随意契約による政府備蓄米の販売が始まって1カ月。全国のスーパーでのコメ販売価格は、平均価格が6週連続で下がり、6月末には5kg3600円台に。備蓄米の効果が表れたとの見方もある一方で、鹿児島県内には7月になって備蓄米が届いたという店もある。鹿児島市のコメ店を取材すると、間もなく入荷する超早場米の時期を前に、抱える悩みが見えてきた。

政府備蓄米の申請から到着までに1カ月以上が経過

鹿児島市下荒田にある、二之宮米穀店。6月2日に政府備蓄米10tを申し込んだが、届いたのは申請から1カ月以上が経った、7月7日だったという。

届いた政府備蓄米は、コメ袋に「秋田米」と書かれていた。2021年産だという。店主の二之宮行宣さんは、入荷したばかりの備蓄米を精米する作業をしていたが、「入荷まで、そんなにかかるんだな、と。6月20日くらいには売ろうと考えていたので。それが意外と入荷が遅かった」と、困惑を隠せない。

店主の二之宮行宣さん
店主の二之宮行宣さん
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「不安、不安。どうしようかと。これで失敗したら、店がなくなってしまう。10t捨てなきゃいけないかなと思ったり」と、到着早々、頭を抱えてしまったそうだ。

5キロ2000円(税込)で販売 備蓄米の古米臭も

ただ、二之宮米穀店では、備蓄米の入荷前から予約を受け付けていて、すでに約1t分の予約が入っているという。備蓄米が届いた時、「秋田から来たんだなっていう感激と、開けてみたら、古米臭」を感じたという二之宮さんだが、「精米したときに、これだったらいけるんじゃないかと思った」と語る。

備蓄米は、店内にある精米機で精米したあと販売用の透明の袋に詰めて、10日から5キロ2000円(税込)で販売している。購入制限は設けていない。

店頭の備蓄米には、わかりやすく「政府備蓄米」と書かれ、「備蓄米のおいしい食べ方」を案内したラベルも貼ってあった。

5キロ2000円(税込)で販売している
5キロ2000円(税込)で販売している

足りなかったはずの2024年産米が余ってしまうかも

契約時の条件で、備蓄米10tは8月末までに販売しなければならない。加えて、到着が想定より遅くなったため、7月下旬から入荷する超早場米の販売開始の時期と重なる恐れもあり、二之宮さんは気をもんでいる。

しかし、今一番悩んでいるのは、2024年産の銘柄米の販売だ。「備蓄米・銘柄米・早期米の3つをどうにか動かさないといけないですけど、備蓄米は別のものだと思っています。早期米と銘柄米の兼ね合いをどうするか」と、実情を語る。「どうしても新米が出てくると、2024年産の銘柄米は詰まってしまう。2024年産というのは、新米が出た時点で古米になってしまう。2024年産の価格のまま在庫として持っているので不良在庫になる。持っていれば持っているだけ」と。

2024年産は、新米が出た時点で古米になってしまう
2024年産は、新米が出た時点で古米になってしまう

市場で足りなかったはずの2024年産米が、余ってしまうかもしれない状況だと言うのだ。

「消費者米価は下げるが、生産者の収入を上げていかないと」

また、二之宮さんは「売値と生産者米価と消費者米価のつり合い。ここに税金でも投入して生産者の収入を上げてあげないと。でも消費者米価は下げなければならない。それを解決するには税金の投入しかないと思う」と税金投入が必要との見解を示した。その上で「2025年、2026年あたりでこの業界は相当変わるんじゃないか。考え方を変えていかないと商売ができなくなってしまう気がしますよね。」と、今後、コメを取り巻く環境が変化する可能性を指摘した。

日本人の大切な主食を巡る問題だけに、今後のコメ騒動の行く末にも、引き続き注目しておく必要がありそうだ。

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鹿児島テレビ
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