河岸の市がリニューアルし、クルーズ船の寄港が相次ぐなどにぎわいづくりに向けた動きが活発になっている静岡市清水区。ここに来て更なる発展を予感させる計画が明らかになる一方、動きが止まっている構想もある。
新たに浮上した体感型水族館構想
「子供たちが水族館のスタッフとか飼育員などの職業体験ができる施設にしたい。キッザニアの水族館バージョンをやりたい」と話すのは体感型動物園「iZoo」を運営するレップジャパンの白輪剛史 社長。

2025年5月、白輪社長は静岡市清水区での水族館の建設構想を発表。
ペンギンやオットセイなどを展示し、飼育員のような体験ができる施設をつくる計画だ。
ところで、清水区で水族館というと思い出されるのが静岡市の進める“海洋・地球総合ミュージアム”構想。

しかし、市民に「海洋文化施設の計画を知っているか?」と聞いても「知らない。駅前?」「水族館?もともとあった方ではなくて?」「(水族館ができる計画は?)知らなかった」など、すっかり忘れ去られた存在になってしまった印象を受ける。
先行した市の海洋ミュージアム構想は?
なぜこのような事態になっているのか、その背景をヒモトクと…。

ことの始まりは今から遡ること8年。
清水港に教育や観光、そして研究機能を兼ね備えた新たな“海の拠点”をつくろうと当時の田辺市長肝いりの事業として動き出し、市長は「ここを訪れるすべての人が学びや驚きを通してつながり世界中から人の集まる清水、そんな場所にしていきたい」と意気込んだ。

計画では5階建ての施設に全国でも有数の規模となる大型水槽を設置しサメや駿河湾に生息する海洋生物を展示し、開業は2026年4月を予定していた。
ところが、清水港のすぐ近くとなる建設予定地は5年ほど前から更地のまま今も手付かずの状態となっている。
2つの要因がネックに
では、一体なぜ進展が見られないのか?
その要因は大きく分けて2つ。
1つ目が展示内容をめぐる対立だ。

当初は東海大学が研究面で全面的な協力を予定していたが、アミューズメント要素を押し出したい運営側との間で関係が悪化。
また、目玉となるはずの大型水槽について市が規模を縮小する意向を示していることも相まって調整が難航している。
そして、もう1つ。
関係者の頭を悩ませているのが昨今の物価高騰による建設費の増加だ。

6月20日の会見で静岡市の難波喬司 市長は「当初の予定で(建設費が)94億円が現時点で1.5倍以上の額になるとSPC(運営側)から示された」とした上で「(コストダウンに向け)仕様を見直した時に入場料収入がどうなるかまで検討しなければいけないので、かなりの検討時間が必要になる」と話した。
相乗効果に期待と市長は話すが…
着工・開業時期ともに依然として見通せない状況に、市民からは「スピード感がないので(建設費の)上振れが大きくなると思う。本当に必要なら早めにやるべき」「(上振れが)50億って聞くとそこまでかけて作る必要あるのかなと思う」「ビジネス・事業自体が市民に効果的で、地域にとって大事なものであればその資金調達をするのが行政の役割」といった声が聞かれる。

こうした中で浮上した民間による水族館の建設計画。
候補地となっている場所は海洋・地球総合ミュージアムの建設予定地のすぐ隣だ。

このため難波市長は「相乗効果に期待したい」と口にする一方、レップジャパンの白輪剛史 社長は「市からは『市の施設より早く作ってほしい』という要望があった。そう考えると3年以内には開業したい」とした上で「(なぜ市が早くつくってほしいのかは)わからない。これはなぜかわからない、本当に」と困惑した表情を浮かべる。
厳しい財政状況の中でそもそもミュージアムは本当に必要なのか?

必要なのであれば、求められている役割は何なのか?
構想から8年が経つ中で先行きはまったく見通すことが出来ない状況にある。
(テレビ静岡)