ここ10年ほどで、一気に身近な存在となったドローン。福井県はこの春、ドローンを使うことで社会を便利にしようと“ドローンのスペシャリスト”のポストを新設し、40代の男性職員が就きました。「ドローンで福井を変えたい」と話すこの男性は、どんな未来像を描くのか、現状と課題を取材しました。

◆不足する人手をドローンに置き換える

福井市内の河川でドローンを操縦する男性。
 
「上げまーす」
  
上空から河川の工事の様子を撮影しています。
 
県庁職員の朝井範仁さんは2025年4月、県の「ドローン活用ディレクター」となりました。ミッションはずばり“ドローンで福井をもっと便利にすること”。
  
「ドローンは全分野で使える技術だと思っている。人手不足の状況において、人に置き換えられる技術だと思っているので…便利な社会にしたい」と意気込みます。

◆災害を機にドローン活用のシステムづくりに着手

朝井さんがドローンに着目したのは約10年前。林道の安全管理を担当していた時のことです。「パトロールに人手がいなくて行けない。そこでよく災害が発生する…人をドローンに置き換えられないかと思った」
  
さらに、2022年に南越前町で起きた記録的な大雨被害。ここでも…「問題だったのは、道路が寸断されるとその先に確認に行くのが困難だということ」
   
この災害を機に翌年、朝井さんはドローンが自動で飛行し被害状況を確認できるよう、システムづくりに携わりました。
 
「事前に飛行ルートを設定して飛ばし、ルート上を自動で飛行させてドローンが(被害現場を)見てくる」


さらに、2024年秋の能登半島豪雨では、ドローンを使って復旧に貢献しました。「3次元化されているので、例えば被災カ所で、どこからどの程度の土砂が出ているか面積を測ることもできるし、土砂を搬出するのにどれくらいのトラックや重機で、どれくらいの計画・期間が必要かを試算するために役立つ」
 
ドローン活用の思いを強くした朝井さんは、“この役職”を知事に自ら志願しました。「(福井)県庁にやっている人がいなかったので…プロジェクトとしてできるのは“ディレクター”ではないかと思い、そういうことをやりたいと伝えた」

◆課題は飛行ルートと採算性

朝井さんはドローンを社会に生かす実例を学ぶセミナーを開催。民間のドローンスクールや測量会社の担当者ら、約30人が参加しました。
  
世界的にも先行している静岡県浜松市では、ドローンで中山間地域に医薬品を運ぶなど、社会での利用が進んでいます。
 
クリアすべき課題は大きく2つ、「飛行ルート」と「コスト・採算性」です。
 
その「飛行ルート」として注目されているのは、河川の上空です。県では南越前町の豪雨被害を受けて、県内全域の主な河川の上空を、自動飛行させるコースとして設定済みです。
  
朝井さんはその活用に期待を寄せます。「事前に登録したルートがあるので、あれを使って物流ができないかを考えている」それは、約1200キロにも及ぶ飛行ルートです。

2つ目の課題である「コスト」。その解決のポイントは、複数の目的を“組み合わせる”ことです。
  
先行地である静岡・浜松でドローン事業を運営する会社の代表は「物流クライシスを何とかしないといけない。単体ではできないから点検を兼ねた“点検と物流”を合わせて、採算取れるようにできないか」と話します。
  
ビジネスとして成立させるためには、1度の飛行でより多くの目的を行う一石二鳥ならぬ、“一石三鳥・四鳥”が求められているのです。
 
「ドローンはいろんな“効果”がある。医療、農業、獣害対策、河川など、メリットはあるがそれだけではやらないことを組み合わせてやれないかと考えている」
 
こう話す通り、朝井さんが中心となり、民間企業とも協力して仕組みづくりを模索していきます。「いずれ、車社会の次に“ドローン社会”が来ると思っていて、そこに向けて3年後ぐらいには福井県がほかの県に比べてドローンが“日本一飛んでいる県”にしたい」


人口減少が進む中、国もドローンや自動運転などを活用することで便利な社会を全国くまなく行き渡らせる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を策定しています。
 
まだまだ課題はあるものの、福井の空でも日常的にドローンが活用する社会は、そう遠くないのかもしれません。

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。