企業で人手不足が深刻になる中、人工知能AIで業務の効率化に成功した工場が三豊市にあります。その陰には、人を思いながら地道に開発を続ける若手の女性技術者の姿がありました。
(神島化学工業ICTグループ 谷明里さん)
「色が着いた枠AIが不良だと判定。木目が薄い場所になる。」
建材などを手掛ける企業、神島化学工業の技術者、谷明里さん30歳。2020年4月に入社し、これまで自社製品の検査に特化したAIを開発してきました。
(神島化学工業ICTグループ 谷明里さん)
「今までは人が端から端まで集中して全数検査したがAIに代わってもらうことで検査員の負担が減り見逃しも減った」
谷さんが働くのは、三豊市にある工場です。大阪市の本社を含めて従業員は約600人に上りますが、そのうち約500人が働いています。製造ラインによっては、交代しながら2人態勢で24時間、不良品検査を行っています。しかし、人手不足の中、検査態勢を維持するのが厳しくなっていました。
それを補うため導入したのがAIです。谷さんが中心となり、製造ラインに合わせたAIを自社開発し、的確に不良品を見つけられるようになりました。検査の作業時間は最大で25%削減でき、今後は、1人態勢で検査できる見通しとなりました。
(神島化学工業ICTグループ 谷明里さん)
「検査員から(新しいAIを)早く作ってくれとかもっとこうしてくれとか(現場はAIが)あって当たり前になっている。そういう声を聞くと助かっていると感じる」
開発で苦労したのは、不良品の画像をAIに学習させる過程です。
(神島化学工業ICTグループ 谷明里さん)
「良品なのか不良なのか1枚1枚人の目で確認して仕分けしている。(今の作業は)8×2万枚の16万枚(の仕分け)。結構大変」
こうした地道な作業により、開発まで2年以上かかりました。技術者として情熱を傾ける谷さん。観音寺市出身で、進学した鳥取大学大学院では物理学を専攻しました。今、技術者の道を歩む中、大切にしていることがあります。
(神島化学工業ICTグループ 谷明里さん)
「大学生の時に海外に行ってエレベーターに乗るとガンと止まった。(乗っている人への)思いやりがないと思った。日本ものづくりは(人への思いやりが)すごいと知った。数字的な効果は大事だが1番は使っている人が楽になったとそこを実感してもらえるよう意識して技術者になりたい」
香川県内の企業でも先進的と自負を持つ神島化学工業のAI開発。三豊市内にキャンパスがあり、市とともにAIの研究を続けてきた香川高等専門学校との人材交流などで知見を積み重ねてきました。自社の業務に合わせた特化型AIの開発には時間がかかりますが、地域にとって大きな意味を持つと言います。
(神島化学工業ICTグループ 田原雅士グループ長)
「特に地方は人手不足や生産性の低さが課題。特化型AIなどをい使いこなすことで社会課題を解決できる。地域でも取り組むことで解決できると思う」
AIで地域の景色を変える。人を思いながら地道に開発を続ける技術者が、企業に新たな風を吹かせています。