全国的に「なり手不足」の問題に直面しているなか、若者が中心となって活気を取り戻している消防団がある。

2024年3月、神奈川県海老名市の消防団に壁に向かって勢いよく放水訓練をする若い女性団員がいた。消防団員だった地元の先輩からの誘いで入団した井上葵乃さん(21)だ。
井上葵乃さん:
誰かのためになることをしている人たちがいるっていうのを知っていたので、自分も少しやってみたいなって思いがあって入りました。

消防団は、常勤の消防職員が勤務する消防署とは異なり、火災や大規模災害発生時に自宅や職場から現場へ駆けつけ、その地域での経験を活かした消火活動・救助活動を行う、非常勤特別職の地方公務員である。
消防団は消火活動だけではなく、大規模災害時の救助救難や津波警報発令時の水門閉鎖など地域の防火・防災の重要な役割を担っている。
地域防災において大きな役割を果たしている消防団だが、いま全国で「なり手不足」という大きな問題に直面している。
2019年にはおよそ83万人だったのに対し、2023年にはおよそ76万人へと減少(ともに4月1日時点)。
そして、特に深刻なのは「若い世代」で「29歳以下の団員」はおよそ10万6千人から7万7千人と4年間で3万人近く減っている。
団員の減少には人口の減少や少子高齢化といった社会的理由を始め本業の多忙や私生活の優先などの理由も多くを占めている。
井上さんが入団した海老名市第5分団でも23年当時は、定員15名のところ現在11名しか在籍していなかった。
第5分団では7年前の台風19号では隣の相模川が越水しかけ避難誘導も行い、地域住民の安全確保に貢献するなど、激甚化する災害にこれまで以上に消防団の必要性は増している。
第5分団ではなんとか団員を増やそうと奔走まずは「カミゴウ消防団」と銘打って分団独自での体験イベントやこども一日分団長などイベントを仕掛けたり、LINEアカウントを作り情報発信を行ったりしている。
そのイベントでは費用を払って処分してもらう廃棄ホースを切断・プリントしてコースターとしてプレゼントしたり、造園業の団員が切り株でコースターを作ったりもしている。
また、近隣の湘央生命科学技術専門学校救急救命学科と連携して、学生消防団員を募集、井上さんもその一人だ。
加藤達也副団長(2024年当時):
消防団そもそも認知度が低いので消防団のことを知ってもらおうと様々な活動を行っています。今まで消防団に関わったことない方が入られたりだとか少しずつ認知度が高まっています。
第5分団では、カミゴウ消防団の取組が功を奏し、カミゴウ消防団の魅力を感じて入団する団員が急増。11人だった団員も定員の15人を超え、令和7年7月現在17名までに増加している。 公式LINEや各種SNSのフォロワー数も全国の消防団の中でも上位を占めるなど、全国的にも知名度が高まっている。

カミゴウ消防団では、団員が主役となった団員カードの作成やオリジナルグッズショップ開設など、全国的にも例がない取り組みを今でも続け、全国の消防団が抱える課題に果敢に挑んでいる。
井上さんは消防団の経験を活かし、2024年4月から海老名市消防本部で救急救命士として、消防団と連携し活動を広げている。
(取材・執筆=フジテレビ社会部 大塚隆広)