使われていなかった居住スペースがお化け屋敷に

 連日暑さが続いているが、北海道三笠市で中学生がプロデュースするお化け屋敷が暑さを吹き飛ばすと話題になっている。寂しくなったマチを盛り上げようと奮闘する夏に密着した。

 かつて石炭産業で栄え、太古の化石が眠るマチ、三笠市。

 中心部にあるカメラ店「三美堂」。創業68年の老舗だが、2階に目をやると「おばけやしき」の文字が。

 恐る恐る扉を開けると。

中心部にあるカメラ店「三美堂」
中心部にあるカメラ店「三美堂」
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 うつろな表情を浮かべる生首や、顔が黒く塗られた家族写真に、目玉が飛び出た血だらけの男。

 手の込んだ演出でマチを震撼させる恐怖の館をプロデュースするのは。

手の込んだ演出でマチを震撼させる
手の込んだ演出でマチを震撼させる

 「おおおおぉぉぉ!」(カメラマン)

 「こういう感じですねここから出てくるっていう」(中学1年・大政陽太さん)

 三笠市の中学1年生、大政陽太さん。

三笠市の中学1年生、大政陽太さん
三笠市の中学1年生、大政陽太さん

 小学3年生の時に祖父が経営する店で30年使われていなかった2階の居住スペースを使って手作りお化け屋敷を始め、2025年で5年目となった。

30年使われていなかった2階の居住スペースを使った手作りお化け屋敷
30年使われていなかった2階の居住スペースを使った手作りお化け屋敷

今年のお化け屋敷のテーマは「明かりの灯らない家」

 制作メンバーは幼なじみの石本優芽さんに、2人の親戚(中学2年・樋口かの子さんと小学6年・めい子さん)が加わった4人。

 毎年、細かくテーマを決めてお化け屋敷の準備を進める。

石本優芽さん
石本優芽さん

 2025年のテーマは「明かりの灯らない家」だ。

 「誕生日会をしている間にお父さんとお母さんがいなくなって、その娘さんが餓死しちゃってお父さんとお母さんをいつまでも探しているっていうテーマ」(陽太さん)

2025年のテーマは「明かりの灯らない家」
2025年のテーマは「明かりの灯らない家」

原動力は活気を失うマチに抱いた危機感

 「こういうの(マネキン)もこの辺の理容店とかそういうお店からいただいたものです。こういう顔とかも」(陽太さん)

 陽太さんを突き動かしているのは生まれ育ったマチへの思いだ。

お化け屋敷の様子
お化け屋敷の様子

 「小学3年生の頃に三笠のためにならないかなっていう思いがあって。3歳ぐらいの時はまだ通りに建物があったり、アパートとか。買い物ができる場所があったり、すごい人通りがあったんですけど、少し雰囲気が小っちゃい頃より暗いかなっていう気がしたので」

 「(2階の)なんかボロさとかもあって、お化け屋敷しかなかったんですよ、頭の中に」(陽太さん)

陽太さんの言動力は“生まれ育ったマチへの思い”
陽太さんの言動力は“生まれ育ったマチへの思い”

 ピーク時の1960年には6万人以上が住んでいた三笠市だが、炭鉱の閉山に伴い人口は減り続け、今は7000人あまり。

 活気を失うマチに抱いた危機感が陽太さんの原動力だ。

 「頑張ってお客さんの人数を120人以上超えたいなって」(陽太さん)

ピーク時の1960年には6万人以上が住んでいた三笠市(資料:2006年)
ピーク時の1960年には6万人以上が住んでいた三笠市(資料:2006年)

一目散に逃げ出したくなるほどの怖さ

 7月6日、手作りお化け屋敷、公開の日を迎えた。長蛇の列ができている。

手作りお化け屋敷、公開の日
手作りお化け屋敷、公開の日

 今回のお化け屋敷は、入口から進んで左にあるプレゼントを神棚に置くというミッションがある。

入口から進んで左にあるプレゼントを神棚に置くミッションが
入口から進んで左にあるプレゼントを神棚に置くミッションが

 1組目はこちらの親子連れ。

 「うわぁびっくりした」(父)「うわぁぁぁ」(子ども)「嫌だぁぁぁ」(子ども)「ミッションクリアしていないよ」(父)

 一目散に逃げ出したくなるほど怖かったようだ。

一目散に逃げ出したくなるほど怖かったようです…
一目散に逃げ出したくなるほど怖かったようです…

 「お化けどうだった?」(記者)「怖かった」(体験した子ども)「どこが一番怖かった?」(記者)「あたま」(体験した子ども)

お化け屋敷を出た子ども
お化け屋敷を出た子ども

 その後も

 「いやぁぁぁぁぁ」(子ども)

 「行きたくないよぉ」(子ども)

 「待って戻ったらいいの?戻ったらいいの?こっちこっち」(母)

 こだわりの演出が見事にハマったようだ。

こだわりの演出が見事にハマったよう
こだわりの演出が見事にハマったよう

 「ちょっとキモかった」(子ども)「一番泣きそうだったよ」(父)

 「怖くなかった」(子ども)「うそでしょ」(父)「だって先に行ってくれなかったじゃん」(母)

 「すごいよかったです。本物の迫真の演技が見られて」(母)

迫真の演技がみられて、客は満足
迫真の演技がみられて、客は満足

 午後5時。絶叫と狂乱のうちに手作りお化け屋敷は終了した。

午後5時にお化け屋敷は終了
午後5時にお化け屋敷は終了

毎回100人を超える人が楽しみにしているお化け屋敷

 「(来場者数は)112人です」(陽太さん)「すごくない?」(記者)「毎回100人超えるからうれしいけど。これミスったなみたいなそういうところはあったんですけど、怖がってくれた人がすごいいたからやる気になったというか」(陽太さん)

来場者は112人
来場者は112人

 「タイミング定めてここだなってとこでバーンと飛び出して結構怖がってびっくりしてくれる人がいた」(陽太さんの親戚の小学6年・樋口めい子さん)

 「めっちゃ良い反応してくれたり、泣いてくれたのがめっちゃ嬉しかった」(陽太さんの幼なじみの中学1年・石本優芽さん)

 「次はお盆にまたここで北海盆踊りがあるのでその時に合わせてやる予定です。(来場者数は)130人はいきたいです」(陽太さん)

 毎回100人を超える人が楽しみにしている手作りお化け屋敷。

 友達や親戚と怖さを追い求めながら、この夏もマチを盛り上げる。

 次回の手作りお化け屋敷の公開日は8月13日。怖さのレベルがさらに上がっていそうだ。

 実は陽太さん、中学校のバスケ部の活動が忙しくなるため、最後の公開になる可能性もあるという。

次はお盆の「北海盆踊り」に合わせて開催される予定
次はお盆の「北海盆踊り」に合わせて開催される予定
北海道文化放送
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