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プレスリリース配信元:株式会社帝国データバンク
主要上場建設会社58社の受注・業績動向調査(2024年度)
株式会社帝国データバンクは「主要上場建設会社58社」の2024年度の受注・業績動向について調査・分析を行った。
SUMMARY
2024年度の主要上場建設会社58社の業績は、売上高合計で前年度比6.9%増、売上総利益率で0.6ポイントアップと、売上高・売上総利益率ともに上昇した。民間の建設需要が堅調であったことや、資材・人件費の上昇分を請負金額へ転嫁できたことがプラスに働いた。
しかし、人手不足は深刻化しており、「受注したくても人繰りがつかず、受注できない」という声も多く、人材確保のみならず人材育成・定着などが課題となっている。
※前回調査は2023年12月27日
※なお、(株)竹中工務店(未上場、大阪市中央区)は、売上規模を勘案し調査対象に加えている。
民間受注高がけん引 請負金額への転嫁が進み、売上総利益率は0.6ポイント上昇
売上高動向 ~前年度から1兆3771億円増加
主要上場建設会社58社の2024年度(2023年4月~2024年3月)での売上高合計(連結ベース)は、前年度比6.9%増の21兆3547億円だった。増収企業数は41社(構成比70.7%)、減収企業数は17社(同29.3%)。
売上高の増加率では、「日本基礎技術」が前年度比28.4%増でトップ、次いで「佐田建設」の同23.7%増、「大成建設」の同22.1%増の順となった。減少率では、「大本組」の前年度比15.6%減が最も大きく、次いで、「大豊建設」の同12.1%減、「日本国土開発」の同12.0%減で続いた。
政府による防災・減災、国土強靭化対策等にけん引された公共投資が底堅く、企業の旺盛な設備投資意欲に伴う民間投資の持ち直しにより民間からの受注が8.3%増と旺盛であったことや、物価高騰を反映した請負金額の上昇などにより、7割の企業が増収となった。

売上総利益率動向 ~資材・人件費高騰分の転嫁が進む
主要上場建設会社58社の売上総利益率(連結ベース)の平均は、2024年度は11.8%。前年度より0.6ポイント改善となった。売上総利益率は37社(構成比63.8%)で上昇、21社(同36.2%)で低下した。
売上総利益率の増加幅トップは、「第一建設工業」で前年度比6.0ポイントの増加。次いで、「清水建設」が同5.6ポイントの増加で続いた。減少幅では、特定大型造成現場で追加費用が発生した「日本国土開発」の9.4ポイント減が最大だった。
資材や人件費の上昇分を請負金額へ転嫁する動きが進んだことや、採算重視の選別受注により一定の利幅を維持できたことが要因とみられる。

受注動向 ~前年度比4.4%増、30社が増加
主要上場建設会社58社のうち、単体の受注高が判明した46社の2024年度の受注高合計は、前年度比4.4%増の15兆8003億6400万円だった。46社のうち、30 社(構成比65.2%)で受注高が増加、16社(同34.8%)で減少した。首都圏の再開発や物流施設、データセンター、半導体関連工場など民間の活発な大型設備投資が受注高増加の要因になったとみられる。なかでも、土木工事は新幹線延伸工事などの地域特有の事業に加え、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」などインフラ設備関連工事がプラスに働いた。増加率では、官公庁工事・民間工事とも受注を大きく伸ばした「植木組」が前年度比66.7%増でトップ。次いで「東急建設」が同36.9%増、「錢高組」が同34.7%増の順となった。減少率では、官・民工事とも低下した「清水建設」の前年度比24.2%減が最大。次いで「佐藤渡辺」の同23.8%減、「ヤマウラ」の同20.6%減で続き、30%以上落ち込んだ企業はなかった。

受注動向<官・民内訳> ~官公庁は微増。民間が全体をけん引
主要上場建設会社58社のうち、工事受注高の内訳(官・民)が判明した29社をみると、官公庁工事の受注高は、前年度比1.0%増の2兆8746億7600万円だった。増加企業数15社(構成比51.7%)に対し、減少企業数は14社(同48.3%)と拮抗した。官公庁受注高の伸び率は、「イチケン」が前年度比315.4%増でトップ。次いで「日本国土開発」の同149.7%増、「戸田建設」の同90.8%増で続いた。
民間工事の受注高は、前年度比8.3%増の8兆7807億200万円。増加企業数18社(構成比62.1%)に対し、減少企業数は11社(同37.9%)だった。
民間受注高の伸び率トップは、「植木組」の同71.7%増。次いで、「大豊建設」の同60.8%増、「東洋建設」の同50.5%増で続いた。

まとめ
2024年度の58社の売上高(連結ベース)をみると、民間の設備投資が旺盛であったことや、請負金額の上昇などが主因となり、7割の企業が増収となった。売上総利益率では、資材価格の高止まりや人手不足による労務費高騰は続いていたものの、請負金額への転嫁が進んできたことから、前年度比0.6ポイント改善した。
単体の受注高が判明した46社の受注高合計は、前年度比4.4%増となった。46社中30社とほぼ3分の2の企業が増加し、減少した企業についても減少幅は以前より小さくなった。また、工事受注高の内訳(官・民)が判明した29社をみると、官公庁受注は微増ながら、民間受注は前年度比8.3%増となり、首都圏の再開発や物流施設、データセンターなどの設備投資がけん引する形となった。
今後は、官公庁では防災・減災、国土強靭化対策事業などの発注増加が見込まれ、民間ではデジタル化の加速を背景としたデータセンターや都市部の大型再開発が継続しているほか、首都圏の鉄道工事や再生可能エネルギー、脱炭素関連ビジネスの市場拡大により建設需要は当面底堅く推移すると予想される。しかし、施工管理技士のみならず現場作業員も不足しているため、案件があっても施工する業者がいない状況が発生しており、工期の長期化などによる建設コストの上昇が懸念される。
そのようななか、2025年5月にインフロニア・ホールディングスが三井住友建設に対するTOBを発表したのに続き、8月には大成建設が東洋建設に対するTOBを発表するなど、大手の再編が本格化している。今後もさらに生き残りを賭けた合従連衡など業界再編が進む可能性があり、当面の受注環境に大きなマイナス要素はないとはいえ、国内人口の減少に伴い人手不足がさらに進むことが見込まれるため、経営基盤の維持・確立に向けた施策は必要となりそうだ。
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