静岡・磐田市にある「竜洋袖浦公園」には、戦闘機が置かれている。なぜ公園に戦闘機が? その理由を調べると、かつて公園のあった場所には陸軍飛行学校があったことが分かった。
大きな戦闘機がある公園
磐田市南部にある「竜洋袖浦(りゅうようそでうら)公園」。田畑が広がる、のどかな場所にある。
公園には珍しい”あるモノ”が置かれているということで向かったのだが、すぐに公園の中央にドーンと置かれた飛行機が見えてきた。
にむらあつとリポーター：
大きいですね。全長10ｍくらいはあります
驚くのは大きさだけはない。レプリカかと思って近づいてみると、隅々まで精巧に作られていることに気づく。触ってみると、金属製で丈夫そうだ。
胴体や翼には日の丸の国籍マークも。軍用機として使われていた機体なのだろうか。階段がありコックピットの中が見えるようになっている。
のぞいてみると、劣化はしているがボタンやレバーがずらり。さらに側面には、「脱出用のシートを装備しています」との英文が刻まれていた。どうやら本物のようだ。
等間隔に並んだコンクリ壁
飛行機のほかにも、公園内には気になるものが。飛行機を囲むように2列等間隔で並べられた壁だ。
つたが壁を覆うように伸び、月日がたっていることが分かる。まるで遺跡のようにも見えるのだ。
戦闘機は自衛隊から提供
これらの正体を探るべく、公園を管理する磐田市に話を聞いてみることにした。
磐田市 都市整備課・佐東大輔さん：
平成5年(1993年)に公園が完成した時に、航空自衛隊浜松基地から提供されたと聞いています
飛行機の正体はF-86F戦闘機。昭和30年代に作られ、戦後日本の空を守るために導入された戦闘機だ。
正体が分かったところで改めて疑問なのは、なぜ公園に置かれることになったのかだ。磐田市の佐東さんいわく「公園ができた経緯に非常に関係している」とのこと。
市役所に場所を移し、資料を見せてもらうことになった。
向かったのは「磐田市 歴史文書館」だ。戦闘機が公園にある理由がわかるという、終戦ごろの写真を見せてもらった。
写真の右手にある、三角形の構造物がヒントだと言う。
磐田市 文化財課・木村弘之さん：
今から80年ぐらい前、終戦頃の写真です。戦闘機の格納庫があって、公園にあったのはその基礎です
竜洋袖浦公園にはかつて飛行機の格納庫があり、謎の壁は格納庫の名残だった。
かつて900人を輩出した飛行学校があった
さらに見せてもらったのは、一枚の航空写真。竜洋袖浦公園のある飛平松の周辺が赤く囲まれている。赤で囲まれた範囲は、戦時中に使われた飛行場で、水色の部分は滑走路だった。
磐田市 文化財課・木村弘之さん：
なんのための飛行場かというと、パイロットを養成する養成所だったんです
竜洋袖浦公園にかつてあったのは、1942年に開校した「旧陸軍 明野(あけの)飛行学校・天竜分教所」。
東京ドーム42個分の広大な土地に2本の滑走路を備え、終戦までの3年間で、のべ900人の卒業生を輩出したと言われている。
戦地に赴いた人の中には、特攻へ行った人も。公園に来た人に、戦争の遺跡を実際に見てもらいたいという思いで基礎壁は残され、戦闘機も設置された。
インパクトのある戦闘機の公園は、過去から未来へ、訪れた人々に歴史を伝える使命を担った公園だった。
■スポット名 竜洋袖浦公園
■住所 静岡県磐田市飛平松125-1
■問合せ 0538-37-4806
(テレビ静岡)
