日本海から太平洋へと広がる海の変化を映し出すかのように富山湾では今、異例の光景が広がっている。太平洋側でサバの不漁が続く中、富山湾では逆にサバが大漁となり、5月の漁獲量は過去40年間で最も多くなった。

「これでも少ない」豊漁続く富山湾

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新湊漁港の早朝。定置網漁で網を巻き上げると、そこには想像を超える数のサバが姿を現した。

漁師歴20年の八ツ橋佳太さんは「サバサバしている。これでも少ない」と話す。これまでの経験では考えられない光景に、ベテラン漁師も驚きを隠せない様子だ。

先月は多い日には今日の4倍近い量のサバが水揚げされる日もあった。昭栄漁業の尾山哲兵代表は「ホタルイカのシーズンが終わったら少ないのに、サバがこんなに入っているのは極めて珍しい。20年以上やっているがずっと見たことがない」と語る。

太平洋側からの引き合い増加

午前5時半から始まった競りには、サバがずらりと並び、次々と競り落とされていく。地元の流通会社によると、サバの豊漁によって例年と比べ関東など太平洋側からの引き合いが増えているという。

富山県水産研究所の調査によれば、富山湾でのサバの漁獲量は近年増加傾向にあり、統計を行った先月の漁獲量は716トンと、1985年以降の過去40年間で5月の漁獲量としては最多となった。サバの豊漁は富山だけでなく、福井など北陸を中心に日本海側で漁獲量が増えている。

豊漁の理由は「海の環境変化」か

国立水産資源研究所浮魚資源部の黒田啓行副部長は、この現象について3つの理由を挙げる。「1点目はサバが日本海で資源量として増えている。2点目は5月は富山のマサバにとって産卵期にあたる。サバは産卵するために沿岸によってくるので定置網でとられやすくなっている」と説明する。

さらに、「もう1点は仮説だが、今年の日本海の海の特徴としては海水温が低い。海洋環境の影響でサバがより沿岸によりつきやすくなっているかもしれない」と、日本周辺の海の環境変化が豊漁の背景にある可能性を指摘した。

新湊ではシロエビの不漁が続くなど漁師にとって厳しい状況もあるが、予想外のサバの大漁は定置網漁師たちにとって「うれしい悲鳴」となっている。海の環境変化がもたらした思わぬ恵みが、北陸の漁港に活気をもたらしていた。

富山テレビ
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