争点は、聖徳太子が描かれた旧1万円札を被告が「偽札だと認識していたかどうか」。
熊本地裁で開かれた裁判員裁判で、初の無罪判決です。
おととし、仲間と共謀しベトナムから日本に偽の旧1万円札を輸入し、両替などをしたとして、偽造通貨輸入などの罪に問われていた元技能実習生の男性に、熊本地裁は17日、無罪判決を言い渡しました。
無罪判決を受けたのは、ベトナム国籍の元技能実習生、チャン ヴァン ビインさんです。
判決などによりますと、チャンさんはおととし6月から8月にかけて仲間と共謀し、3回にわたってベトナムから日本に偽の旧1万円札合わせて176枚を輸入。
その紙幣を熊本市や長洲町にある金融機関で両替したなどとして、偽造通貨輸入などの罪に問われていました。
チャンさんは、今月行われた初公判で「偽物の紙幣だと知らなかった」と起訴内容を否認し、弁護人も男性の無罪を主張していました。
17日の判決で熊本地裁の中田幹人裁判長は、検察官の調書について「公正さを欠き
事実認定の根拠とすることは許容できない」と指摘。
その上で「チャンさんが旧1万円札が偽造されたものであると認識していたことについて、決定的な事情がなく、チャンさんの『偽造を疑っていなかった』という供述を排斥できず、故意があったと認められない」として無罪を言い渡しました。
弁護人は、無罪判決について「ホッとした」とコメントし、約1年11カ月拘留されていたチャンさんは、うれしそうな表情を浮かべ、「ありがとうございます」と述べたということです。
熊本地検は「判決内容を確認し適切に対応したい」とし、また熊本県警は「判決内容の詳細が分かっていないため、コメントは差し控える」としています。