2026年度からの5年間、国はこれまでを上回る事業規模で福島の復興を進める計画だが、2045年までの除染土の県外最終処分、2051年までの廃炉と長い道のりが続く。参院議員の任期は6年、復興の長い道のりを背負うその人物に、被災地が願うこととは。

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復興のため土地を明け渡す

東日本大震災から14年、福島県内の2%あまりは、未だ立ち入りが制限される「帰還困難区域」となっている。
松永秀篤(まつながひであつ)さんの自宅は、福島県大熊町の帰還困難区域の中。除染で出た土などを運び入れる「中間貯蔵施設」を国が整備するにあたり、先祖代々伝わる土地を売り渡した。

かつて自宅があった場所を眺める松永さん
かつて自宅があった場所を眺める松永さん

かつて自宅があった場所を訪れた松永さん「孫たちを入れていたお風呂が残っているし、そこの囲炉裏で魚とか鶏を焼いて皆で食べてというのを、ここ来ると思い出す。昔の事を思い出して、さみしくなってしまう事はありますね」とつぶやく。

進まぬ廃炉・除染土の行方

震災と原発事故から14年が過ぎたものの、東京電力・福島第一原子力発電所に残る燃料デブリ880トンのうち、取り出されたのは10億分の1程度。「2051年までの廃炉」に疑問を投げかける専門家もいる。

燃料デブリ(画像提供:JAEA)
燃料デブリ(画像提供:JAEA)

また「2045年までに県外で最終処分」の約束のもと、中間貯蔵施設に「除染土」が運び込まれて10年。2025年7月中にも、官邸の前庭で比較的放射能濃度の低い土を「再生利用」することが初めて決まったが、東京ドーム11個分の土のその他の再生利用先や放射能濃度の高い土の最終処分先の議論に大きな進展は見られない。

福島県にある中間貯蔵施設
福島県にある中間貯蔵施設

松永さんは「中に入ってみると、まだフレコンパックがあるし。果たして、本当にあと20年でなくなるのかな、どこに行くんだろうなって。だんだん先が短くなるにつれ、心配の方が大きくなってくる」と語る。

被災地の願い

参院議員の任期は6年。2026年度から5年間の「第3期復興・創生期間」で復興の歩みを進めるだけでなく、その先の福島を支える仕組みを作れるかどうかも求められている。

松永秀篤さん
松永秀篤さん

「まだ廃炉も完全でない。そこに除染土壌がまだ山積みになっている。若い人はやっぱりそういうのあったらば、大熊町に帰ってくるのを躊躇するのではないかと思って。目先で税とかそういうのがいっぱい出てくるけど、それだけでなくて中間貯蔵施設の行末というか、そういうのもはっきりと打ちだして貰えればなって思っています」と松永さんは語った。

候補者が考える課題

東日本大震災・原発事故から15年目を歩み出している福島だが、復興が着実に進んでいる一方、廃炉や除染土など数十年先を見すえなければならない課題もある。

復興をめぐる各候補の主張
復興をめぐる各候補の主張

福島選挙区の5人の候補者に「2025年度で終了する『第2期復興・創生期間』のあとの一番の課題」を聞いた。
大山さんは「いまだに続く風評被害に対し正しい情報発信」をすべきと訴える。越智さんは「あえて人を住ませることは反対」と移住支援を主張。森さんは「心のケアや第一次産業が元気に戻るための支援」に重点を置くべきとする。石原さんは今だ県の2%あまりで立ち入りが制限されている「帰還困難区域の解消」を掲げる。遠藤さんは震災後の「人口減少」を課題とし、「縦割りを解消して子育て支援に力を」としている。

物価高や国際情勢といった全国的な視点のほかにも、福島ならではの目線で次の6年を託す人物を選ぶ選挙でもある。投票日は7月20日、期日前投票も活用して、皆さんの思いを貴重な一票に託してほしい。
(福島テレビ)

福島テレビ
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