高額の賞金を稼ぐプロも登場し、子どもがなりたい職業の上位に入るなど、オンラインゲームの「eスポーツ」が人気だ。市場が拡大傾向にある中、鹿児島・鹿屋市に「eスポーツ」を学べる教室がオープン。ゲームで遊ぶだけじゃない、「次世代の習い事」として注目されている。
大型ショッピングセンターに「eスポーツ スクール」オープン
大隅半島のほぼ中央部に位置する人口10万人ほどの鹿屋市。市内の大型ショッピングセンターに2025年4月オープンしたのが「GG SPACE(ジージ―スペース)」。パソコンの販売や修理に対応している店だが、ここで「次世代の習い事」を教えているという。
エスカレーターのすぐ隣にある店舗。ひときわ目を引くのが、「eスポーツ スクール生募集中」の黄色いのぼりだ。店内の一室に入ると、パソコンが置かれた机とゲーミングチェアが背中合わせの状態でずらりと並び、マイク付きのヘッドセットを着けた子どもたちで、ほぼ埋まっていた。

子どもたちは、パソコン画面をじっと見ながら、左手でキーボードを、右手でマウスをカチカチカチと操作している。中には、小さな手でマウスを懸命に動かす、幼い子どもの姿もあった。
eスポーツを通じてパソコンを学ぶ 習い事のひとつ
子どもたちが夢中になってやっているのは、「eスポーツ」と呼ばれるオンラインゲームだ。
GG SPACEイオンかのや店の猪又優希店長が「eスポーツはエレクトロニック・スポーツの略。ゲームを使った対戦を野球やサッカーのように競技として競い合うもの」と教えてくれた。そして、「そのeスポーツを通じて、パソコンの基本知識や操作を学んでもらうスクールになっています」と語った。
少年団などでサッカーや野球に取り組むように、今の子どもたちにとって、パソコンを使ったゲームも習い事のひとつなのだ。猪又店長は「みんなパソコンを始めたてなので『いっぱいやって覚えていってね』」と伝えているという。

コミュニケーション能力などゲーム以外にも通じる力を育てる
6月上旬から本格稼働したこの教室では、スタートを待ちわびていた子どもたちから申し込みが相次ぎ、小学生から高校生まで幅広い年代の子どもたちが通っている。ある男子児童は「絶対、通いたいと思った」と、思いがかなってうれしそうだ。
この教室で教材として使用しているゲームは団体戦がメインで、子どもたちはマイクで会話しながら、協力してゲームの中の課題を解決していく。猪又店長は「チームでやったらコミュニケーション能力も上がる。周りを見ながら、先のことを考えながら行動することが大事なので、ゲーム以外にも通じるものがある」と団体戦を取り入れる理由を語る。レッスンに来る希望をかなえた男子児童も「やってみて、コミュニケーションをとれたり友達ができるのでいい」と、メリットを感じているようだ。

ゲームだけではない パソコンで絵を描く指導も
子どもたちが取り組むのはゲームだけではない。中には、パソコンで絵を描く子どもの姿も。タブレット画面にタッチペンで絵を描いていた女子生徒は、「友達が『絵も教えてくれる』と言っていて、私は絵を描くのが好きだったから」と、教室に通い始めた理由を教えてくれた。
どんなレッスンを受けているのか見せてもらったところ、タブレットの画面左側に、女子高校生風の制服姿の女性を描いた絵があり、それを見ながら右画面にデッサンしているのだろう、細かくペンを動かして丁寧に描写していた。

多額の賞金を稼ぐプロも誕生 注目のeスポーツ
ゲームを通常のスポーツのように競技として捉え、「eスポーツ」と呼ぶようになったのは2000年頃から。国内の市場規模は200億円に迫る勢いで、eスポーツファンも近く1000万人を越えると予測されている。
さらに世界中でさまざまな大会が開催され、多額の賞金を稼ぐ「プロ」も誕生している。子どもの将来なりたい職業ランキングでも上位に入るなど、eスポーツは注目されている。
「優勝したら1億円とか、多いので3億円の競技もある」と話す猪又さん自身、プロチームに所属し、ゲームで賞金を稼いでいた一人だ。

「新潟県出身で、2月に引っ越してきました」と、今は鹿屋で子どもたちとふれあい、これまでとは違う形での「ゲーム漬け」の日々を送っている。
ただの遊びでは終わらない 習い事としてのeスポーツ
もはや、ただの遊びでは終わらないゲーム。プロスポーツとして、そして習い事として、大隅でも広がりをみせている。
それにしても、ゲームのし過ぎで怒られた大人世代には、「自分も子どものころに習いたかった」と、ちょっぴりうらやましい光景かもしれない。
(鹿児島テレビ)