事情を抱えた親が育てられない子どもを匿名で託す「赤ちゃんポスト」。
大阪府泉佐野市が設置を目指していて、25日、議会でその準備のための予算案が可決された。
25日、泉佐野市議会で可決された今年度の補正予算案。
「赤ちゃんポスト」の設置に向けた調査費用800万円などが含まれる。

■「赤ちゃんポスト」は熊本市の慈恵病院が初めて設置し、190人以上が預けられた
事情を抱えた親が育てられない子どもを匿名で託す「赤ちゃんポスト」は、熊本市の慈恵病院が2007年に全国で初めて設置し、これまでに190人以上の子どもが預けられた。
ことしからは東京の病院でも運用が始まったが、生まれたばかりの赤ちゃんが遺棄される事件は後を絶たない。
こども家庭庁が発表した調査結果によると、2022年度に遺棄されて死亡した新生児は13人。
母親が予期せぬ妊娠などで誰にも相談できず、遺棄に至ったケースが多いということだ。

■泉佐野市は行政主導型の「赤ちゃんポスト」と「内密出産」受け入れを目指す
赤ちゃんの命を守るために泉佐野市はことし、全国で初めて行政が主導する赤ちゃんポストの設置と、妊婦が病院などの関係者だけに身元を明かして出産する「内密出産」の受け入れを目指すと明らかにした。
泉佐野市 千代松大耕市長:望まない妊娠であったりとか、だれにも相談できずに結果として悲惨な事件につながってしまうというケースもありますので、受け入れ態勢といいますか、そういうのも含めて必要ではないのかなと。預かった赤ちゃんをずっと病院で見ていくということにはなりませんので、そういった出口(養子縁組など)の部分も行政として、各方面と協力しながら進めていけるのかなと考えたところです。

■泉佐野市民の声は
泉佐野市民は…
20代:ほかの自治体でやっていないのでこうやって手を挙げるのはありなんじゃないかなと思っていました。
30代:土地も結構広いし、場所ができるということは悪いことではないとは思うんですけど、資金的なこととか、人材とかちゃんと確保できているのかなと。
50代:恵まれない赤ちゃんや望まれていない赤ちゃんが一人でも多く助かるのはいいことだと思っています。(泉佐野は)外国人も多いのでどうするのかとか、保険は健康保険を使ってとかもひっくるめて課題が多すぎるとは思う。もっと先々の課題を見つけるために少しずつ始めればいいかなと思う。
50代:親の責任感がなくなるんじゃないかなという気持ちもあるんですけども、反面、(命を)助けるという意味もあるのかなという気はしています。
泉佐野市は今後、産科や小児科を備えたりんくう総合医療センターと連携して取り組みを進める方針で、慈恵病院などへ視察を行って来年度中の運用開始を目指すということだ。

■加藤デスク「妊婦の匿名性を保証できるかが重要」
赤ちゃんポストの設置を取材した関西テレビの加藤さゆり報道デスクは、行政が責任をもって受け入れる覚悟があるのか、特に妊婦の匿名性を保証できるかが重要だと話した。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:18年前に赤ちゃんポストを設置した熊本市の慈恵病院の蓮田先生に、ご意見を伺いました。行政主導というのはこれまでにない形なので、非常にありがたいけれども課題は山積みだと。特に妊婦の匿名性を保証できるかが重要だというお話をされていました。
預けに来られる方には本当に切羽詰った事情を抱えて子供を育てられないとか、生んだことがバレてしまうと親に責められて家庭に帰れないとか、そういった状況で駆け込んで来られる方が多いんですよ。身元は明かしませんと守ることが、本当に行政にできるか。
一方で行政は母子の健康を一番に考えますから身元を明かしてほしい、名前を教えてくださいと聞くわけですが、そういった事情を抱えた女性からすると、意思に反してしまうことになるので、それならもう一人で生みますとか、熊本に行きますとか、命を絶とうとする人すらいると。
そういう事情の中で、本当に行政が責任を持って受け入れる覚悟をもっているかっていうことを、蓮田先生はおっしゃっていました。

■「自治体を縛っている法律は変えなきゃダメ。これはもう国の仕事」と鈴木氏
ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:行政として自治体としてやっていこうとまず一歩踏み出した。これは評価していいと思うんですよね。だけど、行政主導っていうことは何が起きるかっていうと、行政は好き勝手にやっているわけじゃなく、すべて法律に従って法律の範囲内で進めていく、これが行政ですから。
そうなると生まれた子供をどうしていくのか、戸籍の問題から児童相談所みたいな所で育てていくとか、行政の範囲になってくるといろんな法律があって、できること、できないことが出てくるわけですよ。そういう意味では病院サイドがおっしゃっているように、自治体を縛っている法律は変えなきゃダメなんだよね。これはもう国の仕事になります。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:市の職員や病院のスタッフも、法律違反に問われることにもなってしまうわけなんですよ。だからそういう意味でも、どこまで行政が主導できるのかっていうところだと思いますね。
赤ちゃんポストは最後の砦とも言われているが、支援のあり方の議論はこれからも必要になってくる。
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月25日放送)
