天皇皇后両陛下は8月15日、東京・千代田区の日本武道館で行われた「全国戦没者追悼式」に臨まれました。戦後80年にあたり、陛下は初めて「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」という文言を盛り込んで、おことばを述べられました。
全国戦没者追悼式と歴代天皇の「おことば」
終戦から80年を迎えた8月15日、天皇皇后両陛下は「全国戦没者追悼式」に出席されました。今年はおよそ3400人の遺族が参列、戦後生まれが初めて半数を越えました。

白木の標柱の前に進み、深く一礼された両陛下。正午の時報に合わせて、戦争の犠牲となったおよそ310万人に黙とうが捧げられました。

「堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」
80年前の昭和20(1945)年8月15日、正午。昭和天皇の玉音放送で戦争の終結が告げられました。

政府主催の戦没者追悼式が初めて行われたのは、昭和27(1952)年5月2日。戦後、日本が主権を回復してわずか4日後のこと。会場は東京・新宿御苑でした。
毎年8月15日に開催されるようになるのは昭和38(1963)年から。そして昭和40(1965)年からは、日本武道館が会場となっています。

《昭和43(1968)年 昭和天皇のおことば》
「終戦以来ここに23年。さきの大戦において、国に殉じた数多くの人々とその遺族を思い、今もなお胸の痛むのを覚える。本日、親しく、この追悼式に臨み、往時をしのび、また内外の現状を顧みて、感慨誠に深いものがある。ここに全国民と共に、国運の発展と世界の平和を祈り、心から追悼の意を表す。」
第1回から毎回参列し、おことばを述べてきた昭和天皇。最後の出席となった昭和63(1988)年には「歳月の流れははやく、終戦以来すでに43年、この間、国民の努力により国運の進展をみましたが、往時をしのび、誠に感慨深いものがあります。」と述べました。

歴代の天皇の「おことば」には、それぞれの戦争と平和への思いが込められています。
上皇さまは平成7(1995)年、戦後50年の式典で「戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い…」という一節を加えられました。そして平成27(2015)年、戦後70年を迎えた年には「ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に…」と、初めて「深い反省」という言葉を使い、犠牲者を悼まれました。

両陛下は、今年、戦後80年にあたり、各地で慰霊を続けられています。沖縄訪問には、愛子さまも初めて同行し、戦争体験者から話を聞かれました。

若い世代に戦争の記憶と教訓を引き継ぐことの大切さについて、度々言及されている陛下。そのお気持ちは、戦没者追悼式のおことばにも反映されていました。

《天皇陛下のおことば 全文》
本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦においてかけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来80年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います。
ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

初めて「苦難を語り継ぐ」ということばを加えられた陛下。戦争の惨禍が繰り返されないことを願い、平和への思いを新たにされました。
(「皇室ご一家」8月24日放送)