熱中症対策には水分の補給が必須だが「飲んでも飲んでも喉が渇いている」などの症状がみられたら、もしかすると「ペットボトル症候群」かもしれない。誤った水分補給をすると意識障害が起こるおそれもあるというこの病気について、専門医に聞いた。

10代でも発症する可能性あり

福井県済生会病院の金原秀雄内科部長は「ペットボトル症候群」について「糖分やブドウ糖を多く含むスポーツドリンクや炭酸飲料水を飲むことにより、血糖が上がって、場合によっては意識障害を起こすような重篤ケースがみられることがある」と説明する。

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ペットボトル症候群は、正式には「ソフトドリンクケトーシス」といわれ「糖尿病」が急に発症する状態のこと。

メカニズムは、糖分を多く含んだ飲料を過剰にとることによって、血液中の糖分が上がり、喉が渇きやすくなるので、さらにまた飲んでしまうという悪循環に陥るというものだ。

また、血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きが低下し、体内で脂肪を分解してエネルギーをつくろうとし、このときにケトン体という物質が体の中で生成される。

このケトン体がたくさんたまると、胃のムカつきや吐き気、消化管の症状が出てくる。さらにたまると体のバランスが酸性に傾くことによって、意識障害が出てきて、まれに救急車で運ばれてくることもあるという。

「ペットボトル症候群」の兆候には、「体重が急激に減少した」、「涼しいところでもやたら喉が渇く」、「尿の量が多くなり夜中トイレに行く回数が多くなった」などがみられる。

30代から40代の肥満気味の男性に起こりやすいといわれているが、まれに若年層でも発症するケースもある。2023年夏、ペットボトル症候群で救急を受診したという10代の男性は(体重80kg台)、2~3リットルほどのソフトドリンクを数日間継続して飲んでいた。受診時は意識が朦朧(もうろう)とした状態だったという。

金原医師はこのケースについて「10代の後半の人で部活や運動をする機会があり、暑い中でソフトドリンクやスポーツドリンクをたくさん飲むようになって、胃のむかつきや吐き気の症状が強くなって救急を受診し、急激に糖尿病になった」と解説する。

熱中症と合わさり重篤化するおそれも

さらに金原医師は、これからの時期、熱中症とペットボトル症候群のWパンチの危険性を指摘する。

ペットボトル症候群は血液中の糖分が上がって尿がたくさん出て、どんどん脱水になってくるので、熱中症と合わさって重篤化するおそれがあり、これからの時期は特に注意が必要だという。

暑さで疲れが出やすい季節に「ぐっと一気に甘い飲み物を飲みたい」という気持ちになることもあるかもしれない。しかし、清涼飲料水には、500mlのスポーツドリンクで30グラム、炭酸飲料で50グラムほどの糖分が含まれている。世界保健機関WHOによると、平均的な成人で、1日の砂糖の量は25グラム程度におさめることが望ましいとされている。

「糖分を過剰にとらないこと」

ではペットボトル症候群にならないためにはどうしたらいいのか。

金原医師は「やはり家族に糖尿病の人がいたり、普段から甘いものを頻繁に口にしたりする人は注意が必要。ただ、糖尿病の自覚がない人、いわゆる“かくれ糖尿病”の人も多くいて、糖分をとる量に気を使っていないこともあるので、定期的な健康診断で自分の健康状態を知ることが重要」と警鐘を鳴らす。

もうひとつは、水分補給の仕方。普段の生活での水分補給は、お茶や水など糖分が含まれないものが望ましい。ただ、汗を大量にかいたり激しい運動をしたりした後で、糖分の補充が必要なときは、スポーツドリンクなどを適切に飲むことは重要。

肝心なのは、糖分を過剰にとらないこと。正しい水分補給でこの暑い夏を健康に乗り切ろう。  

(福井テレビ)

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