中原キャスターはあの日、球磨川が氾濫し、甚大な被害が出た球磨村の渡地区を専門家と一緒に訪ねました。
5年がたった今も復旧工事が続く被災地の現状と、豪雨災害の教訓について取材しました。
【中原 理菜 キャスター】
「穏やかでゆったりとした流れ。まさに清流球磨川といった様子です。この球磨川が5年前、氾濫しました。その教訓をどう生かすのか考えます」
河川工学が専門で『流域治水』の第一人者、熊本県立大学の島谷 幸宏 特別教授は5年前の豪雨について次のように分析します。
【熊本県立大学 島谷 幸宏 特別教授】
「線状降水帯がすっぽり球磨川を覆い、(流域で)同時に雨が降って合流した。それぞれの川や水路が昔に比べると、コンクリートで固められていて、流れが速くなり一気に合流した」
島谷 特別教授と共に訪れた球磨村渡の茶屋集落は、あの日、球磨川の濁流が10メートル以上ある堤防を越え、まるで『津波』のように次々と住宅をのみ込みました。
現在、川幅を広げる国の引堤事業が進められていて、集落があった場所には新たな堤防が造られていました。
また、近くでは流失した相良橋の復旧工事も…。
相良橋を含む被災した10の橋梁のうち、二つは既に復旧が完了。
三つが今年度中に開通する見込みです。
(沖鶴橋、西瀬橋はすでに開通。坂本橋、松本橋、天狗橋は今年度中の見込み。他5つ橋のスケジュールは未定)
島谷 特別教授は、5年前の豪雨をきっかけに『流域治水』の研究と普及に取り組んでいます。
【熊本県立大学 島谷 幸宏 特別教授】
「地面を覆うことは洪水を増やすことにつながっている。田んぼに水をためたり森林で保水したり、流域全体で洪水に耐える地域づくりが必要」
【中原キャスター】
「ハード面だけでなく地域住民も一緒に?」
【島谷 特別教授】
「流域治水というのは流域という水を集める全体で様々な対策をしていこうということなのでいろいろな人の協力なしにはできない」
「一人一人が〈治水〉を自分のこととして捉えアクションを起こし、洪水を防ぐのが〈流域治水〉の特徴だ」と話します。
球磨川流域で現在もダムの建設や遊水地の整備など洪水を防ぐための様々な治水対策の工事が進められていますが、その工事の完了にはまだ時間を要します。
【熊本県立大学 島谷 幸宏 特別教授】
「今、同じような雨が降れば一部では同じような被害がある可能性もある。特に(川辺川の流水型)ダムができるまでは状況はそれほど大きく変わっていないので気を付けてほしい」
5年前と同じ規模の雨が降れば再び被災する可能性があることをしっかりと心にとめて備えておく必要がありそうです。