すい臓がん、進行の速さと早期発見の重要性

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富山県氷見市の前市長、林正之さんが今月8日にすい臓がんで亡くなり、告別式が営まれました。多くの関係者が参列し、能登半島地震への対応など林さんの功績をしのびました。

「震災復興も氷見市のグランドデザインも、市民のためを思いながら描いてきたことがこれからしっかり形になっていく」と氷見市観光協会の松原勝久代表理事会長は言葉を絞り出しました。

「タチが悪い」すい臓がんの特徴

林前市長が闘病していたすい臓がんについて、富山大学膵臓・胆道センターの藤井努教授は「膵臓がんは、たちが悪いがん」と表現します。

年間約120件のすい臓の手術を執刀している藤井教授によると、すい臓は胃の後ろあたりにある15センチほどのほそ長い臓器で、「おなかのいちばん奥にある。見つかりにくい。症状が出にくい」という特徴があります。

すい臓の役割は消化液を分泌し、血糖値を調整することですが、藤井教授は「多くのがん種のなかでもすい臓がんは最も進行が速い」と説明しています。

患者数・死亡数ともに増加傾向

すい臓がんは年間約4万人が亡くなると言われており、20年前と比べ、患者数、死亡数ともに2倍に増加しています。この状況に対し、富山大学付属病院は国内でもトップ水準の研究、治療を続けています。

「この10年で治療法は大きく変わった」と藤井教授。「新しい薬物療法が出てきた」ほか、「すい臓がんに特化した血液検査や、場合によってはCTやMRIでようやく早期診断ができる」ようになってきたといいます。

早期発見の重要性と難しさ

しかし、すい臓がんの現状は厳しいものです。「ようやく発見されたときには7〜8割の人はすでに遠隔転移をしている」という現実があります。藤井教授は「すい臓がんの項目を増やした健康診断を受けることしか注意点はない」と早期発見の重要性を強調しています。

すい臓がんの増加について、藤井教授は「食事の欧米化や日本人の生活スタイルの変化と言われるが、正確な原因は分かっていない」と説明します。

初期症状として多いのは腹痛と黄疸ですが、痛みのパターンは人それぞれのため、病院で検査をしても特定に時間がかかることが多く、発見が遅れることも少なくないということです。

来月には氷見市主催の「お別れの会」が開かれる予定で、林前市長の遺志を継ぐ取り組みが続いていきます。

富山テレビ
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