聴覚に障害がある選手を対象にした「デフリンピック」が2025年11月、日本で初めて開催される。
この大会のバドミントン日本代表に選ばれた高校生の挑戦の日々を追った。
聴覚障害者の国際大会「デフリンピック」
森本悠生さん18歳。
北海高校バドミントン部のエースだ。

難聴のため、練習にはいつも補聴器をつけて参加している。

東京2025デフリンピック。
4年に1度行われる聴覚障害者のスポーツの国際大会に、森本さんは日本代表として選ばれた。
デフリンピックの開催は日本では初めてだ。

「まだ雰囲気とかもわからない状況なので、まずは過程を楽しんでプレーした方が力が発揮できるんじゃないかと思います」(森本さん)
2023年、ブラジルで行われた19歳以下の「デフユース」の大会では、混合ダブルスで金メダル、シングルスで銀メダルを獲得した。

難聴の森本選手はどのようにプレーするのか。
「健常者でしたら打球音、相手が打った音で球(シャトル)を無意識に判断するんですけど、森本(選手)はその要素がないので、相手の打った瞬間の打球の角度と強さを瞬時に判断してるんだと思います」(北海高校バドミントン部顧問 伊藤健史先生)
コートの音を消してみる。
森本選手は、相手選手の打つ角度などに反応しているという。

ろう学校から一般校へ― 挑戦の日々
札幌市で生まれ育った森本選手は、小さいときから父親にバドミントンを教えてもらっていた。
中学までは札幌市内のろう学校に通っていたが、一般校の北海高校に進学した。
「『北海高校で全国目指して。デフバドミントンで勝つことを目指して。一緒に学びながら頑張ろう』って、言ったと思います」(伊藤先生)
「楽しみと不安、半分半分かな。やっぱり友達と会話。コミュニケーションが取れるかちょっと不安だった」(森本さん)

高校では森本選手が持参したマイクを教師が使って授業が行われる。
「最初は会話とかしづらいのかなって結構思ってて、ちょっと不安が結構あったんですけど、いざ一緒になってみたら意外と普通に会話とかもできる」(バドミントン部の同級生)

7月、北海高校の文化祭で森本選手のクラスはチャーハンの店を企画した。
まわりが騒がしいと声が聞き取りにくくなるという。
「出来た?」「もうちょっと」「もうちょっと?」「大丈夫そう?」「うん」「頑張って」(同級生と森本さんのやり取り)
「やばいっす、暑い。チャンピオン、さすがです」(バドミントン部の同級生)

選手権では「一般の部」でエントリーし大人と対戦
8月、森本選手は函館市で開かれた「北海道バドミントン選手権」に出場した。
エントリーしたのは「高校の部」ではなく「一般の部」。
世界各国の大人の選手と対戦する、デフリンピックの前哨戦だ。
ダブルスは1回戦で敗退し、悔しい思いをした。

シングルス1回戦。
相手はプロチーム所属の社会人。
2023年に練習試合で対戦したときには歯が立たなかった。
インターバル。騒がしい会場でのコミュニケーションにはホワイトボードを使う。
「ドロップが効く」
このアドバイスに従って、21点目をドロップで決め切って第1ゲームを先取した。
第2ゲームは接戦でゲームを落とすも(19対21)、第3ゲームは点差を広げて初戦を突破(21対15)。

次の相手は北翔大学の選手。
序盤から相手にペースを握られ、第1ゲームは8対21。
第2ゲームも17対21で一歩及ばず、2回戦で敗退となった。
「アドバイスを(もらってきて)」(伊藤先生)
試合後、森本選手は対戦相手のもとへ。
「高校生らしく元気よくできればもっといい結果につながると思うから、これからも頑張ってください」(対戦相手)

補聴器なしで挑むデフリンピック
「東京デフリンピックまであと3か月しかないので、残りの期間を1日1日大切にしながらまた練習を頑張っていきたいと思います」(森本さん)
デフリンピックでは補聴器を外すことがルールだ。
高校に戻って補聴器なしの練習が始まった。
シャトルの音がしないコート。
森本選手はより相手の動きに集中します。
