18年前、うるま市出身の宜野座由花里さんは27歳の若さで「血液のがん」と宣告された。

生存率はわずか20パーセント。そのわずかな可能性は、見ず知らずの骨髄バンクへの登録者たちによってもたらされた。宜野座さんは「恩返し」の言葉を胸に、一人でも多くの命をつなごうと、骨髄バンクへのドナー登録を呼びかける活動を続けている。

聞いたこともない病名、病状悪化

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宜野座さんが「成人T細胞白血病リンパ腫」(血液のがんの一種)と診断されたのは、27歳の時。診断を受けた直後、宜野座さんは友人と近くの図書館を訪れ、自分の病気について調べた。

「聞いたこともない名前の病気だったし、友達と病院の図書館に調べに行くと、血液のがんだと分かってショックを受けた」

診断後すぐに放射線治療と抗がん剤治療が始まったが、医師から告げられた言葉は重かった。5年以上生存できる確率は、わずか20パーセント。その後、がん治療を専門とする東京の病院へと転院したものの、病状は悪化の一途をたどった。残された選択肢は、骨髄移植だった。

「怖いというよりも、生きたい」

骨髄移植を受けるには、骨髄の型「HLA(ヒト白血球抗原)」が一致するドナー(提供者)を見つけなければならない。

全国のドナー登録者は約56万人にのぼるが、その中で骨髄の型が一致し移植に進める確率は、血縁者でも25パーセント。血縁関係のない他人との間では、数千人から数万人に一人という、極めて低い確率でしか一致しない。

それでも宜野座さんは、死を受け入れてはいなかった。

「逆に死をあんまり考えてなかったのかも。怖いっていうよりも生きたいって思って」

そんな中、奇跡的な確率で適合するドナーが見つかった。体調の悪化でほとんど朦朧としていた宜野座さんが、その報せを受けたときのことは今も記憶に刻まれている。

「あまりにも体調がきつすぎて朦朧としてる中、『見つかった』ということで、うれしかったことだけは覚えてます。」

骨髄移植を経て、がんは寛解。ただし完全に「元の生活」が戻ってきたわけではない。後遺症や別の病の発症により、今も東京で暮らしながら通院を続けている。

病気は宜野座さんから一つの夢も奪っていった。婦人科を訪れるたびに、子どもを持てない体になったという現実と向き合い、看護師と涙を流すこともある。結婚という選択肢に踏み出せない自分がいることも静かに打ち明けた。それでも宜野座さんは、その痛みを抱えながらも前を向いている。

ドナー登録説明員として‟恩返し”を

2026年2月23日、那覇市の奥武山公園ではプロ野球のオープン戦が開かれていた。

試合の熱気が漂う中で、宜野座さんは骨髄バンクへのドナー登録を呼びかけるブースに立っていた。仕事の合間を縫って、東京と沖縄の両方で「説明員」として活動を続けている姿がそこにある。

「私が命を救うことはできないですけど、それに何か繋がるようなお手伝いは少なからずできればいいなと思っています」

説明を聞いた一人が、その場でドナー登録を決めた。宜野座さんの体験談を聞いて「健康な自分が誰かのためになれるかもしれない」という思いが湧いた、と話してくれた。

沖縄の登録者数は全国トップだが…

沖縄県内のドナー登録者数は現在2万3604人(2026年2月現在)で、人口1000人あたり37.04人は全国1位の数字となっている。

しかし、ドナーとして登録できるのは健康上の理由から55歳までという年齢制限がある。県内だけでも毎年700人以上の登録が取り消しとなっており、若い世代が継続的に新規登録しなければ、登録者数は減り続ける一方だ。

「ひとりで多くの人の力になれる…何か変わるチャンスを作れないかなとは思ってて」

宜野座さんが次に描くのは、沖縄での患者会の立ち上げだ。白血病や悪性リンパ腫といった血液疾患の患者同士が情報交換し、支え合える場をつくりたいと考えている。自分を支えてくれたドナー登録者への恩返しであり、闘病中に力を借りたすべての人への感謝の形でもある。

病気によって失ったもの、得たもの

病気は宜野座さんの人生から多くのものを奪った。しかし宜野座さんは「得たものは大きい」と言い切る。

「私が今こうして元気だから言えるのは、病気によって失ったものももちろん大きくて、傷ついたり…今も再発を考えたりもするんですけど、同時に人のありがたさと、当たり前のことが当たり前じゃないっていうことを経験して、視野も広がり交流関係も広がって、得たものは大きいです」

あの日、骨髄の提供を決めた見知らぬ誰かがいたから、今の宜野座さんがいる。その事実が、彼女の今日を形作っている。一つの登録が、一つの命を救う可能性を持っている。宜野座さんが発し続ける言葉は、静かに、確かに、次の誰かの命をつないでいくことになるだろう。

沖縄テレビ

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