福岡市内にある保育施設で、朝食を提供する取り組みが行われている。日中や週末に活動する「子ども食堂」は、全国的に広がりをみせているが、朝食はまだ稀だ。なぜ、朝食なのか?主催者の思いとは…。
朝ごはん提供する「子ども食堂」
午前7時すぎ。福岡市内の保育施設にランドセルを背負った小学生たちが次々と集まって来る。子供達の目当ては、「朝ごはん」だ。

この施設は、未就学児を預かる福岡市の一時保育施設「ぴーすハウス」で、県内でも数少ない朝食を提供する「子ども食堂」を運営している。

朝食の準備をするのは、施設の保育士や栄養士たち。この日の食材は、老人ホームから無償で譲り受けた沢山のキュウリや玉ネギなど、企業などから寄付された食材を中心に献立を考えていく。

最近、大問題となっている値上がり著しい米は、「12合炊く」と話す園長の重信唯さん。かなりの量だが、それでも男の子が多いと「12合でも足りないかも?」と保育士の女性は、不安気だ。

普段の子供達の食事量は、それぞれだが、友達と一緒に食卓を囲むこの食堂では、「皆んないつもより沢山食べてくれている」と栄養士の女性は嬉しそうに話す。
共働き家庭の子供達 一緒に朝食を
この日の献立は、具沢山の味噌汁に、きぬさや入りの炒り卵。キュウリの和え物にヨーグルトのデザートなど盛り沢山。

一体なぜ、保育施設が、朝食を提供する「子ども食堂」を開いているのか?保育施設の園長で「ぴーす子ども食堂」を運営する代表の重信唯さんに尋ねると、共働き家庭が多い地域事情を考慮したとのこと。「朝がどうしても子供1人でご飯を食べて学校に行くとか、ご飯を食べずに行くという子もいるので、朝から栄養があるものを摂って、元気に行ってもらえたらなと」。

朝食を提供する「ぴーす子ども食堂」には、重信さんの思いに賛同したボランティアも参加している。

元小学校教師の男性は、「朝の子供達の気持ちで、1日が決まる」と朝食の重要性を強調。「友達と関わって、朝、プラスな気持ちで登校できるのは、凄くいいこと」と自らの教育現場での経験を語る。

「ぴーす子ども食堂」は、好きな物を好きなだけ食べられるバイキング方式。小学生は、60円、中・高生は100円で食べることが出来る。(※未就学児:無料 大人:200円)

もりもりとお腹一杯食べる子供達。早起きして食べる「朝ごはん」の味を尋ねると、小学6年生の男子生徒は、「味噌汁が、めちゃくちゃ美味しい」と即答。

同じ学校の友達と訪れていた女子中学生は、「家だとあまり食べないけど、ここの食堂だと給食感があって、凄く美味しい」と笑顔で答えた。

「何時かな?あと8分です!みんな、時計も見ながら食べてね」。小学生はそろそろ学校へ向かう時間。重信さんは、これから登校する子供達に「行ってらっしゃい!」と声をかけて送り出していく。

“不登校”児童も朝食後に登校も
朝食の子ども食堂を始めて間もなく1年。重信さんは、「思いがけない効果」もあったと嬉しそうに話す。

「登校しにくかった子が、友達と一緒に来てくれて、1~2回目くらいまでは、学校に行かずに家に帰ってたみたいですが、回を重ねるうちに、だんだん子ども食堂の後、登校に繋がったと、後からお母さんに聞いて、ここを通してワンクッションあったことで、学校に行けたのは、良かったのかなと」。

子どもたちの登校意欲にも繋がっている朝食を提供する「ぴーす子ども食堂」。福岡県によると、県内443の「子ども食堂」のうち、「朝ごはんを提供する子ども食堂」は、県が把握しているだけで7箇所に留まっている。重信さんは、「継続していくためには、人手の確保や資金繰りなどが課題」としながらも、「地域の居場所として、今後も『朝ごはん子ども食堂』を長く続けていきたいと抱負を語った。
(テレビ西日本)