作り手の高齢化や原材料の不足により2024年に「花笠不足」に直面した「山形花笠まつり」。6月20日、初めてベトナムで作られた「笠」が納品され、真新しい「ベトナムの花笠」が8月5日から始まるまつりの夜を彩ることになる。

1年がかりで“笠”の調達を実現
6月20日午前10時。山形市緑町にある民芸品店・尚美堂に一台のトラックが到着した。
積み荷は4月末にベトナムを出発した「笠」。

尚美堂は「山形花笠まつり」で使われる花笠の9割以上を扱っているが、2024年7月、作り手の高齢化などにより「花笠が1000枚も足りなくなる」という事態になった。

これまでは100%県内で作られてきたが、2025年、初めてベトナムに生産を依頼した。
船の出航スケジュールが約1カ月遅れ、さらに1カ月半の船旅を経て依頼していた1500枚がやっと山形に到着した。
尚美堂・逸見良昭社長は、「率直に本当にうれしい」と笑顔を見せていた。

県産に見劣りしない精巧な作り
花笠不足を受け、逸見社長は2024年の花笠まつりの直後、笠不足の解決策を市やJETRO(日本貿易振興機構)に相談し、日よけ用など年間約8万枚の笠をつくっているベトナム・ザイタイ村に生産を依頼することにした。

ベトナムから届いた笠を見た逸見社長は、「持った感じも県産のものとそん色ないし、一つひとつがきれい。ベトナムの笠の特徴は『しなり』。これが今までにない特徴で、笠回しに関しては非常に必要なもので、それに関しては本当に絶賛だった。骨がベトナムは丸、県産は縦。県産はしならない」と話してくれた。

「しなり」に加え、笠自体が少し軽くなり、踊り手が長時間踊っても疲れにくいそう。

赤いフチ・花をつけ“花笠”として息吹を吹き込む
予定より1カ月ほど遅れてベトナムから到着した笠。
2025年の花笠まつりに間に合わせるため、花・縁付け作業などが急ピッチで仕上げが進められている。

1つの笠を仕上げるのにかかる時間は約20分。
これまで県産の笠は赤いフチがついた状態で納品されていたが、ベトナムの笠にはフチがなく尚美堂で行う仕上げ作業の工程が少し増えた。

そのため新たに27人のボランティアも迎え、急ピッチで作業を進めていく予定。
そうしてベトナムと山形の合作で仕上げられた1500個の「ベトナムの花笠」が、8月5日から3日間続く「山形花笠まつり」の夜を彩る。

(さくらんぼテレビ)