スマートフォンやパソコンで金をかける違法ギャンブル・オンラインカジノ。

今週、フジテレビの社員がオンラインカジノで賭博した疑いで逮捕、さらにアナウンサーも書類送検されるなど、摘発が相次いでいる。

一度はまると抜け出せず、巨額の借金をするなど生活が破綻する人も。

【オンラインカジノに依存していた男性】「最初の1回手つけちゃうと、もうそっから止まらなくなっちゃうっていうのがあって、負け金額借金とか含めると1200万円ぐらい」

一体、なぜここまでのめりこんでしまうのだろうか。

イメージ:カジノ
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■深刻化するオンラインカジノ依存 実態を取材

身近に忍び寄る誘惑。その裏には、日本人をターゲットにした巧妙な仕掛けが…

オンラインカジノ運営側の内情を知る人:高所得者、いい企業に勤めている、金に余裕がある人をターゲットにしている日本人がやったら依存するやろというのは、頭にあった。オンラインカジノは完ぺきな商材だった。

深刻化するオンラインカジノ依存。その実態を独自取材した。

オンラインカジノ依存 実態を取材
オンラインカジノ依存 実態を取材

■依存症だった人「お金がなくなるまでやる、廃人みたいな感じ」

取材班が向かったのは、奈良県内にあるギャンブル依存症の人などを支援する施設。

ここ数年、ある問題に関する相談が増えていた。

ワンネス財団 森田宏ディレクター:早朝もやったりしていた?
オンラインカジノ依存症だった男性:ずっとやってました。とにかく携帯を触れるタイミングがあったら、すぐLINEとかYouTubeとかTikTok開くような感じで、カジノ開いてやるんで。

この男性が数年前のめりこんだのは、スマートフォンでプレーするオンラインカジノ。負けが続き、1000万円を超える借金を背負ったのです。

オンラインカジノ依存症だった男性:(1日)20時間カジノやってるみたいな時もありました。やめれない本当に。お金がなくなるまでやっちゃう。時間の制限がないのは怖い。オンラインカジノメインみたいな生活になっていた。廃人みたいな感じ。

オンラインカジノ依存症だった男性「やめれない本当」
オンラインカジノ依存症だった男性「やめれない本当」

■ルーレットやポーカー全て日本語対応 「合法」うたうも日本国内からアクセスして賭博は「違法」

男性がはまってしまったというオンラインカジノ、一体どんなものなのか。

記者リポート:こちらオンラインカジノのサイトなんですけれども、本当に多種多様のゲームがあるのがわかります。

ルーレットやポーカーなど様々なゲームが並んでいて、ゲームの内容ややり方は、全て日本語に対応。

「カジノライセンスを取得し、合法」だとして安全性を強調しているが、日本国内からアクセスして賭博を行う事は違法。

しかし、今、20代~30代の若年層を中心に広がりを見せ、国内で推定される利用者はおよそ336万人に上る。

なぜ、多くのひとがのめり込んでしまうのだろうか?

オンラインカジノのサイト
オンラインカジノのサイト

■仕事しながら隙あらば 睡眠は1時間…きっかけは「面白半分」

取材班が訪ねたのは、過去にオンラインカジノに依存していた30代の会社員こうすけさん。

きっかけは6年前、SNSでオンラインカジノの広告を見たことでした。

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):面白半分で始めたことがきっかけ。登録が簡単で、当時は名前と身分証くらい。早かったら1日で、すぐできる。

始めてすぐ熱中したのはブラックジャックやバカラ。1回で数万円から数十万円の利益が出たこともありました。

24時間いつでも利用でき、10秒もあれば勝敗がわかる手軽さ。その“魅力”はこうすけさんの生活を徐々にむしばんでいきます。

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):仕事しながらスマホそばに置いて、隙あらばやってた。朝6時、7時まで寝ずにやって、1時間くらい寝て仕事行って、みたいな。

その結果…

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):軒並み街金(消費者金融)ばかりです。負け金額、借金とか含めると1200万円ぐらいに。

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代)
過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代)

■自己破産、家族に打ち明けるも妻の説得は聞き入れられず

負けがかさみ、借金は瞬く間に1200万円に。カジノをやる理由は、「興味本位」から、いつしか返済資金をつくることに変わっていった。

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):母親名義で400万か500万かを借金して、全部ギャンブルに溶かしました。借金を返すことで頭がいっぱい。借金を返すためにギャンブルをするように。

ついに自己破産し、家族に打ち明けたこうすけさん。しかし、その後も高揚感が忘れられず、おととしごろまでギャンブルを続けていました。

その間、こうすけさんの妻は何度もやめるよう説得しましたが、聞き入れることはなかったという。

こうすけさんの妻:最初は怒り狂ってたのですが、最後の方は悲しみもあり、あきれるのもあり、何でこんなに言っているのに、伝わらないんだろう。

(Q.妻を裏切っているという気持ちは?)
過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):ありました、ありました。

(Q.でも、やめられなかった理湯は?)
過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):最初の1回手を付けると、そこから止まらなくなる。そこからは罪悪感しかない。

借金は瞬く間に1200万円に
借金は瞬く間に1200万円に

■オンラインカジノ運営側の内情を知る人物に取材 「日本人ははまりやすい」?

やめたくてもやめられない負のスパイラル。取材を進めると、利用者の心理につけ込んだカジノ運営側の、巧妙な狙いが見えてた。

オンラインカジノ運営側の内情を知る人物:日本人ってパチンコ・タバコだったり、他の国より依存するような人種だと思う。ギャンブルで24時間できて、オンラインでできて、オンラインカジノは完璧な商材。

関西テレビが接触したのは、オンラインカジノ運営の内情を知る人物。

運営側は、違法性は伝えず、簡単にお金が得られる楽しさだけを伝えるといいます。

オンラインカジノ運営側の内情を知る人物:日本向けのプロモーション。芸能人・インフルエンサーを使ったプロモーションは打とうとしていました。

これはSNSに掲載されたオンラインカジノの広告。著名人がルーレットで遊び、簡単に数十万円の利益を得ている様子が。

オンラインカジノ運営側の内情を知る人物:“簡単に稼げる”というのが、一番はまる原因。『私も勝てるんじゃないか』と…“お客を流す導線”を作っているというのは聞いた。

さらに、利用者がやりはじめるとこんな手口も…

オンラインカジノ運営側の内情を知る人物:期間限定のボーナスがあって、『1万円いれたら5万円あげる』と。それで勝ちを覚える。勝ったらまた勝つと思うからお金を出して、負けても取り返したいからお金を出す。(最初は)勝てるようになってるけど結局、長く続けると負けるようになっています。

「日本人ははまりやすい」とオンラインカジノ運営側の内情を知る人物
「日本人ははまりやすい」とオンラインカジノ運営側の内情を知る人物

■一度ハマるとなかなか抜け出せない

オンラインカジノに依存していた30代のこうすけさんは、「もうやっていない」と言うが…

過去にオンラインカジノ依存 こうすけさん(30代):ずっと不安です。ちょっとでも手を出したら、本当に止まらなくなるのは分かった。

一度ハマるとなかなか抜け出せない、オンラインカジノの闇。

「手を出さない」、「出させない」取り組みが求められる。

「ずっと不安です」
「ずっと不安です」

■オンラインカジノでお金使いきって借金する人 6割が「始めて1カ月以内」に

オンラインカジノにのめり込む怖さを示すデータがある。

「オンラインカジノで自分のお金を使い切って、借金を始めるまでの期間がどれぐらいか」という民間団体が調査したものだ。

『始めて1週間以内』に借金を作ってしまう人が3割、『1カ月以内』を合わせると6割の人が借金してしまうことが示されている。

またデータをトータルで見ると、だいたい半年で8割が借金し、借金せずに済んでいる人は7~8パーセントと、9割以上が結果的に借金してしまうということだ。

規制という点では、ことし9月に施行された、「改正ギャンブル依存症対策基本法」では、インターネットなどで広告や宣伝、サイトへの誘導行為を禁止したが、罰則はない。

「オンラインカジノで金を使い切って 借金を始めるまでの期間がどれぐらいか」
「オンラインカジノで金を使い切って 借金を始めるまでの期間がどれぐらいか」

■京大・藤井教授「心理学で『ハマる』ように作られている」「始めないことが大事」

この規制の問題について、京都大学大学院の藤井聡教授は、「オンラインカジノは心理学などを用いて、人がのめりこむように作られている」と指摘した。

【京都大学大学院 藤井聡教授】「規制は難しんですよね。海外のサイトだったりとかしますから。しかも『通信の秘密』という制約もありますからなかなか厳しい規制が難しいんですよね。ですから一番重要なのは、我々一人一人の中にしっかりバリアを作ることです。

(オンラインカジノは)プログラマーが完全なサイコロジー=心理学を完璧にマスターして、どんな普通の人でも『ハマる』ように作られてるんですよね。

僕も似たような研究、意思決定の研究をやっているのでわかるんですけど、どんな普通の人でも、ちゃんと『ハメていく』ような手口っていうのはあるんです。

実際、借金しないで済んでいる人は7~8パーセントしかいないって話があったじゃないですか。ですからこれは本当は始めないことが大事です」

ギャンブル依存症や薬物依存症については無料の電話相談もあります。自分自身や周りの人の異変を感じたら、すぐに相談をしてみてください。

【ワンネス財団】TEL:0120-111-35

(関西テレビ「newsランナー」2025年6月27日放送)

藤井教授
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関西テレビ
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