読み聞かせ：
昔、戦争があって、この海に飛行機がおっこちたんだよ。その飛行機は大事な使いをすることになっていたんだ。
1945年8月の磐田市を舞台にした紙芝居。
「昔ほんとうにあった話」というタイトルの通り、実話をもとに作られました。
8月15日、国民に降伏を伝えるため玉音放送が行われましたが、文書への調印が行われるまでは正式な終戦ではなく、攻撃はまだ続いていました。
そんな中、8月20日の深夜に鮫島海岸へ不時着した通称・緑十字機。
読み聞かせ：
飛行機が落ちた、大事な文書と荷物が積んである
これに乗っていたのはマニラでの降伏条件の協議を終えた日本の軍使たちで、その文書を東京に運ぶ途中でした。
読み聞かせ：
そりゃ大変だ。人を集めにゃいかん。みんなを起こせ。知らせにゃあ。
住民たちは荷物を運んだり、電話機の場所を案内したりとサポート。
そのおかげで軍使たちは浜松飛行場へ移動することができ、飛行機を乗り換えて東京へと戻りました。
中田智久さん：
平和でなきゃ学校も行けないし、食べるものも食べられないし
この紙芝居を作った中田智久さんと三浦晴男さん。
中田智久さん：
紙芝居なら子供たちもわかりますし、子供から大人までわかりやすい内容を、ということで作りました
地元に住んでいても知らない人がまだまだ多いこの逸話を、紙芝居の読み聞かせや講演を通じて様々な人に語り継いでいこうと緑語会という名で活動しています。
現在、磐田市の埋蔵文化財センターでは2006年に発見された緑十字機の尾翼を展示。
中田智久さん：
80年という長い歳月だが、これだけ残っているというのはうれしいこと。実際にあったことを証明できますし
ただ、機体の大部分はいまも見つかっていません。
中田智久さん：
重いエンジンが2つ付いていたので、エンジン2つは必ず海の中にあることは間違いないですよね
7月12日、中田さんたちの姿は磐田市の漁港にありました。
中田智久さん：
きょうは1945年に鮫島海岸に不時着した緑十字機の水中探索を行います
きっかけは地元の漁師から「海底で不自然に盛り上がっている部分がある」との情報が寄せられたことです。
探索には海洋調査を得意とする下田市の企業が無償で力を貸してくれることになりました。
中田智久さん：
わくわくしています。念願の夢が叶いそうです
目的の地点まで船を走らせると、音響測深機の反応を食い入るように見つめます。
しかし…
調査員：
飛行機の形じゃないもんね。根っこだね。
三浦晴男さん：
あるのかね？人工的な漁礁が…
調査員：
いまデータを確認していますけど、漁礁みたいな形で…
漁師が見つけた不自然な盛り上がりは岩とみられ、2日間にわたって探索するも、結局、機体は見つかりませんでした。
それでも中田さんは調査にこぎつけたこと自体に意味があると前を向きます。
中田智久さん：
こういう探索すること自体が報道されれば緑十字機のことも知ってもらえますし、緑十字機はどういう役割をしたのか、日本の平和にどうつながったのかということを
少しでも多くの人に知ってもらえればうれしいことだと思います
終戦から80年。
緑十字機が不時着した当時のことを知る人も年々減り、現在、活動している緑語会のメンバーもやがて年を取っていきます。
だからこそ、紙芝居などわかりやすく形に残る方法でこれからも終戦の裏にある史実を伝えていく覚悟です。
中田智久さん：
緑十字機が不時着したものを見たという人も残り少なくなりまして、その証言も80年経つといろいろな証言が出てくるので、いまのうちに記録したいと思います。我々はこういうことを知っている限りは、これから若い世代に知っていただくように頑張っていく
