大阪大学などが開発した初の純国産量子コンピューターの稼働が始まり、2025年8月、大阪・関西万博で一般の来場者が「量子もつれ」の操作を実際に体験できるイベントが開かれる。

量子コンピューターは、量子特有の物理現象「量子もつれ」を計算に応用することで、従来のスーパーコンピューターよりも超高速で計算ができるのが特徴。

これまで不可能とされていた、光合成のメカニズムや宇宙誕生の謎の解明など、様々な分野での研究が飛躍的に進むと期待されている。

開発競争も各国で激化しており、国内でも複数の量子コンピューターが開発されているが、大阪大学などの研究グループは、初めて主要部品がすべて日本製で作られた純国産の量子コンピューターの開発に成功した。

左から阪大Q量子情報・量子生命研究センター小川和久准教授、根来誠教授、中村泰信理研量子コンピュータ研究センターセンター長、アルバッククライオの斎藤政通博士
左から阪大Q量子情報・量子生命研究センター小川和久准教授、根来誠教授、中村泰信理研量子コンピュータ研究センターセンター長、アルバッククライオの斎藤政通博士
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計算の基本単位「量子ビット」を144個備え、2025年7月に報道陣などに向けて、操作の体験会が開かれた。

大阪大学の量子情報・量子生命研究センターの根来誠教授は、「複数の機関にまたがって分担して開発を行うため、最初は噛み合わない部分もあった。議論が深まりチームが一丸となり稼働にこぎつけた。国内で自製する力がついたことは、今後のさらなる開発の大規模化に対応するために非常に意義深かったと思う」と話した。

この純国産量子コンピューターを、大阪・関西万博の会場からオンラインで一般の来場者が操作できるイベントが、8月14日から20日まで開催される。

量子コンピューターを遠隔操作してプログラミングを体験したり、「量子もつれ」などの仕組みに触れることができるという。

根来教授は、「目の前で動いている量子コンピュータの部品が身の回りの企業で作られていることや、ソフトウェアの中身が全て公開されていることを知り、より身近に感じてもらえたらと思います」と話した。

量子コンピュータの大規模化・量産はこれからますます本格化し、将来、巨額の市場価値が見込まれるが、実用化には計算中に発生するエラーをどのように訂正していくかという大きなハードルがある。

エラー耐性を克服しながら実用的な計算に成功した研究グループはまだいないものの、エラー耐性の研究も着実に進んでいて、10年以内には実用化されるのではと期待されている。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。