福岡市東区で車が線路に突っ込んだ事故で逮捕されたのは92歳の男だった。高齢者による事故を防ぐためにできることとは―。
「スピードが出て事故を起こした」
2025年6月5日。福岡市東区の西鉄・香椎花園前駅の近くで起きた交通事故。普通乗用車が女性をはねたあと線路に突っ込み、横転。はねられたのは近くに住む財津千恵さん(76)で、病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。

事故現場の近くにいた女性は「ガシャンっていう音がすごかったんですよね。それでびっくりして見に行ったら、車が横転していて人が倒れていた」と事故のようすを証言する。

警察は普通乗用車を運転していた福岡市城南区に住む桐島正幸容疑者(92)を過失運転致傷の現行犯で逮捕した。

警察の調べに対し桐島容疑者は「買い物を終えて自宅に帰る途中、車のスピードが出て事故を起こした」と話しているという。警察は容疑を過失運転致死に切り替えて詳しく調べている。
小学4年の児童の列に車が…
高齢者ドライバーによる事故。5月19日には、筑紫野市の西鉄・朝倉街道駅近くで74歳の女性が運転する軽乗用車が、踏切の近くを歩いていた小学4年の男子児童4人の列に突っ込んだ。

この事故で男子児童1人が足の骨を折る重傷を負っている。現場にブレーキ痕は確認されておらず、女性は「踏切を越えて左折しようとしたところ、曲がりきれずに横転した」と話しているという。

福岡県警によると高齢者が第一当事者となる事故の件数は、2025年4月末までの時点で1439件と前年の同じ時期と比べ、減少傾向にはあるものの依然として高い水準となっている。

高齢者による事故が相次ぐ中、免許の自主返納について街の人はどう考えているのか?
現在の自分の能力を把握すること
「買い物とか、よそに出かけるのに車がないと困る。90過ぎたらやめようと思っている」(男性・84)。「毎日乗っています。ああいう事故を見ると考えるけど、自分は別だとみんな思うんでしょうね。『どこかで』とは考えますけど、まだちょっとしばらくは気を付けて現役で頑張ろうと思う」(女性・70代)と多くの高齢者は、免許返納を現在は考えていないと話す。

また80代の父親を持つ男性は「『まだ俺は大丈夫だ』っていうのが、父親の口癖なんで。何もないうちに辞めてくれたらいいなと思ってるんですけどね。ただやっぱりあんまりいうとケンカになってしまうので、家族だけではなかなか難しいですね」と家族の中でも葛藤があると話す。

高齢者による事故の度に話題になる「免許返納」だが、2024年の自主返納の数は、約42万8000件で、5年ぶりの増加となった。一方で60代以上の約1千人を対象としたアンケートでは、8割の人が免許を返納する予定がないとしている。その理由として、大半が「運動能力に問題ないと思っているから」と回答している。

免許の返納は、1人1人にとって決断は簡単ではない。高齢ドライバー向けの安全講習などを担当する日本自動車連盟(JAF)は、重要なポイントとして「家族の気づき」を挙げている。家族の異変に気付いたら高齢ドライバー向けの講習会などを受講し、現在の自分の能力を把握してもらうよう呼びかけている。
(テレビ西日本)