多くの観客を魅了する海上花火大会のシーズン。その一方で、毎年のように繰り返されるのが“夜の海”での船舶事故だ。慣れない夜間航行の先には、大きな危険が潜んでいる。
全国最多…花火大会関連の船舶事故
広島の夏の風物詩、海上で打ち上げられる花火大会。
夜空に大輪の花が咲く一方で、広島海上保安部が最も警戒を強めるのは花火が終わった“その後”である。

「帰りがけにカキいかだに乗りあげたり、ワイヤーに絡んでしまう事故が例年起きています」
そう語るのは、広島海上保安部の清水裕士警備救難課長。第六管区内における花火大会関連の船舶事故は、この20年間で全国最多。由々しき状況が続いている。
夜の海は想像以上に“見えない”
事故の危険を実感するため、テレビ新広島の鈴木崇義記者が巡視艇に同乗し、夜の広島湾に出てみた。
「現在、時速40キロほどで走っています。プレジャーボートではこれが標準的な速度ですが、このまま衝突すれば…大事故になるのは目に見えています」

広島県内の海には県の特産であるカキ養殖のいかだが約1万台も設置され、広島港周辺にも多く点在する。しかも、夜間はその全貌が見えにくい。
やがて日が沈み、周囲が漆黒に包まれると視界は一気に狭くなった。
カキいかだには、その存在を知らせるライトが点灯しているが…

「目を凝らせば小さな光は見えます。でも、そのまわりにいくつものカキいかだがあるなんて、想像力を働かせなければ分からない」
さらに市街地の明かりと重なることで、いかだの灯りは溶け込み、見分けがつかないことも。「ライトが街明かりにかき消され、識別できないままカキいかだに乗りあげてしまう」と清水課長は指摘する。
約350隻が一斉に動く危険
7月26日には、広島港1万トンバースで「広島みなと夢花火大会」が予定されている。2024年は350隻以上の船が集まり、まさに“ごった返す”状態となった。

「花火が終わると皆さん一斉に帰るため、大混雑の中で操船した場合、カキいかだを見落とすリスクはあると思います」
飲酒運転はもってのほかだ。広島海上保安部では当日、監視体制を強化し、見張りの配置や注意喚起を徹底するという。

広島県は全国で最もプレジャーボートの登録隻数が多い。普段は昼間にしか運転しない利用者が夜間の航行に不慣れなまま海上花火大会を見に行き、事故につながるケースが後を絶たない。しかも、瀬戸内海はそもそも狭い海域に多くの船が行き交うため、事故の多いエリアだ。
夜の海は、思っている以上に“見えない”。楽しい一夜のはずが悲しい事故へと変わってしまわぬよう、一人ひとりの注意が必要だ。
(テレビ新広島)