古いものから新しいものまで佐賀の魅力を改めてお伝えする「佐賀最発見」。今回は着付けができなくても着られるという着物です。鳥栖市の女性が開発したその技術は特許も取得。気軽に着られる着物を通じて海外はもちろん国内にも魅力を発信しています。

今年5月、武雄市で開かれたイベントのステージを飾った和装姿の人たち。

【モデル(福岡から)】
「もっと息苦しいイメージだが、着ている枚数が少ないのもあって楽に着られる。これ1枚あったら夏も花火大会楽しめそうだなと思いながら着ていた」

なかには飛び入りで参加する人もいました。

【飛び入りで参加(鹿島市から)】
「とてもかわいかった。なんか便利、すぐ着られて良かった」

【観客(福岡から)】
「初めて知った。車いすを利用されている人とか、障害のある人、着物をなかなか着ることができなかった人が気軽に着られるので、とても喜ばれるのではないか」

その名も「Chiaki(ちあき)わんだふく」です。
この着物を開発したのは鳥栖市在住の中野智明さんです。

【中野智明さん】
「外でのショーをするのは今回が初めてで。いい天気に恵まれた、最高だった」

中野さんは鳥栖市で着付け教室などを行う美容サロンを営むなか、制作した着物の販売やレンタルなども行っています。
販売価格はセットで10万円前後、2店舗で常に100着の在庫を揃えているといいます。その制作している着物というのが…

【川浪】
「それでは着てみたいと思います。スタート」
スカートみたいに履いてジャケットを着て帯を巻きつける…少しもたついてしまいましたが…「着られました。2分です。早っ」

中野さんが制作しているのは着付けがいらず2分で簡単に着ることができる着物なんです。

【中野智明さん】
「(友人から)“一緒にドバイで販売してみないか?”と誘いをもらったのがきっかけ」

いまから9年前、中野さんはドバイに住んでいる友人から海外の人に着物を着せてあげたいと相談されました。
しかしドバイに行く都合が合わず、さらにその友人も着付けができませんでした。

【中野智明さん】
「友人から”着付けができない私がどうやって売るんだ“と言われ。彼女が着付けができないということをクリアしたら良いんだと思い“着付けのいらない着物”をなんとかして作りたいなと」

わんだふくは上下セパレートになっていてスカート部分には長さの調整ができるようビスチェがついています。
着物に欠かせないお端折りはジャケット部分に元々くっついています。
特にこだわったのは衿の部分です。

【中野智明さん】
「ファスナーをつけて、最初は右をペタ、右の衿の上に左側をペタ。マジックテープが付いているので、これで衿ができあがり。きれいに着るのに大切なのは“衿”とずっと考えていたので、なんとかして誰でもパッと着たら衿がグッと抜けたみたいな」

中野さんは衿が立体的になりちょうどいい角度の抜け加減になる着物用の下着を開発。
さらに、帯はマジックテープでくっつくようにしていて紐は一切使いません。
こうして完成したわんだふくの販売を始めるとドバイはもちろん、イギリス、タイ、フランスなど海外でも大好評に。

【中野智明さん】
「夢が広がった、実際に売れている様子、好評だという言葉をもらうと“よかったな〜”と。自分で一生懸命考えて、徹夜で縫って、最初のころは自分で縫っていた」

その後、着物用の下着を含むわんだふくは2021年に特許も取得しました。

【中野智明さん】
「私にとっては使命を果たした。衿は譲れない、衿の美しさは負けたくない」

当初は海外の人向けに作った着物でしたが実は日本人にも好評で、この日もわんだふくを求めお客さんがやってきました。
わんだふくはすべて1点ものでポリエステルで自宅で洗濯ができるのも大きなポイントです。それぞれお気に入りの1着を見つけました。

【客(初めて来店)】
「簡単に着られるので、1時間に3着、あっ4着目ですけど。軽くて全然きつくない」

この日、中野さんは佐賀市の福祉施設を訪れました。

【中野智明さん】
「私自体がこういう施設に来て、皆さんと直に触れ合うのは初めて」

西九州大学で福祉を学ぶ3年生や福岡のボランティア団体と協力し、初めて福祉施設の利用者向けの試着体験会を開きました。

参加したのは重度の知的障害などがある利用者約30人です。
用意したのは男性もの、女性ものあわせて10着の浴衣、特に、男性用は今年完成した新作です。
当初、試着は1人1着の予定でしたが初めて浴衣を着た利用者も多く何着も着る姿が見られました。

【利用者(男性)】
「着物、楽しかった」
Q.着心地は?
「いい」
【利用者(女性)】
「浴衣着るのは初めて。かわいいものが着られてうれしかった」

【社会福祉法人はる 野中まゆみさん】
「いつもと違うイベントはすごく緊張したり、いつもと違う行動があったりとか見られるが、きょうはすごく皆さん落ち着いていて、表情も笑顔が出ていて」

利用者と直接かかわったことで、中野さんにも気づきがあったと話します。

【中野智明さん】
「難しい練習なしにサッと着られるので、言葉が通じない海外の人でも、ちょっと身体が弱い、体力がない人でも着られるし、不自由があっても着られるし、着ちゃえばみんな似合うし。“不”をなくしたい。不自由の“不”、不足の“不”をなくしたいと思い続けている」

【中野智明さん】
「こんなに喜んでいただける。着物の力ってすごいな。着物が好きだったら誰でも着られる。そういう着物に育てていきたい」


販売価格は10万円前後・レンタル価格は1泊2日で1万円から(振袖は2万円から)
試着希望は鳥栖市藤木町の鳥栖サロンで受け付けているということです。
「090−6635−8205」

サガテレビ
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