新潟市内の弁当店が先日、SNSに「注文があった弁当の当日キャンセル」の被害を投稿し、波紋を呼んでいる。その数なんと200個。損失は約20万円に上ったという。店主の女性が取材に応じ、当時を詳しく振り返るとともに悲痛な胸の内を明かした。
「大量注文ご連絡なし」
6月2日、Xに投稿された1枚の写真。
「大量注文ご連絡なし。当日キャンセルがありました。電話してもつながらず。最後は着信拒否されてしまいました」
店に積み上げられた大量の弁当とともに投稿されたこの一文には、多くのコメントが寄せられ、同情や応援の声が集まっている。
投稿したのは、燕亜紗美さんだ。
6年前に新潟市中央区で宅配専門の弁当店『あっちゃん弁当』をオープンし、週に2回は新潟市中央卸売市場でも販売している。
一日200個の注文…信じた結果の無断キャンセル
事の発端は5月22日ごろ。
まず電話をかけてきたのは若い女性で、「会合で使いたい」と弁当100個を注文した。女性は「お酒を飲みながら食べたい。参加者は40代〜50代くらい。別の場所で食べておいしかったので注文したい」と語っていたという。
その内容を受け、燕さんはシジミなど40代~50代にも好まれるような食材を取り入れるなど、注文に合わせて内容を工夫。すると、その2日後には、中年とみられる男性から「希望のものを作ってもらえると聞いた」と、同じ日に100個の注文が入ったという。

同日受け取りの注文が200個も重なる事態に、燕さんは「何かある日なのかなと思った。お客を疑う商売ではないので」と信頼を前提に注文を受けた。
5時間かけて仕込んだ弁当が…連絡途絶
受け取り日の5月29日。燕さんは1人で約5時間かけ、200個の弁当を作り上げた。
しかし、最初の女性は指定してきた市内のコンビニに現れず、連絡もつながらない。何度も電話をかけるうち、ついには着信拒否になった。さらに、もう1件の男性とも連絡が取れなくなり、結果的に両方とも無断キャンセルとなった。
「無断キャンセルがすごく増えてきているという話は皆さんと話していたが、まさか自分のところがやられるとは思っていなかった」
材料費10万円…総額20万円の損失に
今回の被害は小さくない。
弁当の材料費だけで約10万円。さらに宅配のためのガソリン代や容器代を含めると、損失は約20万円に上る。ナフサ不足の影響で容器価格も高騰する中での出来事に燕さんは「食材も買って、ガソリンも使って、それで廃棄だったので正直かなりきつい」と漏らす。
用意した200個の弁当のうち、130個は知り合いに配ることができたが、残る70個は廃棄せざるを得なかった。
「フードロスを減らしたい」思いの中で
燕さんが宅配専門の弁当店を始めたのは、できるだけフードロスを減らし、客の要望に応えたいという思いからだった。注文に合わせて内容を変え、必要な分だけ作る。そのスタイルだからこそ、今回のような事態は大きな痛手となる。
燕さんは「人対人でやっていきたいと思っているときに、こういうことをされてしまうと…なんでこんなことをしたのかと思う」と落胆の色を隠せない。
広がる支援の輪…弁当は10分で完売
一方で、SNSでの投稿をきっかけに支援の動きも広がった。
その後、新潟市中央卸売市場で販売した際には、多くの人が訪れ、用意した15個の弁当は約10分で完売した。

村上市から来た男性は「まじめにやっているのに被害を被っているので、どうせ食べるご飯なら応援したくて買いに来た」と話し、阿賀野市から来た男性は「数が数なので居ても立っても居られなくて飛んできた」と語った。
再発防止へ前払い検討も…
燕さんは現時点で警察への通報は考えていないが、「もう一度同じ被害があった場合は相談する」として、今後は前払い制の導入も検討している。
「できるだけ無駄を出さず、お客さんに応えたいという思いは変わらない」と話す燕さん。
信頼を前提とした商売。その難しさが、今回の出来事で改めて浮き彫りになった。
