入社2年目から10年目までの正社員に行った調査で、多くの社員がリーダーシップは将来のキャリアに役立つと考えていることが分かった。一方で実際に発揮する機会は限られており、自信のなさや意欲の低下が障壁となっている。専門家は、自分らしさを活かした小さな挑戦が重要と指摘している。

若手社員の多くが機会不足と自信の壁を実感

職場でのリーダーシップを、どうすればうまく発揮できるのだろうか。

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どんな組織でも必要となるのが「リーダーシップ」を発揮する人物だ。みなさんも職場で求められることがあるのではないだろうか。

人材育成の研修などを提供する株式会社シェイクは、従業員規模300人以上の企業に勤める、入社2年目から10年目までの正社員で、非管理職の若手・中堅社員1005人を対象に、リーダーシップに関する意識調査を実施した。調査は、2025年4月8日から9日にかけてインターネットを通じて行われた。

「リーダーシップを発揮した経験やスキルは、今後のキャリアに役立つと思うか」という質問に、「とてもそう思う」「ややそう思う」と答えた人は76.2%で、4分の3以上の人が「そう思う」と答えた。一方、「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」と答えた人は、23.8%だった。

しかし、職場でリーダーシップを発揮する機会の有無を聞くと、「ある」と答えたのは51.4%。機会がない人は48.6%だった。

「機会がない」と答えた人にその理由を聞くと、最も多かったのが「自信がない」で27.2%だった。次いで「仕事に対するモチベーションがない」が23.9%、「やりたいことが見つからない」が19.6%、「報酬に反映されない」が16.6%が続いた。

「リーダーシップを発揮するために必要なことは」という質問では、「職務スキルの向上」が、35.6%と最も多く、次いで「個人の自信」が32.4%、「仕事との向き合い方」が30.5%など内面に関する答えが続いている。「待遇面の向上」は27.0%だった。

多様な世代が語る現場で育つリーダーの条件

こうした職場で求められるリーダーシップについて、働く人の本音を聞いた。

必要なリーダースキルは「統率力・観察力」・商社(20代):
機会は新入社員のうちからあります。自分が率先してやっていくというのは難しいけれど、でも楽しい。まず元気でやるというのと、もう1つは、(グループメンバー)一人一人のことを考えてではないが、いろんな立場の人がいると思うので、それは考えるようにしています。

必要なリーダースキルは「統率力」・サービス業(40代):
(現在)外国で働いているが、ローカル(現地)の人たちに対して、ちゃんと指導というか。日本だったら、ちょっと怒っているなという空気とか出したら、みんな伝わる。でも、海外だと、ちゃんと感情出さないと伝わらない。

自分が「やりたい」でリーダーになっているわけではないが、その分、仕事のプレッシャーは付きまとうけど、今は楽しい。

必要なリーダースキルは「観察力」・IT系(20代):
まだ入社2年目なので、(リーダー経験の)場面はなかった。多分、入社3~4年目ぐらいになったら、後輩の指導とかを任されるようになるので、(リーダーになることが)あるかなと思っています。

必要なリーダースキルは「観察力」・IT系(20代):
もちろん適性がある人もいると思うが、ない人にも(企業のサポートは)やってもらえた方が、 会社としては、色んな人がリーダーシップをとれた方がうまくいくと思うので、そういう取り組みがあっても良いんじゃないかなと思います。

必要なリーダースキルは「決断力」・鉄道関係(30代):
恥ずかしながら勉強中で(リーダーの)機会は少ないが、これから年齢を重ねていく上で磨いていきたい。社としても職場としても挑戦していこうという文化が根付いてきているので、リーダーシップスキルを付けていきたい。

(リーダーには)なりたい。目指すべき人、目標にしている人が明確にいるので、なれるようにという部分で頑張る。

必要なリーダースキルは「共感力」・金融系(50代):
(昔と今で必要なリーダースキルの違いは)昔は「強制力」。強制的に従わされていましたけど、今は「共感」。自由に色んな意見をいえる風通しの良さは、ベースとして必要。萎縮せずに自分の考えを言えたり、部下とキャッチボールしたりして色々見えてくる。

人が成長していく姿は、自分自身も心洗われる部分があるので、みんなやってみたらいいのでは。

身近な目標から始まる「自分らしいリーダーシップ」

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
職場でのリーダーシップ、さまざまな声がありましたね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
「リーダーシップ」は大きなものとして捉えがちですが、身近なものから考えていいと思います。

リーダーシップとは「自ら立てた目標に対して、周囲を巻き込みながら進めていく」ことで、今は、特定の誰かのことではなく、それぞれ持ち場の中で全員がリーダーシップを発揮することが重要な時代になってきていると思います。
そこで大事なのは、「オーセンティック・リーダーシップ(自分らしいリーダーシップ)」です。

強み共有・成功体験・対話がリーダー成長の基盤

海老原キャスター:
「自分らしいリーダーシップ」ですか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
オーセンティックとは「本物の」という意味で、嘘偽りなく、自分らしさを軸として、周囲の共感を生んで導くというものです。

そうは言っても、調査にもあったように、「自信がない」という声は多いですが、そこを乗り越えていくために重要なことが、3つあります。

1つ目は「自分の長所を共有する」ことです。ある保険会社の研修では、自身のこだわりや長所を書き出し、周囲に共有して意見交換をするという工夫をしています。

2つ目は、「小さなステップからはじめる」ことです。自分のできる持ち場から周囲を巻き込んでいき、小さな成功体験を積み重ねながら自信をつけていくことも大切です。

海老原キャスター:
3つ目は、「周囲からのフィードバック」ですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
行動した結果どうだったのか、相手の反応を自ら聞きに行く、積極的にフィードバックを取りに行くことが大事です。

こういった3つの工夫をすることで、自分らしいリーダーシップを発揮することによって、組織自体も元気に、自身も元気になっていく展開に期待したいです。

海老原キャスター:
リーダーになるというと難しく感じてしまいますが、大切なのは、まず自分の意思で動こうとする“主体性”なのだと思います。その一歩が、真のリーダーシップにつながっていきそうです。
(「Live News α」6月20日放送分より)

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