滋賀・彦根市が今年度から行う市内7つの中学校の生徒会長に10万円を交付するという取り組みが話題となっている。選挙で掲げた公約の実行資金に充てる仕組みだ。
生徒会長の公約実現のため10万円交付
町を見下ろすかのように建つ彦根城のある滋賀・彦根市の中学校で、今年度から行われる全国的に珍しいある取り組みが話題になっている。

テーマは、「公約実現へ 生徒会長に10万円…ソレってどうなの」だ。
彦根市のホームページに公開されているポスターには、『「ひこね」の中学生が地域・社会を変える!』と、力強いキャッチコピーが書かれている。

市の教育委員会によると、2025年度から市内の7つの公立中学校の生徒会長に10万円を交付する。しかし、生徒会長への「お小遣い」ではないという。

これは、秋の生徒会長選挙に立候補した生徒が公約を発表し、見事、生徒会長に当選した生徒がその10万円を元手に公約を実現させるという取り組みだ。

彦根市の中学生と保護者に話を聞いた。
中学3年生:
自分のしたいことができたら、もっと(生徒会に)入りたいという人も増えるので良いと思う。
中学2年生:
生徒会で立候補する人が多くなって(もっと)意見を自由に言えるようになって、もっと効率が良くなって良い取り組みだと思います。もうちょっと修学旅行を良いところにしたり、壊れているところを改装するってことを実現したい。
親世代(40代):
生徒会が使い方とかも考えて使えるのであれば、生徒の自主性とかも育つと思うのですごく良いことだと思います。
ほとんどの方が「賛成」の立場だった。
なぜ、このような取り組みを始めるのか?その背景には生徒や保護者からのこんな声があったからだという。

「形式的な生徒会活動で自由度が少ない」
「子どもたちの思いが予算などの壁で実現できない」
こうした生徒たちの思いを応援するため、市は去年から予算確保や企画アイデアを検討してきた。そして、10万円×7校分、70万円の予算を確保するため7月からクラウドファンディング型のふるさと納税を活用して資金を集めた。
8月11日、その他の経費を含めた目標額の100万円を達成したという。

この事業について、彦根市の田島一成市長は7月30日の定例記者会見でこう話している。
彦根市・田島一成市長:
どんな公約を立てて立候補してくるのか楽しみでもあり、恐ろしいところもありますけども、仲間とともに学校生活の充実を目指して具体的に取り組む経験を重ねることが、その後の生き方にも大きく影響してくると考えています。

原則、公約に縛りは設けないが、その公約に10万円を交付するかどうかは最終的に市が判断するという。
中学生が自分たちの地域の課題を解決
イット!のスタジオでは…
青井実キャスター:
山口さん、この取り組みはどうでしょう?
SPキャスター山口真由さん:
予算をつけてそれを執行していくという社会のリアルを学ぶのはすごく重要ですし、お金のことは大人に任せてねというのを見直して、金融教育を充実させようという流れにも合致するかなと思います。

青井キャスター:
中学校では、どのような公約が掲げられているのでしょうか。彦根市によると、これまで市内の中学校での公約は「目安箱の設置」が特に多く、そのほか「地域との活動を充実させたい」、なくなってしまった「文化祭を復活させたい」などがあったということです。
専門家の目にはどう映ったのでしょうか。教育評論家の尾木直樹さんに聞きました。生徒会長に10万円、どう考えますか?

教育評論家・尾木直樹氏:
子ども基本法で子どもたちも社会に参画していくというのが、基本的にすごく重視されるようになってきてますから、そういう点では時代の要請に叶っている。自分たちが主役になって行政とともに自治体や自分たちの住んでいる地域の課題を解決していける。そういうメリットはすごく大きいと思いますね。自治体から初動的にこういった動きをしてくれるのは、非常に教育現場の感覚からいえば助かる。北海道から沖縄まで、この彦根市の取り組みが伝わっていけば良いと思う。
青井実キャスター:
評価する一方で、こんな指摘もありました。
教育評論家・尾木直樹氏:
(こういった取り組みは)海外ではそれはもう常識。やってないところの方がない。ヨーロッパ諸国とか特にオランダは進んでいる。(日本は)取り残されている。そういうレベルです。

生徒の自主性を尊重する新しい取り組みに注目していきたい。
(「イット!」8月12日放送より)