物流業界の課題解決に向け、伊藤忠テクノソリューションズが量子コンピューターを活用した配送ルート最適化システム「OptyLiner」を開発。従来3時間かかっていた配車が5秒で完了し、属人性も解消。今後は新技術を活用する発想力や実行力、学ぶ姿勢と好奇心が働き方の差になると専門家は指摘する。

量子技術で誰でも使える配車システムが登場

物流の課題解決に向けて、量子コンピューターを活用した配送ルートの最適化が始まる。         

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ドライバー不足や、CO2排出量の削減などの課題に直面する物流業界。その課題解決に向けて、新たな一歩が踏み出された。

タカダ・トランスポートサービス・相見卓宏センター長:
配車にかかる時間が最大3時間かかっていたのが、調整も含めて、5分から10分くらいで終了するので、その分空いた時間を違う業務に回せることがとても魅力的。

12日、ITシステム開発を手がける伊藤忠テクノソリューションズが発表したのは、配送ルートの最適化を図るサービス「OptyLiner」だ。

配送ルートの作成はこれまですべて手作業で行われ、言わば、職人技の世界だった。

それが、配送エリアと配送荷物を入力し、「ルート計算実行」を押すと、なんと約5秒で作成。

活用されているのは、量子コンピューターと呼ばれる画期的な高速計算を可能にする新しいテクノロジーで、配送ルートの作成時間を約95%削減する。

現場の声を聞き開発したこのサービスは、誰でも簡単に使うことができるため、後継者不足という課題解決にも繋がる。

さらに、配送ルートの作成時間を考慮し、早い段階で行っていた受注締め切りをなくせるというメリットも。

トラックへの積載量を増やすだけではなく、効率の良い配送で業績アップなどの効果も期待できるという。

ドライバーと、運送会社に寄り添った新たなITサービス。

伊藤忠テクノソリューションズ デジタルサービス企画推進部・牧野昌道課長:
配車計画段階で「この人は昨日残業が多かったから、この人ではない人に振ろう」とか、そういうところの組み合わせを諦めていた。

(ノウハウを)データベース化ではないが、オープン化していくことによって、日本の配送能力が属人性ではなく、誰でも運べるような世界が近づいていくのではないかと。

技術を活用する発想力・実行力が働き方の差へ

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
現場の課題解決を図るテクノロジーの活用に詳しい石倉さんは、今回の取り組み、どうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
今後、人手不足が続くことはほぼ間違いないですが、ここで問われるのは「ITや最新テクノロジーをどう使っていくか」です。

今回、量子コンピューティングと数理最適化といった技術を使って、大幅な時間削減を実現しているわけですが、これからは私たちが出会ったことがないようなテクノロジーを仕事に取り入れる必要が出てくるのではと思います。

堤キャスター:
働き方も変わっていくのかもしれませんね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
例えば、漠然とAIツールを触ったりするだけではなく、今後はAIは何ができて、どういったことに使えるのかなど、自ら考えられるようにならないといけないわけです。

こうした、「どう使いこなすか」を、思いつける発想力、さらにはそれを実装できるかが、働く人にとって差になってくると思います。

好奇心・学ぶ姿勢が大人にも求められる時代へ

堤キャスター:
新しいテクノノロジーに合わせて、働く人もアップデートする必要がありそうですね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
これから働く個人として、重要になるのは「学ぶ時間」と「好奇心」。

そもそもAIの技術を理解したり、量子コンピューターのもとになる量子力学を理解するには、学ぶ時間が必要です。

つまり、今まで残業を含めて1日の大半を仕事に費やしていたわけですが、これからは仕事以外の時間、学ぶ時間を1日の中に入れることが必要になってきます。つまり、言い換えれば「働き方を変えること」が必須になってきます。

堤キャスター:
もう一つの好奇心については、いかがですか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
何より大事なのは好奇心だと思います。いくら学ぶことが必須になったとしても、面白がってどんどん自分で学ぶ人と、嫌々やっている人では、やはり、差が出てきます。

さらには、自分で触ってみる・やってみるなど、実際に手を動かすところまでできるか。これで実感値はまるで変わってくると思います。

そう考えると、今後は学ぶ時間を確保し、好奇心を持ってそれを行うという、ある意味、子供時代に大事にしてたようなことを、大人も求められる時代になってくると思います。
(「Live News α」6月12日放送分より)