2025年7月3日に公示される参議院選挙では「政治とカネ」の問題が焦点の1つとなっている。自民党派閥の裏金問題で、不記載が明らかになった議員たちが改選を迎えるが、逆風の中、どのような思いで選挙戦に臨むのだろうか。

■“事実上の選挙戦”スタート 『裏金問題』はどうなった?

通常国会が閉会し、参議院選挙の事実上の選挙戦がスタートした。

投開票日まで1カ月を切り、有権者が考える選挙のポイントを聞いてみると、コメをはじめとする物価高など、多くの人が暮らしに直結する問題をあげた。

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70代女性A:
やっぱり物価高とか、備蓄米のこと。

40代女性A:
子供の政策を中心にしている人に。

70代男性B:
給付金2万円。

40代女性B:
減税。消費税を含めた。

旧安倍派からほかの派閥にも飛び火した、自民党の「裏金問題」を忘れてはいけないという声も聞かれた。

60代女性A:
忘れちゃってるんじゃないですか。

60代女性B:
うやむやになって、そのまま尻すぼみになっちゃっている気がします。

70代女性:
あれ許せない。全部公表しようとしてないところがよくない。

「裏金問題」では、愛知3区が地盤の池田佳隆前衆院議員が逮捕・起訴されるなど、東海地方も大揺れとなった。

繰り返される「政治とカネ」の問題に有権者の怒りは強く、2024年10月の衆院選では、自民・公明が30年ぶりに少数与党に転落した。

同じように、パーティー券をめぐる裏金問題が発覚していた都議会自民党も“歴史的大敗”を喫した。

■関与不定も『不出馬』を表明…『裏金事件』の真相は

2025年の参院選では、東海3県でも政治資金の不記載があった参院議員が改選を迎える。中でもその動向に注目が集まったのが、岐阜選挙区選出の大野泰正議員だ。

大野議員は時効にかからなかった5年間で、パーティー券の売り上げから5154万円のキックバックを受け、収支報告書に記載しなかったとして、秘書とともに在宅起訴された。

大野泰正議員(2024年1月の会見):
私が収支報告書に関与したことはございません。裁判においてしっかりと、自らの主張をしてまいりたいと思います。

大野議員は自民党を離党し、無所属となったが、最近まで各地の行事に積極的に参加してきた。

6月21日も、与野党の最終盤の攻防の舞台となった財政金融委員会に、委員として出席していたが、出馬に対しては口を閉ざした。

記者:
参院選、結局どうするんですか?

大野泰正議員:
・・・。

問いかけに応じなかった大野議員だが、その夜、ブログで「参議院議員選挙には立候補しないことを表明させていただきます」と不出馬の意向を明かした。

大野議員はその後も、会見の求めに応じていない。これから始まる裁判で、“裏金事件”の真相は明らかにされるのだろうか。

■キックバックは「知らなかった」主張も…選挙への影響は『ある』

愛知選挙区では、酒井庸行議員が再選を目指す。

キックバックの不記載額は58万円で、2025年1月の参議院政治倫理審査会で、初めて公の場で説明した。

酒井庸行議員:
私自身ノルマがあることは知っていましたが、還付については把握しておらず、担当者に任せきりにしており、それ以上の確認をすることはしていませんでした。

自身はキックバックの存在を知らず、「事務所の担当者が翌年以降のノルマの不足分に充てていた」と説明した。

酒井庸行議員:
本当に信じられないということかも分かりませんが、私たち「下の者」からすれば、本当に何も知らされてないし、何もないんですよ。やはり「上の者」が責任を持つということがないといけないと思います。責任を取れないということ自体、本当に情けないし、悔しいです。

酒井議員は実態解明のため、「上の者」が説明をするべきだと意見を述べた。

その後、国会では旧安倍派の幹部だった世耕弘成氏、下村博文氏らの参考人招致が実現したが、会計責任者の説明と食い違うなど、キックバックの開始や再開の経緯は、まだ明らかになっていない。

酒井議員は6月14日、名古屋の繁華街・栄で街頭演説を行ったが、マイクを握ったおよそ1時間で、“裏金”に触れることはなかった。

記者:
不記載の問題もありましたが、説明は十分だと思っている?

酒井庸行議員:
そこは政倫審で終わりました。きちんと結論も出ましたから、これまで十分にやってきたつもりです。

記者:
政倫審で、ひとつの区切りだったと。

酒井庸行議員:
そうですよね。

「国民の理解は得られているのか」と聞くと…

酒井庸行議員:
それは得られていないでしょ、なかなか。簡単にはね。でも国会議員たち、私も何もないですけど、シロですけど、それがずっと尾を引くじゃない。(選挙への影響は)あるでしょ、あると思いますよ。だから色んなことが出てきたりするけど、私としては自分自身として一つの区切りをつけて、次のステップに進んでいるつもりです。

■『政倫審で一区切り』 説明は果たしたのか

三重県選出の吉川有美議員は6月15日、四日市市で参院選に向けた事務所開きを行った。

吉川議員は、政治資金収支報告書に240万円の不記載が見つかり、2024年1月、地元の報道機関にコメントを発表した。

吉川有美議員のコメント:
一連の報道が始まるまで、還付金等の仕組みや同会(安倍派)からの支払いが行われていたことに関し、私自身は知りませんでした。私的な目的に使用したり、使途不明であるなどの、いわゆる「裏金」的な支出は一切ございません。

その後、記者会見などで取材に応じる機会はなく、1年以上が経った2025年3月の政倫審では「パーティー券のノルマの存在自体を知らなかった」と釈明した。

吉川有美議員:
昨年1月末に三重県県政記者クラブに文書による説明を行ったほか、地元を中心に有権者への説明を繰り返し重ねてきました。これからもあらゆる機会をとらえて、真摯に説明を続けていきたいと思っています。(支持者への説明は)事あるごとに行ってきたので、数百回はご説明させていただいていると認識している。

地元の支援者にも話を聞いた。

吉川ゆうみ鈴鹿後援会の加田潔会長:
そこまで詳しい説明はなかったと思う。みんなもう分かっていることだったので。改めてそんな言い訳されたって、別に言ってもらって変わるものでもないし。もうちょっと地元に帰ってきて地元の声を聞いてもらえれば。忙しいから東京から離れられないところがある。

6月15日の事務所開きの後、吉川議員は報道陣のカメラの前で決意を語った。

吉川有美議員:
地域のため、国のために、何よりも皆様のために、私はどんなに大変でも勝ち抜いて、仕事を続けなければいけないと思っている。

しかし、裏金問題についての質問には、その後の予定があるとして、応じなかった。

東海テレビは改めて取材を申し込んだが、事務所は「都合がつかない」とした上で、「政倫審での説明で一区切り」という吉川議員本人の意向があると説明した。

参院選は7月3日に公示され、20日に投開票される。候補者たちは選挙戦で「政治とカネ」への疑念の声にどう答えるのか。

2025年6月25日放送

(東海テレビ)

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