい」とコメントしています。

また、暑さ以外の課題も浮き彫りになりました。
避難時の車の渋滞です。

北海道・苫小牧市では高台の公園に向けて長い渋滞が発生。

なぜ、このような現象が起きてしまったのか。
人流データを解析している会社に話を聞きました。

こちらの会社ではスマートフォンアプリから位置情報などを集積し、独自の技術で人の動きなどを解析しています。

苫小牧市内の当時の車と人の動きを追ったデータを見ると、津波警報発表から1時間まではどんどん高台へと向かっていき、滞留を示す赤丸が重なり合って渋滞が発生しています。

しかし、津波警報発表から6時間経った午後4時ごろには、赤丸が高台から次々と離れ始めました。

津波警報が出ている最中でも、高台避難をやめる人がたくさんいたことが今回のデータで浮き彫りになりました。

株式会社Agoop 人流データ可視化の開発担当者・上山宏氏:
内陸に避難した車などが主要な道路とぶつかり、さらに渋滞していった傾向が見える。警報が出た後に渋滞している傾向は(全国)どこでも増えたかなと思います。

今回のアンケートでも、車での避難について東北地方のある自治体は「車の避難が増えれば、渋滞だけでなく徒歩避難に支障をきたす恐れがある」という回答がありました。

国は、津波避難では徒歩が原則としていますが、酷暑での高齢者の避難方法など検討が必要だとしています。