長野県県石油商業組合をめぐるガソリン価格の事前調整疑惑で、組合が設置した第三者委員会は「組合の組織ぐるみで価格調整が行われていた」などとする報告書を公表した。当初、組合が「事実はなかった」と県に報告していたことについては「虚偽だった」と指摘した。報告書の公表を受け、組合は記者会見を開き、「報告内容を重く深刻に受け止める」としたが、「組織ぐるみ」とされた点については、改めて否定した。
「独禁法に抵触するカルテル」認定
6月30日午後2時、県石油商業組合が設置した第三者委員会が記者会見を開き、ガソリン価格の事前調整疑惑についての報告書を公表した。
第三者委員会の田下佳代委員長(弁護士)は「一部の地区の事業者間において、独占禁止法に抵触する不当な取引制限行為、カルテルが行われていたものと認められる」と述べた。

価格調整の連絡が認められたのは、県内8つの支部のうち、北信、佐久、上伊那の3つの支部。
価格の上げ幅や下げ幅、切り替える日付を指定した上で、支部長から副支部長、地区長、各事業者の順に連絡網を使って通知されていたとしている。
北信支部では、連絡に従わない組合員に対し、価格を合わせるよう支部長などによる要請活動も行われていて、連絡には「相当な同調圧力が働いていた」とした。

また、組合本部も北信支部から連絡を受けて、「価格調整が行われていることを十分に認識し、黙認していた」とし、価格調整は「組合の組織ぐるみで行われていたと評価せざるを得ない」とした。
県への報告は「事実に反する」
一部報道により疑惑が浮上したのは2025年2月。
当時、県石油商業組合の平林一修専務理事は(2025年2月)「青天のへきれきです。(組合として関与は?)150%、200%ないですね」と述べ、疑惑への関与を完全否定していた。

2月28日、長野県に対し中間報告をした際も、県石油商業組合の高見沢秀茂理事長は「事実確認を13日に支部長等に行った。8支部長から『事実は存在しない』と」報告。これに対し、阿部知事は「これだけの報告、これで県民が納得すると思いますか」と怒りをあらわにした。

報告書では、取材に対して疑惑を否定していたことを「虚偽を述べていた」とし、県への報告についても「事実に反する」とした。
第三者委「消費者を犠牲にして…」
価格調整が行われていた背景については、小規模なガソリンスタンドが多く、値下げ競争となった場合に経営が難しくなるため、一定の価格水準を維持して利益を確保できるようにする目的があったとしている。

その上で、価格調整の連絡は、競争を実質的に排除し、消費者や市場に大きな悪影響を与えるもので、独占禁止法に抵触する「不当な取引制限行為・カルテル」と認められるとした。
第三者委員会の田下佳代委員長(弁護士)は「消費者を犠牲にして価格調整を行うことは許されない」と強調し、「社会から期待される役割を果たすためにも、コンプライアンスの向上、ガバナンス強化のための努力を」と指摘した。
組合は「組織ぐるみ」を否定
報告書の公表を受け、県石油商業組合は同日、記者会見を開いた。県石油商業組合の高見沢秀茂理事長は「本件に関する個々の理解不足、組合としてのコンプライアンスに対する指導力の欠如を深く反省しております。消費者の皆さまをはじめ多くの関係者に対し心よりおわび申し上げる次第です。本当に申し訳ありませんでした」と陳謝し、第三者委員会の報告を重く受け止めるとした。

ただ「組織ぐるみだった」とする報告については否定。「あくまで支部が行っていたもので組合本部は価格の事前調整に関与していない」とあらためて述べた。
「知らなかった」「支部が指示した」
県石油商業組合の平林一修専務理事は、「カルテル行為は日常的にやっていることを私たちは承知していませんでした。晴天のへきれきという言葉を使ったが、それはそういうことを言っているわけで、うそをついたのではなく本当に知らなかった。(第三者委報告を)精査していないので何とも言えないが若干のそごが細かいところであるのではないか」と関与を否定した。

高見沢秀茂理事長は「来週2円下げる、上げるという問題は仕切り(卸価格)の問題に対してであり販売価格は個店が決めるもの。それを第三者委員会は同一化していることはこれからよく精査していく。北信支部の支部長がいくらにしろと指示したことは完全にアウト。それを確認できなかったことに対するおわび」と主張した。
会見は約30分で打ち切り
あくまで「組織ぐるみ」を否定する組合。記者たちから質問が相次いだが、会見は約30分ほどで打ち切られた。
記者が「この問題に関して十分な説明がなされるって言ってるんだから、30分で終わりにするなんてあり得ない」と指摘すると、高見沢理事長は「この後、予定があるんですよ」と話した。

第三者委員会の報告とのズレ。丁寧な説明が求められる。
この問題については公正取引委員会もカルテルの疑いがあるとして調査している。
【解説】報告書のポイント
「価格調整の連絡は、北信・佐久・上伊那の3つに支部で行われていた」
連絡については「強制力はないが、相当の同調圧力があった」
組合は「価格調整が行われていたことを認識し、黙認していた」
第三者委員会は、これらを踏まえて、「独占禁止法に抵触するカルテルがなされたと認められる」と結論付けた。

なお、一連の問題はカルテル疑惑があるとして、公正取引委員会も調べている。
(長野放送)