『今年7月、日本で大災害が起こる』。いま根拠のない噂が、若者を中心にSNSなどで広がっている。

噂のきっかけは日本の漫画

「大災害が起こる。7月5日に。TikTokとかで、めっちゃ流れてきて、みんな信用してるから自分も気をのまれて信じてしまっている」と話す大学生。

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また「みんな言っている。やばいみたいな。私はちょっと怖いです。学校とかでも『もうすぐ死ぬやん』みたいな感じの会話しかしてないです。最近は…」と話す中学生など、福岡の街で噂は若い世代には広く知れ渡っているようだ。

噂のきっかけは、4年前に出版された日本の漫画だ。「災難が起こるのは2025年7月」などの記述があったことから、その後、SNSや動画サイトなどを通じて地震や津波が発生すると噂が出回った。

噂は海外にも飛び火し、香港では、有名な風水師が、地震が起きるとのデマを拡散したことで、日本への旅行を控える事態に発展。『7月大災害』という根拠のない噂は福岡経済に暗い影を落としている。

香港を拠点とする航空会社『香港航空』は、噂の影響ではないとした上で、旅行需要が減っているとの理由から2025年4月に週13便だった福岡~香港線を7月から週7便に減便した。

香港から福岡に来た旅行客は「いまの科学技術では地震の日付を確定できません。だから信じていない」と話す旅行客など状況を冷静に受け止めているようだ。

香港からの訪日客は大幅減

一方、訪日旅行客、いわゆるインバウンドの動きは噂の影響が顕著に現れていてホテル・旅行業界からは悲鳴が上がっている。

JR博多駅筑紫口前にある老舗の『都ホテル』。立地の良さや近年、改装したことなどからインバウンドにも人気で、なかでも香港の宿泊客が多いのが特徴だ。その香港からの予約客状況が、6月実績として約3割減となっていて大きく減っているのだ。

セールス&マーケティング部課長の赤峰聖さんは「1日も早く事態が収まることを願っている。常に顧客の満足度アップに努め安心して滞在できるホテル作りを目指すしかない」と話す。

減少しているのは香港からの訪日客だけではない。学生交流や自治体視察などを企画する福岡市内の旅行会社『日中友好旅行者』では、中国本土から多いときは月10組ほどを受け入れている。しかし、状況は大きく変わってしまった。

社長の高尾淑江さんは「大きな災害があるから怖いので日本に行かないようにしようという噂で、6月終わりから7月はじめは、仕事がない状況」と肩を落とす。

7月半ばには、中国本土から2組の予約が入っていたが「本当に大丈夫ですかと」何度も聞かれたという。「いまのところは全然、大丈夫です」と答えるしかなかったと話す。

「科学的知見から間違いなくデマ」

地元経済にとって懸念材料ともなっている「大災害」の噂。鹿児島・トカラ列島の悪石島などで頻発する比較的大きな地震なども噂に拍車をかけているようだ。

西日本新聞のメディア戦略局長の池田郷さんは「デマは世の中が不安になったなかで広がる。また好奇心旺盛な若者が、そういう情報に関心を寄せることは理解できるが、実体経済に影響が出ていることを考えれば、それがデマであることをメディアなどが繰り返し伝えないといけない。噂やデマは、真実よりも拡散するスピードが早い」と警鐘を鳴らす。

気象庁は「日時を指定した地震の予知は科学的知見から間違いなくデマ」として注意を呼びかけている。

(テレビ西日本)

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