少子化と入試倍率の低下、県外進学者の増加—。こうした厳しい現状を背景に、富山県は2038年度までにすべての県立高校を再構築する「新時代とやまハイスクール構想」を打ち出した。県内の生徒や保護者にとって大きな関心事となる高校再編の行方に迫る。

少子化で迫られる県立高校の再定義

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県内の中学校卒業予定者数は年々減少の一途をたどっており、2038年度には現在と比較して約3割も少なくなる見込みだ。その影響を受け、今年3月の県立高校全日制の一般入試では平均志願倍率が0.99倍と、記録が残る1999年以降初めて募集定員を下回る事態となった。定員割れとなった高校は全体の6割以上に達している。

しかし、県立高校再編の背景は単に少子化だけではない。富山大学の林誠一客員教授は「枠(募集定員)をそこまで狭めていなかったこともあるが、外へ出ていく生徒も少しずつ増えている」と指摘する。県教育委員会によると、去年春に県外の高校へ進学した生徒は352人で、8年前と比較して2.4倍に増加したという。

公私比率撤廃と授業料無償化がもたらす新たな競争

再編の議論に影響を与えるもう一つの要因は、県立と私立の高校間の制度変更である。林教授は「これまでとかなり違うのは、授業料の無償化と、公私比率を2026年度から撤廃するという動きだ」と説明する。

国は来年度から私立高校の授業料を実質無償化する方向で検討を進めており、県内では40年以上続いてきた県立高校と私立高校の入学定員の割合「公私比率」が来年度入学者から撤廃される。

私立高校は各校が自由に定員を決められるようになり、県立・私立ともに生徒のニーズへの対応がより厳しく問われることになる。

「県立高校でどういう生徒をつくっていくのか、どんな力をつけていくのかを考えていかないといけない」と林教授は強調する。

「新時代とやまハイスクール構想」の段階的再編

こうした状況に対応するため、県は今年3月、「新時代とやまハイスクール構想」を発表した。「新時代に適応し、未来を拓く人材の育成」を基本目標に掲げ、2038年度までにすべての県立高校(全日制)を再構築するという大胆な計画だ。

再編は三段階で進められる。第1期となる2028年度ごろまでに、現在34校ある学校数を30校程度に削減。グローバル教育や情報教育に力を入れる中規模校も開設する方針だ。第2期の2033年度ごろには学校数を26校程度とし、県内初となる公立の中高一貫校の開校も目指す。最終的に2038年度ごろには大規模校も開校させ、全体で20〜22校程度にする計画である。

特に注目されるのは大規模校の設置だ。県教委は県東部と西部に1校ずつ、計2校を新築する方針だが、「1校に絞るべき」との意見も出ており、夏ごろまでに設置方針案を固める予定となっている。

子どもたちの未来のための高校教育

「単に生徒数が減っているからではなく、子どもたちがやりたいことをやれる環境をつくってあげるのが大事」と林教授は語る。

大きく変わる高校の姿。富山の未来を担う子どもたちの教育はどうあるべきか。高校再編の議論を通じて、県全体での教育に対する意識改革も求められている。

今年度は第1期の再編に向けた具体的な議論も進む予定だ。次世代の教育環境について考えていくことが重要な時期を迎えている。

富山テレビ
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