梅雨真っただ中の鹿児島県。天気予報で「1時間に何ミリの雨」と聞いても、具体的にどんな降り方なのかイメージできない人も多いのではないだろうか。鹿児島テレビの山下凌佑気象予報士が、県内で唯一さまざまな強さの雨を体験できる施設を訪ね、実際の降り方と危険性を確かめてみた。
「1時間50ミリ」の雨では視界が悪化
薩摩川内市消防局にある防災研修センターは、県内唯一、雨と風の再現を体験できる施設だ。ここでは30ミリ、50ミリ、80ミリ、150ミリという4パターンの雨量を体験することができる。
山下気象予報士はまず1時間雨量50ミリの「非常に激しい雨」を体験した。「視界もはっきりと分からないくらいの降り方。これくらいの降り方だと、車の運転もかなり危険なように感じる」。

1時間雨量150ミリでは傘が壊れる事態に
1時間雨量80ミリの「猛烈な雨」になると、状況は一変する。「さきほどと比べると、傘に打ちつける雨の音が大きくなってきた。道路には水たまりができて、浸水・氾濫も起こってしまうのが想像できる」と山下気象予報士。

さらに、県内のアメダスの観測史上最大記録143.5ミリに近い、1時間雨量150ミリの雨を体験すると、「この降り方は完全に身の危険を感じる。息苦しさも感じる。外に出るのがかなり危険な雨の降り方」と語る。
そこに時速5メートルの風が加わると、「傘を片手で持つのが難しい」という状況に。あまりの強さに傘が壊れる事態にまで発展した。

「私たち気象予報士が、これから『非常に激しい雨や猛烈な雨が降ります』と言ったときは、本当に危険な降り方になると分かってもらえたのかなと思う」と山下気象予報士は話す。こちらではレインコートやタオルなども準備してあり、誰でも体験が可能となっている。
鹿児島の雨は明け方から朝に多い傾向
鹿児島地方気象台の津波古悟主任予報官に、鹿児島の雨の地域的・時間的な特徴を聞いた。
「梅雨の時期の気圧配置からすると、太平洋高気圧のほうが、日本のはるか東から日本の南まで張り出しますので、どうしても南西風の風が流れ込みやすい状況になっています。南薩から北薩中心に、東シナ海側に面した地域が(雨量が)多くなるような傾向がある」と津波古主任予報官は説明する。

気象研究所の調査によれば、九州では明け方から朝にかけて集中豪雨が多く発生しているという。その理由の一つは、夜間は陸上よりも海上の方が高温で雨雲が発達しやすいこと。九州は西側が海に面しているため、発達した雨雲が朝にかけて陸地に流れ込みやすいと考えられている。
体験を通して防災意識を高める
防災研修センターでは、雨や風の体験だけでなく、地震体験や初期消火体験、煙体験なども可能だ。薩摩川内市消防局の重村卓児さんは「常に危機意識を持って準備をして、防災リュックなど、すぐに避難できるような態勢をとって自分を守る行動を行ってください」と呼びかける。
津波古主任予報官も「土砂崩れ、河川の増水など身の回りの体験等もあると思う。過去の経験もイメージしながら、予想雨量について確認をしてもらいたい」と述べている。
梅雨はこれからが本番。天気予報で聞く数字の意味を実感し、いざというときに備える意識を高めておきたい。
(鹿児島テレビ)