2022年の6月29日、大分県別府市の交差点で、赤信号で停車中のバイク2台に軽自動車が追突し、バイクに乗っていた19歳の男性1人が死亡した事件。

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約3年の月日がたちましたが、軽自動車を運転していた八田與一容疑者は、現在も逃亡を続けています。

今でも花束が絶えない事故現場に訪れたのは、亡くなったAさんの友人。将来、会社経営者になることを2人で夢見ていたといいます。

亡くなったAさんの友人:
この3年間の間で、私も会社がいろいろ大変だったりとかあったので、そういう話をしたかったなっていうのは、すごい今、思いましたね。
会いたいなというか…、この3年間でこういうことをやったよっていう話をシェアしたいですね彼に。

6月2日、警察はこれまでの道交法違反容疑に加えて、新たに殺人と殺人未遂の容疑を追加して逮捕状を取得したと発表。
今も深い悲しみの中にいる、親族…そして、目の前で親友を失った男性。「サン!シャイン」は、少しずつ動きだした事件の“今”を追いました。

「最後に逃げろと言葉をかけられず…」親友語る事故の瞬間

事故当時、亡くなったAさんと共に八田容疑者が運転する軽自動車に追突され、けがをしたYさん。Aさんとは、同じ大学に通い、何でも話し合える“親友”でした。

 今でも鮮明に残る事故の記憶…そして、思い出されるのは事故の瞬間の“親友の瞳”です。

亡くなったAさんの親友Yさん:
バイクのミラーに光がすごい急に迫ってくるのを感じて、あれ?と思って。そしたら、すごいアクセルを全開で踏むような音が後ろからすごいして。「これ、やばい」と思ってそのまま彼の方を見て、彼に「やばい、逃げろ」みたいな感じのことを自分は言いたかったんですけど…それを言おうとして、彼と目が合って…その直後に、すぐ追突されたっていう感じです。

大学入学後、よく二人で行動を共にしていたというAさんとYさん。

亡くなったAさんの親友Yさん:
お互いの学校での事情とか、お互いのプライベートのこととか、恋愛とか、ちょっとくだらない話とかもしつつ、お互い将来こういうことしてみたいなとか、そういったのをよく話した記憶があります。
由布院の近くのなんか、すごくきれいな坂になっていて、すごい景色を一望できるようなところで、そういうところで、2人で行ったり…。

親友を目の前で失ってから3年。今も、あの瞬間を忘れることはできません。

亡くなったAさんの親友Yさん:
彼に「逃げろ」って言葉をかけられずに目が合ったのが、最後に自分が覚えている瞬間というか…。ふと事件の瞬間とか思い出すときは…、最後に目が合った瞬間っていうのは、やっぱり忘れられないですね。
やっぱり自分だけ生き残っちゃって、同じようにぶつかられたはずなのに、ここまで…亡くなるっていうかたちと…けが。この差は何なの?って。
本当に生き残ってしまって、申し訳ないっていう気持ちも、やっぱりありました。

事件から3年 容疑に時効のない「殺人罪」が追加

AさんとYさんに追突した八田容疑者は、その後車を捨ててはだしで逃走。その足取りは、現場から約2km離れた海沿いを最後に途絶えています。

警察は、八田容疑者を重要指名手配犯に指定し、その行方を追っていますが、未だ、逮捕には至っていません。

そんな中、事件に新たな動きが…。
亡くなったAさんの遺族を支援する「別府願う会」が、5月16日に別所市役所で公訴時効が7年のひき逃げから、時効のない「殺人罪」への切り替えを求める署名を実施。
活動のかいもあってか、6月2日、八田容疑者に殺人と殺人未遂の容疑が追加。この日以降、大分県警には情報提供が急増し、その数は1万件を超えたといいます。

この活動を主導した、願う会の事務局長は、亡くなったAさんの母親とは保育園のママ友。
幼い頃からAさんを、自分の子供と同じようにかわいがってきたといいます。

願う会 事務局長:
(事故後、母親から)病院から電話があって亡くなったと。いや、そんなはずないでしょって。それが嘘であってほしいっていうところ思いながら、明朝会ったんですけど。もう何も声をかけられず。ただ肩をなでるぐらいしかできなかった。本当に声がかけられなかったくらい…。
(母親は)犯人(八田容疑者)の顔を毎日見ながら、故人に毎日、毎日、手を合わせていますけど、そういうことを早く、少しでも負担を軽くしてあげたいなと思っています。

殺人罪の追加を受け、遺族もコメントを発表しました。

「この度、私たちの長年の願いがようやく形になろうとしています。事件から3年。大きな岩が動き出し、殺人罪での捜査にこぎ着けるまで、これほど時間を要するとは思いませんでした。」

「八田與一が逮捕されるまで、私たちの戦いは終わりません。」

母の悲痛な思い「時間を巻き戻したい」

事件から、3年。愛する息子を失ったAさんの母親が、今も容疑者逮捕に至らないことへの不安や焦り…そしてやりきれない思いを語ってくれました。

亡くなったAさんの母親:
どうやったら捕まるのか。どうやったら捕まえてもらえるのか。
どうやったら多くの人に事件や八田與一を知ってもらえるか。どうやったらどうやったら…。
どの年代の子ども、二十歳前後の青年、一緒に見た風景、好きだったアーティスト、好きだった映画や音楽…何を見ても思い出します。
そのたびに目を背け、ため息を深呼吸に変えて別のことを考えます。本当に時間を巻き戻したい。

時効が迫る恐怖はなくなったけれど、今度は捜査期限がないことに不安がつのります。
激しい憤り、これが正直な気持ちです。八田によって奪われたこれから先の幸せな時間。息子の夢、やりたかったであろうことを残された家族で叶えるための大切な時間を、これ以上八田を捜す時間に本当は費やしたくありません。

次の犠牲者を出さないため、次の犯罪を食い止めるために、八田が犯した全ての罪を公表して欲しいのです。危険人物であると言うことを世のみんなに知らせてください。
お願いだから早く捕まえてください。
(「サン!シャイン」 6月27日放送)