限られた地域にしか生育していない希少な植物「ヒメザゼンソウ」が、5月下旬、福井県嶺南地域のとある群生地から突如として姿を消しました。現場には無数の穴があり、地元では“何者かに盗まれたのではないか”として防犯カメラを設置するなど対策を強化しました。映像にとらえられていたのは意外な犯人の正体でした。

「根が切られてこんな風になっている…かわいそうに」
  
こう話すのは、嶺南地域に暮らす野鳥や植物の写真愛好家の男性です。
   
男性は、5月23日にヒメザゼンソウの群生地に写真撮影に出かけました。そこで目にしたのは、シャベルのようなもので掘られた数十カ所の穴。ヒメザゼンソウが文字通り根こそぎ姿を消していたのです。

「写真で撮るのはいいが、持って帰ることは本当に腹が立つ。悲しい」と話します。


「ヒメザゼンソウ」はサトイモ科の多年草で、小さい花を覆う4センチほどの赤紫色をした仏炎苞が特徴です。
   
希少な植物で、福井県内で確認されたのはわずか5つの市町。県域準絶滅危惧種にも選定されています。
 
実はヒメザゼンソウの被害は2年連続。県は注意を呼びかける看板を増やし、防犯カメラも設置して対策の強化を図りました。


カメラ設置から1週間ほどが経った6月2日、県が初めて防犯カメラの映像を確認すると、そこには犯人の姿が映っていました。
 
その正体はなんとイノシシ。注意を呼びかける看板も効かないはずです。


ヒメザゼンソウは産地が限られている植物でもあり、県は「地元の市町に対してイノシシの捕獲を継続して依頼するとともに、監視カメラの設置を続けて生育状況を確認していく」としています。

福井テレビ
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