富山県内の広い範囲で雨が降った6日だが、山間部の農家にとっては水不足解消につながっていない。砺波市や立山町では、稲の枯れや牧草の生育不良など深刻な被害が続いている。

「水の届かないところはだんだん枯れていく」砺波市の農家

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砺波市栴檀山地区では、6日午前中に雨が降ったものの、それはほんの一瞬のことだった。田んぼはカラカラの状態が続き、市の給水車が農家からの要請で水を供給している状況である。

地元農家の吉田和博さんのコシヒカリの田んぼでは、先月からの水不足により稲が一部枯れてしまった。

「水の入り口は青々としている。水の届かないところはだんだん枯れていく。枯れているところはどうしようもない。実がならない。(30キロが)2袋か3袋分枯れた」と吉田さんは被害の状況を語る。

給水車による水の供給では、田んぼの隅々まで水が行き届かず、雨が降らなければ根本的な解決にはならないという。

「きょう午前中(雨が)降った。不十分。1日中降っても田んぼにはたまらない」と吉田さんは嘆く。

県内5市7地区で給水車による対応

県内では5日までに砺波市や魚津市など5つの市の7地区の田んぼで給水車による給水が行われている。しかし、その効果は限定的で「焼石に水」の状態だ。すでに9つの市と町で稲が枯れるなどの被害が確認されている。

立山町の牧場も深刻な水不足に直面

水不足の影響は水田だけではない。立山町の森川牧場でも牧草の生育に深刻な影響が出ている。

同牧場では約250頭の肉牛を育てているが、餌となる牧草が枯れた状態になっている。森川明浩代表は「こちらの牧草はアフリカ原産で乾燥や干ばつに強い品種。もう完全に枯れてきている。やっぱり水不足とこの暑さ」と説明する。

森川牧場では、県内で約150ヘクタールにわたって2種類の牧草を自社栽培している。例年は1度の種まきで十分な収穫が得られ、生産量の7割は県内外の酪農家に販売していたという。

しかし今年は「(収穫量は例年と比べて)全体で30%ほどは悪い。最悪足りない場合は、海外から輸入して買い入れる。今すごく円安で、世界的に穀物の値段も上がってきている。大変厳しい」と森川代表は深刻な表情で語る。

牧草の生育状況が悪いことから、8月に入ってからは牧草を育て直す取り組みも始めているが、「雨降っても土がカラカラ」という状況が続いている。

暑さ対策と今後の見通し

森川牧場では、今年から牛舎にミスト装置を導入し、さらに子牛には特別な機械を取り付けて健康状態を逐一把握するなどの対策を講じている。

「雨が降ると涼しく、牧草も育ってくれる。例年くらいの気温まで下がり、雨も降ってほしい」と森川代表は願いを語った。

今回の水不足は、富山県内の農業に広範囲にわたって影響を及ぼしており、十分な降雨がなければ被害がさらに拡大する恐れがある。

富山テレビ
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