歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが7月、長崎市のハピネスアリーナでの特別公演に出演する。初の長崎市、そして初のアリーナでの公演となる。事前に長崎を訪れた愛之助さんが、見どころと長崎への思いを語ってくれた。
一人5役!蜘蛛の表情を見逃すな!
片岡愛之助さん:アリーナでやらせていただくのは本当に初めてで、長崎から始まる。後々アリーナツアーをやったり、いろんなアリーナで上演できるようになれば嬉しい。「始まりの公演」になるかもしれない。長崎発信で日本全国につながっていくことができれば嬉しい。

歌舞伎の道を進んで40年以上の片岡愛之助さんが「始まりの公演」と位置付けるのが、7月26、27日の2日間開催される「長崎スタジアムシティ歌舞伎舞踊特別公演」だ。自身初のアリーナ公演となる。演目の一つ「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」は、古くから伝わる源頼光の土蜘蛛退治の物語をもとにした作品だ。愛之助さんは頼光を襲う蜘蛛の精をはじめ、蜘蛛が化けた恋人や太鼓持ちなど、一人で5役を早替わりで演じる。

片岡愛之助さん:今回は一人で5役する。早替わりというか、踊り分けというか、舞台の上で替わったりもする。そういう意味では本当に蜘蛛が化けて、いかに頼光に近づこうとして、やっつけようとする。いろんな手段を使うが、蜘蛛が化けているので時々蜘蛛の表情になって、戻る時がある。目つきがぎょっと睨むわけだが、“お、いけない、いけない”とまた元に戻る。バレちゃいけないという風なところが何箇所もあるので、そこをやっぱり見逃さないで観ていただきたい。
5役には女方もある。一度の公演で愛之助さんのいろんな役を観られるのは贅沢な公演だ。
アリーナ初挑戦 「ここから全国に広げていきたい」
会場はすり鉢状の客席配置が特徴の「ハピネスアリーナ」だ。愛之助さんにとってアリーナでの公演は初挑戦となる。「長崎ならではの見せ場を作りたい」と意気込んでいる。

--みどころは?
片岡愛之助さん:アリーナでどんな雰囲気になるのかは、初日を迎えてお客様が入り、私たちが芝居をして初めて分かることだと思う。初日の瞬間しか分からない空気があり、本当にドキドキしながら待っている。長崎のために長崎オリジナルとなっているので、普段とは違った衣裳で長崎バージョンを用意したり、特別な場所から登場したり、長崎でしか観られないものを作った。歌舞伎は古典芸能と思われがちだが、今も新しいことに挑戦し続けることが、歴史をつなぐ上で重要だと思っている。

--女方の所作や表現について
片岡愛之助さん:女方は膝を閉じて歩き、腰を落として歩くことが基本。これができなければ女方は勤まらない。衣裳も重く、体幹が必要だ。ゆっくりと美しく動くことが求められる。どこを切り取っても絵になるように作られている。これが歌舞伎の良さであり、日本の伝統芸能の良さである。アリーナで観るには最適かもしれないと思う。
アリーナ公演は「長崎がスタート」と位置付けている愛之助さん。「世の中、いわゆる日本列島につないでいきたい」と、壮大なストーリーにしたいと意気込んでいる。
長崎の「くんち」と歌舞伎の関わり
長崎は日本舞踊とゆかりが深い街だ。

諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」では毎年「本踊(ほんおどり)」が奉納され、演出に歌舞伎の要素が取り入れられている。くんちの映像を愛之助さんに見てもらった。

片岡愛之助さん:すごい。大勢で踊っていて素晴らしい。こういう和の文化に慣れ親しんでいる街で歌舞伎を上演できるのはとても嬉しい。歌詞に注目して耳を傾ければ、内容が分かりやすい。長崎の歴史も後押しできるのではないかと思う。
歌舞伎は各地で上演されることがあるが、愛之助さんはその土地の空気感は大切だと語る。
片岡愛之助さん:私は何度かこの作品に携わってきたが、その度に周囲の人やパターンが異なり、さまざまな変化がある。今回は長崎のためのオリジナルということで、衣裳を変えるなど、ここでしか観られないものを作った。歌舞伎は各地で上演されることがあるが、その土地の空気や現場でしかできないものがあり、そこもぜひ楽しんでほしい。
歌舞伎の道を進んで40年以上、俳優としてさらに輝きを増す片岡愛之助の舞台が、この夏長崎で花開く。

片岡愛之助さん:歌舞伎を初めて観る方にも、普段から観ている方にも楽しんでいただける作品であり、長崎ならではの特別バージョン。ぜひ多くの方に参加していただき、一緒に舞台を作り上げてほしい。役者が出てきたら拍手、見えを切ったら拍手、そして大向う。是非参加して、この2つの演目を皆さんで作り上げましょう。

「長崎スタジアムシティ歌舞伎舞踊特別公演」は7月26、27日の2日間で、1日2回公演となっている。
(テレビ長崎)