夏休みに手ごろな値段で楽しめる公営プール。しかし、総務省によれば10年間で約600カ所も減少しているという。一体なぜなのか?

夏のレジャーの定番「プール」

夏の時期、にぎわいを見せるプール。

中でも公営プールは手ごろな値段で楽しめることから人気スポットとなっている。

富士宮市民プール
富士宮市民プール
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静岡市では7月19日に大浜公園プールがリニューアルオープン。

開園は今から95年前の1930年で、施設の老朽化が進んだため、市は2023年から隣接する公園を含め約30億円かけて改修を進めてきた。

大浜公園プール(静岡市)
大浜公園プール(静岡市)

目玉は長さ82メートルのウォータースライダーや800リットルの水が降り注ぐバケツアトラクションで、爽快感を味わえる遊具が目白押しとなっている。

公営プールは課題山積?

ただ、全国的にはこうした公営プールは減少傾向にある。

公営プールの数推移(総務省まとめ)
公営プールの数推移(総務省まとめ)

総務省によると2011年に3943カ所あった公営プールは2021年には3352カ所にまで減り、静岡県内でも三島市や裾野市が公営プールを閉園している。

開園から2025年で29年目を迎える静岡県富士市の富士マリンプールは7月12日のオープン初日に2000人を超える人が訪れるなど、毎年10万人前後が来場する人気のプールとなっているが、頭を悩ませているのが施設の老朽化だ。

劣化により使用できないスライダー(富士マリンプール)
劣化により使用できないスライダー(富士マリンプール)

富士市文化スポーツ課の市川禎久 課長によれば、ストレートスライダーは”滑る面”が劣化により使用できないほか、スライダーに上がる階段も海岸沿いという土地柄、塩害により錆が出ていて安全が担保できない状況となっている。

また、プールに関わるコストは運営経費や売店・食堂などの関連経費、さらに改修・修繕に必要な経費など多岐にわたる。

富士マリンプールを例にとると、2024年は指定管理料が約2000万円で、そのほかに市が負担する修繕費も2000万円ほど要したという。

加えて、収益の悪化も大きな課題の1つとなっていて、開園以降、コロナ禍前の2019年までは平均して約1300万円の黒字だったが、2022年に赤字に転落。2024年の赤字額は約2162万円となった。

そこで、市は2億5000万円かけて施設を改修した上で運営を民間に委託する計画を立てたが、事業者へのヒアリングの結果、応募が見込めないため募集を中断している。

市民が役割を再評価する時機に

こうした事態を受け、富士市は今秋にも市民アンケートを実施し、今後の方針を決める判断材料とする考えだが、来園者の7割が市外在住という中で、赤字が続いた場合は市民の税金で補填しなければならないことに疑問の声も挙がっている。

インタビューに答える市民(富士市内)
インタビューに答える市民(富士市内)

実際、市内で話を聞いてみると「入場料を上げても良い。それでも続けて欲しい」と存続を望む人もいれば、「赤字と聞くと市の財政事情もあると思うので(存続か廃止かは)わからない」と現時点での判断を避ける人、「私は利用しないので廃止で良い」と答える市民など意見は様々だ。

地方財政に詳しい静岡大学人文社会科学部の太田隆之 教授は「公営プールは公営プールなりに地域で果たしている役割や機能があるはず」と説明した上で「様々なデータや現状を明らかにしながら(市民に)どうしていくのかを考えてもらうのが本来あるべき姿。考えるのは市民であるということ。公営プールの位置づけを再検討・再評価してもらうことが必要」と話す。

富士マリンプール
富士マリンプール

大きな曲がり角を迎えている公営プール…市民ニーズを見極めた上での判断が求められている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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