就任以来、その言動が世界に大きな影響を与え続けているアメリカのトランプ大統領。矛先は、大学教育の現場にも向けられた。

大学側「政権による違法な報復だ」

トランプ政権は5月22日、アメリカの名門大学、ハーバード大学に対し「反ユダヤ主義を助長し中国共産党と協力している」として外国人留学生の受け入れ資格を停止すると発表。さらに、ハーバード大への学生の入国制限や、すでに留学中の学生のビザについても取り消しを検討するよう指示するとした。

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これに対しハーバード大学は「政権による違法な報復だ。ハーバードは留学生を守り続ける」とHPで声明を出した。

政権と大学が真っ向から対立するなか、影響はついに日本にも現れている。アメリカの大学などへ留学する際に必要ないわゆる「学生ビザ」について、審査のために必要な面接の新規受付が止まっているのだ。

9月入学のビザ申請がピークを迎えるこの時期のアメリカの措置に、福岡の学生には動揺が広がっている。

不安を抱える学生 福岡の教育現場は

福岡市博多区の福岡外語専門学校。この専門学校では、日本語を学びたいという外国人の学生と一緒に、英語を専門的に学び、国内外の大学への編入などを目指す日本人学生が通っている。

室長の岩本順子さんは「メールや直接でも話を聞いていますが、現地でも意見が分かれてます。学生が編入時期になったときに『じゃあ、どういう状況か』っていうのが誰も分からない」と戸惑いを口にする。

近年は円安の影響でアメリカの学校を目指す学生は減少しているという状況だが、それでもアメリカは根強い人気があり、この学校ではハワイなどアメリカ国内の大学と積極的に提携を結び、学生たちの選択肢を広げてきた。ビザの“発給停止”ともとれる状況が長引く可能性もあることから、学生たちには違った手段も提供できるよう準備する考えだ。

岩本室長は「行けないとなった場合も、ビザ不要のアメリカへの短期留学もありますし、違うかたちで経験値を上げて彼らのプラスになるようにしています。世界の学生に何がプラスのなるのかを大人たちが考えて、それが政治に繋がっていくことを願っています」と話す。

この夏に留学を控えた学生を抱える福岡の大学でも不安が広がっている。

トランプ政権 学問の府を狙い撃ちに

福岡市早良区の西南学院大学。2025年は22人が、この夏からアメリカの大学へ留学を予定している。

西南学院大学(福岡市早良区)
西南学院大学(福岡市早良区)

西南学院大学国際センター事務室の課長、井上万里子さんは「影響は大きいですね。22人中9人は、すでにビザの面接予約を済ませていたんですが、ビザの面接予約がまだできていない学生たちは、やはり不安な気持ちでいっぱいですし…。留学先に、留学期間を後ろ倒しにするという選択肢をとることができるのか、そういったところは協定校とやりとりをしながら確認している」と困惑の表情を浮かべる。

面接の予約は止まっているが、ビザの申請自体は受け付けているため、学生には予定通り準備を進めるよう伝えているという。

こうしたアメリカの動きについて学生たちに話を聞いた。夏から留学予定のある学生は「いまの世界情勢のなかで、アメリカにとって都合がよくないことをSNSとかを調べられて行けないみたいな状況になっていて…、それって個人の自由だし…、ひとつの大きな権力みたいなものによって取り消されるのはすごく理不尽だなと思う」と話す。また別の学生は「すごく不安な気持ちが一番。『私、行けるかな?』とか…。一生懸命、留学に行くために学習してきたんですけど、いままでの努力が無駄になるのかなって不安もありました」と話す。事態の好転を待つしかないいまは、何とも苦しい状況だ。

国際センター事務室の井上課長は「本学はアメリカ以外にもヨーロッパ、アジア各国に協定校がありますので、今回の措置を受けて特別に受け入れを認めてもらえるか、確認を同時並行で進めています」と関係機関と密に連絡を取りながら、学生たちをサポートしていくとしている。

学問の府を狙い撃ちにしたトランプ政権。学びたいと願う学生たちはアメリカへ飛び立つことができるのか、先行きは不透明なままだ。

(テレビ西日本)

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