20日に投開票される参院選に向けて、有権者の思いを伝える「暮らしの現場から」です。
物価の高騰が生活の根幹を揺るがす今、経済的に苦しむシングルマザーや困窮世帯の支援を行う団体は今回の参院選でどのような一票を託すのでしょうか。川平記者、永田記者のリポートです。

永田裕介記者:
経済的に苦しい世帯に食料を提供するフードパントリーと呼ばれる施設です、お米やレトルト食品が並んでいます

那覇市松山にあるこの施設を運営するのは、NPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄です。

行政や福祉施設などと連携し、支援を必要としている人に企業や個人から寄付された食品を分配しています。

利用者:
米を使わないようにするので(子どもが)好きな物を作ってあげられない。(食料支援は)助かっています、ありがとうございます

2007年からフードバンク活動に携わる奥平智子代表は、あらゆる物の値段が上がるなか、経済的に苦しむ利用者の切実な声を把握しようと、アンケートを実施。

特にコメの価格高騰については回答した人のうち、およそ9割が買い控えや麺類への切り替えなどを余儀なくされたと答えるなど、日々の食卓への深刻な影響が浮き彫りとなりました。

セカンドハーベスト沖縄 奥平智子代表理事:
お子さんに対しておかわりをさせてあげられない辛い気持ち、いくつか意見がありました。お母さんとして非常に苦しい、なかなかお子さんに満足に食べさせてあげられない現状が見えました

回答した人の多くが未就学児から高校生の子どもを抱える世帯で、公的支援を受けづらいひとり親家庭の実情も目の当たりにしました。

セカンドハーベスト沖縄 奥平智子代表理事:
働く時間帯に本来は支援を受けられるメニューがあったとしても、休むと給料が減ってしまうので、なかなかそこの支援に自分が足を向けるというか、必要なんだけれども行くことができない矛盾、ここに非常に苦しんでるっていう方もいらっしゃいました

物価高への対策については、「定期的なお米券や食料クーポンの配布」のほか、「現金給付」や「食品への消費税をなくしてほしい」「非課税世帯に限らず低所得者層や子どもが多い世帯への支援」など困っている人に確実に届く包括的な支援を求める声が相次ぎました。

コロナ禍に陥った時よりも食料支援を求める人が増え続ける一方で、支援の現場も厳しい現実に直面しています。

企業からの寄付は食品ロスの改善やコスト削減の影響で、例年の3分の2にとどまっているほか、物価高で倉庫の設備や光熱費などの維持費が上昇し、フードバンク自体の運営が圧迫されています。

しかし、県や市町村からの継続的な支援はありません。

セカンドハーベスト沖縄 奥平智子代表理事:
フードバンクの活動がどのような意味をなしていて、必要な方々にとって生活にとってどのような影響を及んでるかまで想像をしていただいて支援策を考えてもらえたら

七夕の7日、奥平さんは初めて母子に支援をした時のことを振り返り、政治に託す思いを短冊に記しました。

セカンドハーベスト沖縄 奥平智子代表理事:
あれからもう18年が経ったんですけどやっぱり必要な方に支援が届いていない、この現状は大きく変わっていないと思っています。必要な支援が本当に必要な方に届く社会になってほしいと思っています

那覇市に住むAさんは、4歳の長男と生後1か月の長女と3人で暮らす、27歳のシングルマザーです。

Aさん:
2人目が大変でずっと抱っこなんですよ、夜中寝られない時、発狂してヤバいヤバいって

幼い頃から施設や里親を転々とし、成人後も不安定な生活を送ってきました。

しかし、出産をきっかけに我が子を守り、育てたいという強い気持ちが芽生え、負の連鎖を断ち切ろうと懸命に前を向いています。

Aさん:
自分だけだったらご飯食べなくてもいいけど、子供には食べさせないといけない。自分が進みたい道に、お金がないからという理由で行かせられないのはしたくない。それがちょっと怖いです

子どもの将来のために貯金をしたいと考えていますが、度重なる物価の高騰は経済的な自立を阻む大きな壁として立ちはだかっています。

Aさん:
払うお金は増えていくばかりで本当に何もできないなというのが現状です。1人だったら(エアコンを)消すことができるけど、子どもがいるから熱中症になったら大変じゃないですか。だから高くても・・・はぁってなりますね。落ち込みます

現在、母子サポートの支援施設で子育て中の女性たちへの弁当作りを担当しているAさん。

子どもと一緒に食べられるように、野菜を食べやすく加工したり、刺激の少ない味付けをするなど、自らの経験を活かし、サポートスタッフとしての一歩を踏み出しています。

Aさん:
そういう支援があるのはありがたいと思うし、自分もいつかは恩返しがしたいなって気持ちがすごくあります

支援者や友人と話しをするなかで、自分だけでなく様々な境遇に置かれる多くのシングルマザーが金銭的に追い詰められていると感じています。

今回の参院選では、物価高への対策について候補者が論戦を展開するなか、Aさんが政治に望むのは、母親が「安心して暮らせる環境」です。

Aさん:
世の中で生きやすいような環境。特に子どもがいる家庭に対してはもうちょっと支援の幅を広げて欲しいと思っています

Q:政治家に望むことは?

Aさん:
すぐ行動に移してくれる人じゃないと。口だけだったらなんとでも言えるんですけど、本当にすぐ行動で表してくれる政治家に一票を入れたいです

物価高が生活の根幹を揺るがす今、一票を託された政治がどこまで暮らしに寄り添えるのか。きょうも助けを求める人々の声に政治がどう応えるのかが問われています。

沖縄テレビ
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