東京・池袋のサンシャインシティで26日に起きた「ポケモンセンター」店員殺害事件を受け、ストーカー対策の課題が議論されている。略式起訴で釈放後に事件が起きた経緯を踏まえ、加害者へのGPS装着など対策強化の必要性が指摘されている。
略式起訴・罰金80万円釈放に「軽すぎる」
青井実キャスター:
東京・池袋の「サンシャインシティ」で起きた殺人事件。死亡した「ポケモンセンター」の店員春川萌衣さんと、広川大起容疑者は元交際関係でした。では、なぜ事件は防げなかったのか?このような事件を未然に防ぐためにはどんな対策が必要なのか?平松秀敏解説副委員長と見ていきます。

宮司愛海キャスター:
事件に至るまでの経緯を改めて見ていきます。2人は2025年7月に交際解消していましたが、2025年12月25日に春川さんが「元恋人につきまとわれている」と警察に相談をしていて、その日に広川容疑者がストーカー規制法違反で逮捕されました。
そして2026年に入り、1月29日には広川容疑者に対して接近禁止命令が出て、翌日の1月30日、略式起訴で罰金80万円を払い、釈放されました。そして3月26日、事件が起こりました。
青井キャスター:
こうした経緯の中で、結果として事件が起きている。「罰金80万円で釈放」というこの対応はどう見ればいいですか?
平松秀敏解説副委員長:
3つの容疑がかけられているにも関わらず略式起訴ですよね。検察というのは過去の判例や同じような事件の相場と考慮して、おそらく略式起訴にしたと思うんですけど、個人的な感想としては軽すぎる。ではなぜ略式起訴にしたか、日々ストーカー事案に向き合っている警察と検察の間では、危機意識という面ではちょっとズレがあるんですよ。というのはやはり、現場でストーカー事案をいつも扱っている警察は「これは命に関わるかもしれない」という思いが強いですから。そこが検察とちょっと違うんだと思います。
警察は9回対応も…強制力なき治療・監視の限界
青井キャスター:
そして警察の対応も見ていきたいと思います。

宮司キャスター:
警視庁は、春川さんに対して全部で9回対応していたということです。防犯カメラの設置、容疑者との接触がないか複数確認したほか、引っ越しやアルバイト先を変えることも指導したということです。ただ、仕事に関しては「ポケモンセンターで働くのが夢だった」と春川さんは話したということです。
さらに広川容疑者側に対しては、医療機関の受診を勧めたところ拒否されたほか、実家に戻った容疑者の保護者に対し「監護監視」を依頼したのですが、結果的に事件を食い止めることができませんでした。平松さん、警察側のこうした対応は十分だったと言えるでしょうか?
平松解説副委員長:
結果として亡くなっていますから十分だとは言えないんですけれども、でもこの対応を全部見てみると、警視庁としてはやれる範囲のやるべきことをしっかりやったと、そう評価してもいいと思うんですね。ここにあるように、やはり警視庁はバイト先を変えるように、仕事を変えるように指導している。ただやっぱり「ポケモンセンターで働くのが夢だった」という被害者が、その勤務先で亡くなるというのは本当に残念でならないと思います。
青井キャスター:
我々は、どうすれば未然に犯行を防げたのか考えなきゃいけないですね。

平松解説副委員長:
医療機関への受診依頼と監護監視。この2つが非常に気になるところなんですよね。ストーカー事案というのは内面に精神的な課題というのが潜んでいますから、今回警視庁は広川容疑者に対して精神科の医療機関を受けてはどうかと要請した。しかし本人に拒否された。そして横の監護監視。今回警視庁は釈放後、母親に対して広川容疑者の生活を監視・監督してほしいと要請している。ところが結局事件が起きてしまった。この受診依頼と監護監視はいずれにしても強制力がないので、やっぱり限界があるんだと思いますね。
青井キャスター:
強制力を持たせる議論はしていたんでしょうか。
平松解説副委員長:
例えばストーカー治療、受診依頼については「強制力を持たせてはどうだ」という議論はずっと続けられている。ところが憲法上の「内心の自由」だとか「身体の自由」によって、本人の同意なく治療を受けさせるのは重大な人権侵害ということで、強制力を持たせることができていない。ただ例えば、執行猶予の代わりに医療機関を受診させるだとか、そういう制度設計というのはできると思うんですよね。

宮司キャスター:
現行の制度では被害者側の防御は色々整備は進んでいると思うんですが、加害者側へのアプローチというのはもう少し強められたりはしないんでしょうか。
平松解説副委員長:
まさにその通りなんですね。日本のストーカー対策は「被害者を逃がす支援」…これに重きが置かれているんです。ただ「なぜ被害者が逃げなきゃいけないのか」という意見は根強いんですよね。だから被害者を逃すんじゃなくて、加害者を縛る。そういう支援にシフトするべきだと。そういう意見が本当に根強いです。
青井キャスター:
柳澤さんは、この事件を踏まえてどう思われますか?
SPキャスター・柳澤秀夫さん:
強制力の話が1つポイントかと思うんですけど、警察の中で直接対応している部署ではないところから「その対応の仕方が果たして本当に十分かどうか」ということを、同じ組織であってもいいし、第三者でもいいんですけどチェックして「これで本当にいいのかどうか」を客観的に評価できるような仕組みができないものかなという気がしますね。
韓国ではGPS導入で再犯率9分の1に
青井キャスター:
仕組みという意味で、海外ではストーカーなどの加害者に対して釈放後GPSをつけて監視をする国もありますね。

宮司キャスター:
韓国の例を見てみたいと思います。韓国では2024年から有罪判決が出る前の捜査段階であっても、再犯の恐れが高い加害者に対して検察が、足首にはめる電子足輪などのGPS装着を命じることが可能になりました。このGPSの装着によって当局が24時間体制で接近を監視していて、さらに自動通知システムで加害者が被害者の一定範囲内に侵入すると、被害者のスマートフォンに自動的に警告テキストが送信されるということです。

この対策を行ったことで、2025年の9月末時点で装着を義務付けられている人は約4600人だったんですけれども、性犯罪の統計データを見ると、電子足輪の導入によって再犯率が9分の1にまで減少したということです。柳澤さん、日本でもこういった議論をしなくてはいけないのでしょうか。
SPキャスター・柳澤秀夫さん:
明らかに効果はありますよね。日本でもGPSについてはことあるごとに議論は出てくるんですけど、なかなか一歩踏み込んで、本当にどうなのかというところまで議論が至っていないと思います。そこは真剣に議論すべき時期が来ているような気がしますけどね。
宮司キャスター:
何人の方が亡くなればいいんだろうというふうに思わざるを得ないですよね。
青井キャスター:
平松さん、そのあたり規制を強めていくとか、未然に防ぐために今すべきことはどういうふうに思いますか。
平松解説副委員長:
柳澤さんがおっしゃったように、日本でも今、保釈制度で被告の海外逃亡を防ぐためにGPSを活用するという制度ができたので、それをストーカー事件に活用するというのは十分できると思います。あともう一つ、日本のストーカー対策は実は現場の警察官の頑張りで成り立っているんですよね。ただそれは本当に限界がある。だから警察の役割を補完するシステム制度が必要。そのためのGPS監視だったり、あとはストーカー治療なのだと思います。今後は大胆な見直しが必要だと思います。
青井キャスター:
法律とか仕組みの話だけでなく人の命に関わる話だということを、我々は胸に留めなければいけないと思います。
(「イット!」3月27日放送より)
